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【読書記録 -174】『人を惹きつける会社』ハーバード・ビジネス・レビュー 2023年12月号

人を惹きつける会社

ハーバード・ビジネス・レビュー 2023年12月号の特集タイトルは『人を惹きつける会社』だ。

本特集には、パナソニック コネクトの樋口泰行氏へのインタビューをはじめ、社内の人材と仕事をマッチングする「インターナル・タレントマーケットプレイス」、学位ではなくスキルを重視した採用、障害者雇用を競争優位につなげる方法などが収録されている。

どの記事も興味深い。
だけど、読み終えてから改めて特集タイトルを眺めてみると、少し違和感が残った。

これって、本当に「人を惹きつける会社」の話だったのだろうか。

会社を機能させること

たとえば、パナソニック コネクトの樋口氏は、組織文化を変えるためにさまざまな改革を行っている。社長や役員の専用個室をなくし、ドレスコードを廃止した。会議の席次表をつくるような、内向きで非生産的な仕事もなくしていった。

樋口氏が目指したのは、役職や年齢に縛られず、情報が流れ、個人が自律的に動ける組織だ。

ボー・カウギルらの論文では、社内にタレントマーケットプレイスを構築し、人と仕事をより適切にマッチングする方法が紹介されていて、学位という代理指標ではなく実際のスキルを見る採用や、障害者が持つ特性を競争優位につなげる方法も論じられている。

…これらは「組織をどう機能させるか」じゃないか。

人を適切に採用し、適切な場所に配置し、能力を発揮できる環境をつくること。適切に情報を流して、個人が自律的に動けるようにすること。それらはどれも組織を機能させるうえで、とても重要なことだ。

だけど、ここでもう一つ疑問が浮かぶ。
機能的な会社は「魅力的な会社」なのだろうか。

自由そうに見える人

若い人は、社会に出るまでの長い時間を、さまざまなルールの中で過ごしている。

学校には校則があり、就職活動では暗黙のルールで同じようなリクルートスーツを着る。大企業に入れば新人研修を受け、配属されればOJTが始まる。

そうした彼らが町の中小企業に入社すると、ちょっと変わった大人に出会うことになる。

社長だ。

社長は普段はラフな格好だ。
だけど、営業に行くときはパリッとしたスーツに着替える。

オフィスを半分私物化していて、自分の趣味関連のものが壁にディスプレイされている。デスクの上もだ。

思いついたように髭を伸ばし始めたりする。
ミニバンに乗ってたのに、急にスポーツカーに乗り換えたりする。

あの人、自由そうだな…

新人君はそう思うだろう。

大人のカッコよさ

社長は決して自由な人じゃない。
むしろ重い制約を背負ってる人だ。

顧客がいて、社員がいて、取引先がいる。
法令や契約条件を守らなければならない。
そして、無尽蔵にお金を使えるわけでもない。…っていうか、常に金が足りなくなる恐怖と戦っている。

その制約の中で、楽しめることをチョイスする。
社長はいつもギリギリを攻めているのだ。

ギリギリを攻めるためには、コースを熟知していなければならない。だから社長は物知りだ。市場のことも、法令のことも、競合のことも、異業種のことも。

ギリギリを攻めるためには、絶妙のタイミングでブレーキを踏まなければならない。だから社長は自社のキャッシュフローを常に見ている。誰も知らないところで。

そのうえで、社長はカッコよく生きている。
そのカッコよさは「Freedom(自由)」からくるものではなく「Autonomy(自律性)」からくるものだろう。

人を惹きつけること

ここまで考えて、もう一度、本特集のタイトルに戻ってみよう。

人を惹きつける会社」とは何か。

組織文化を変えること。
人材配置の仕組みを整えること。
採用方法を変えること。
社員が能力を発揮できる環境をつくること。

そういった取り組みによって、会社を「より機能的にする」ことはできるだろう。だが「会社を魅力的にする」ってのとはちょっと違う気がする。

魅力とは、発信する側が設計するものではなく、受け取る側が発見するものだ。

自分が大切だと思う制約を頑固なまでに守り続け、その制約の内側ギリギリまで攻めAutonomy(自律的)に選択し続ける。

それが社長という仕事の醍醐味だ。

Autonomyの伝播

さて、くだんの新人君は(おそらく)生まれて初めて見るAutonomyに感化されるだろう。

そうすると、彼も徐々に社長の真似をするようになる。
時々脱輪もするだろう。ひょっとするとまあまあなクラッシュを起こすかもしれない。だけど、新人君の制約範囲はさほど大きくないので、会社に与える影響は限定的だ。

そうしているうちに、次の新人君が入ってくる。
もちろん、中小企業には昇進試験などないし、マネージャー用のトレーニングなどもない。だけど、彼は彼なりのAutonomyで次世代新人を教えていくようになる。なぜなら彼自身がそれを「カッコいい」と思うようになったからだ。

制約のあるAutonomyはカッコいい
その制約が重ければ重いほど。
ギリギリを攻めれば攻めるほど。

それが、人を惹きつける魅力なんじゃないだろうか。

参考リンク

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2023年12月号

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