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同じ一日を、同じまま終わらせない

毎日、同じ仕事を繰り返しているように感じることがあります。

同じ時間に起き、同じ道を通り、同じ場所で働く。

同じ道具を使い、同じ品物をつくり、昨日と同じように一日を終える。

慣れてくると、考えなくても身体が動くようになります。

それは、仕事が身についた証拠でもあります。

初めは一つずつ確認しなければできなかったことが、自然にできるようになる。

身体が順番を覚え、手が迷わなくなり、作業も速くなる。

繰り返しには、人を育てる力があります。

しかし、慣れには別の顔もあります。

いつもと同じだと思い、よく見なくなる。

問題がないと思い込み、小さな変化を見過ごす。

昨日うまくいった方法が、今日もそのまま通用すると考える。

同じように見える毎日ほど、注意深く見る必要があるのかもしれません。

自然の中にいると、そのことがよく分かります。

毎年、春には芽が出て、夏には草が伸びます。

同じ場所に、同じ植物が生えているように見えます。

けれど、よく見ると同じではありません。

昨年より芽吹きが早い。
雨が少なく、土が乾いている。
日当たりが変わり、別の草が増えている。
獣が通った跡が、新しい場所に残っている。

大きな流れは繰り返していても、その中身は少しずつ変わっています。

仕事も同じです。

同じ図面でも、材料の状態は完全には同じではありません。

気温や湿度が違う。

使う機械の調子も変わる。

作業する人の身体や集中力も、毎日同じではありません。

だから熟練した人は、手順を覚えているだけではなく、昨日との違いを見ています。

色を見る。
音を聞く。
匂いを感じる。
手に伝わる重さや振動を確かめる。

そして、いつもと違う何かに気づいたとき、手を止めます。

その小さな違和感が、事故や不良を防ぐことがあります。

気づきとは、特別な才能だけから生まれるものではありません。

目の前のものを、当たり前として流さずに見ることから生まれます。

なぜ、今日は音が違うのか。
なぜ、昨日より時間がかかるのか。
なぜ、この人は質問しなくなったのか。
なぜ、いつも明るい人の返事が短いのか。

疑問を持つことで、それまで見えていなかったものが見え始めます。

もちろん、何にでも疑いを持ち、常に緊張していては疲れてしまいます。

大切なのは、粗探しをすることではありません。

変化を知ろうとすることです。

よい変化にも気づく。

以前は迷っていた人が、一人で確認できるようになった。

道具の置き方が工夫され、皆が使いやすくなった。

声をかけられる前に、誰かが手伝うようになった。

小さな成長も、注意して見なければ当たり前の中へ埋もれてしまいます。

人を育てる立場にある人ほど、この気づきが大切になります。

できなかったことばかりを見ていれば、注意する言葉ばかりが増えます。

けれど、昨日との小さな違いに気づけば、

「そこは、自分で考えられるようになったな」
「前より確認が早くなった」
「周りを見る余裕が出てきたな」

と、その人の成長を言葉にできます。

本人にとっては、毎日続けているため、自分の変化が分からないことがあります。

誰かが気づき、伝えることで、初めて成長の手応えを持てます。

それは、次に進む力になります。

自分自身についても同じです。

毎日の仕事が変わらないと、自分は何も成長していないように感じることがあります。

大きな成果もなく、目標へ近づいている実感もない。

ただ同じことを繰り返しているように思える。

しかし、少し前の自分と比べれば、変化はあります。

以前より早く異常に気づけるようになった。

失敗したとき、誰かを責める前に原因を考えられるようになった。

分からないことを、素直に尋ねられるようになった。

困っている人へ、自然に声をかけられるようになった。

目に見える技能だけでなく、判断や心の使い方も育っています。

日々を注意深く見るとは、毎日を特別な日に変えることではありません。

当たり前の中にある変化を、取りこぼさないことです。

うまくいったこと。
思いどおりにならなかったこと。
誰かから教わったこと。
自分の心が動いたこと。

その一つを振り返るだけでも、同じ一日はなくなります。

経験は、時間が過ぎただけでは知恵になりません。

起きたことへ目を向け、

「なぜだろう」
「何が違ったのだろう」
「次はどうしよう」

と考えたとき、経験は次の判断に使えるものへ変わります。

長く働いていても、ただ繰り返した年月と、気づきを重ねた年月では、身につくものが違います。

熟練とは、同じ作業を何度も行ったことだけではありません。

同じように見える仕事の中から、毎回の違いを見つけ、判断を積み重ねてきたことです。

人生も、惰性だけで進むものではないのでしょう。

毎日は続いていきます。

昨日と似た朝が来て、今日と似た明日が訪れます。

それでも、自分が何を見つけ、何を受け取り、何を次へ活かすかによって、一日の深さは変わります。

大きな出来事だけが、人を成長させるのではありません。

いつもの風景の中で、昨日まで見えなかったものに気づく。

その小さな発見が、自分の考えを変え、行動を変え、やがて生き方を変えていきます。

同じ一日を繰り返しているように見えても、本当は少しずつ違っています。

その違いに心を向ける。

そして、得た気づきを明日の判断へ持っていく。

それが、同じ一日を同じまま終わらせず、経験を知恵へ育てることなのだと思います。



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