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ドアを閉めて、急に訪れる静けさ。泣き疲れたこどもと車に乗ったあとの、あの時間について。


スーパーを出る。

片手には買い物袋。

もう片方の腕には、

泣いているこども。


「イヤ!」

「だっこ!」

「あるかない!」


さっきまで床に座り込んでいたこどもを、

なんとか抱きかかえて、

駐車場までたどり着く。


今日は暑い。

腕の中のこどもは重い。

買い物袋が手に食い込む。


「あと少しだから」

自分にも言い聞かせるように、

小さくつぶやく。


ようやく車の前に着く。


荷物をトランクへ入れる。

次はチャイルドシート。


でも、

体を反らせて、

全身で嫌がる。


「お願いだから座って」


一度言う。


座らない。


もう一度言う。


泣き声が大きくなる。


隣の車が出ていく。


あの家族は、

もう帰れるんだ…


そんなことを思った自分に、

また苦しくなる。

時計を見る。


スーパーを出て、

もうずいぶん時間が経っている。


小さくため息をついて、

バッグの中を探す。


いつかのために入れておいた、

小さなクッキー。


「これ、食べる?」


本当は、

こんなふうに渡したくない。


泣いたらお菓子。

嫌がったらお菓子。

そういうふうにはしたくないと、

何度も思ってきた。


でも今日は、

もう帰りたい。


「お願い」


その言葉は、

こどもに向けたものだったのか、

それとも、

今日を終わらせたい自分に向けたものだったのか、

もう分からなかった。

やっとシートベルトを締める。


ドアを閉める。


急に静かになる。


エンジンをかけようとして、

手が止まる。


買ったアイス、

溶けちゃうかな。


お肉も早く冷蔵庫へ入れないと。


帰ったら夕飯。

洗濯物も取り込まなきゃ。


お風呂もある。

寝かしつけもある。


まだ今日が終わるまで、

何時間あるんだろう。

バックミラーを見る。


さっきまで泣いていた我が子は、

もう窓の外を見ている。


切り替えが早いな。


よかった、

と思う気持ちと、

どうして私は、

まだこんなに苦しいんだろう、

という気持ちが、

同時に押し寄せる。


誰にも見えない車の中で、

大きく息を吐く。


少しだけ、

涙が出そうになる。


でも、

泣いている時間はない。

エンジンをかける。


家に帰れば、

また「お母さん」が始まるから。


゚・*:.。..。.:*・゜゚・*:.。..。.:*・゜

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