学校の備蓄にはあって、我が家の防災袋にないもの

二学期が始まる時期になると、学校からお知らせが届きます。引き渡し訓練の日程です。うちは子どもが四人いるので、この紙が学年ごとに何枚か重なって回ってきます。

確認する内容はいつも同じです。誰が迎えに行くか。行けない日は誰に頼むか。どの門から入って、どこで名前を書くか。今年もその欄を埋めて、冷蔵庫に貼りました。

貼ったあとで、少し手が止まりました。

この紙に書いてあるのは、全部「動線」の話だ、と気づいたからです。誰がどこへ、どう動くか。それは決まっている。では、迎えが着くまでのあいだ、子どもは何をして待っているのか。そこは、どの欄にも書かれていませんでした。

学校の備蓄リストには、衛生用品が入っている


気になって、学校側がどういう想定をしているのかを調べました。

文部科学省が出している『学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き』という冊子があります。全国の学校がマニュアルを作るときの土台になっている資料です。

そこには、こう書かれていました。

> 情報通信網や公共交通機関が麻痺し、保護者等の帰宅が困難な場合には、児童生徒等を学校で待機させるなどの対応も必要になってきます。

つまり学校側は、「その日のうちに迎えが来ないこと」まで含めて準備するように言われている。引き渡しは、数十分で終わる行事ではない前提で書かれています。

そして同じ冊子に「学校待機時に役立つ物資等の例」という一覧がありました。毛布、簡易トイレ、バケツ、タオル、飲料水。そのなかに、はっきりと衛生用品という項目が入っています。

学校は、子どもが待つ時間の衛生まで数えている。読みながら、自分の家の持ち出し袋を思い浮かべました。水は入っています。食べるものも入っています。手のことは、入っていませんでした。

迎えに行く側の数時間は、誰の担当でもない


引き渡し訓練は、よくできた仕組みだと思います。実際にやってみると、名簿と本人確認の手順が体に入る。それだけでも意味があります。

ただ、訓練が扱っているのは学校の門から内側です。

門の外は、その日その場の話になります。仕事先から歩いて向かうかもしれない。上の子を小学校で受け取ってから、下の子の保育園へ回るかもしれない。うちは子どもの数だけ行き先があるので、順番に拾っていく形になります。全員そろうまでのあいだ、先に受け取った子は、親と一緒に外を歩いていることになります。

その道中で、子どもの手はどうなっているか。

地面に手をついたかもしれない。倒れたものを一緒に動かしたかもしれない。何かを触ったあとで、そのままお菓子を持つかもしれない。子どもの手は、大人が思っているより早く、あちこちに触れます。

そして水道は、あてになりません。断水していなくても、公共の建物のトイレが閉まっていることはあります。開いていても、そこに列ができていることもあります。移動している最中の手洗いは、いちばん後回しにされる。訓練の紙にも、学校の備蓄にも、ここだけは入っていませんでした。学校の中でもなく、家の中でもない時間だからです。

帰り着いた家で、蛇口が動くとは限らない


もうひとつ、順番の話をします。

引き渡しが終わって家に着いたとき、多くの人がまず考えるのは「無事に戻れた」ということです。その次に、手を洗おうとする。ここで蛇口が止まっていると、一日でいちばん疲れているタイミングで、いちばん面倒な課題に当たることになります。

集合住宅なら、停電したポンプが止まって上の階まで水が来ないこともあります。戸建てでも、配管の点検が済むまで使わないほうがいい場合があります。

その状態で、外を歩いてきた子どもが四人、玄関に立っている。

代表として、また子どもたちの父として、この場面を想像したときにいちばん怖かったのは、「まあ、あとでいいか」と自分が言いそうなことでした。飲む水は減らせない。だから洗う分に回す判断は、後ろへ後ろへ送られていく。避難生活で体調を崩す入口は、たいていこの「あとでいいか」の側にあります。

迎えの袋に、水のいらない一本を

やったことは単純です。冷蔵庫に貼った引き渡し訓練の紙を見ながら、迎えに行くときに持って出る袋を、家の備蓄とは別に一つ作りました。

入れたのは、子どもの人数分の飲みものと、小さなタオルと、手のためのものが一本。

我が家がその一本に選んでいるのが、還元イオン水HELPです。水が九十九パーセント、残りがミネラル塩でできた除菌・洗浄水で、アルコールも塩素系の薬剤も使っていません。だから外で子どもの手に吹きかけても、しみません。皮膚刺激性試験でも刺激がないことが確認されています。手についたまま何かをつまんでも、慌てなくて済む。ここが、外を歩きながら使ううえでは決定的でした。

しかも一度使うと、除菌の効果が続きます。何度も吹きかけ直さなくていいので、子どもが四人いても袋から出す回数が少なくて済みます。保存も二年もつので、防災袋に入れっぱなしにできる。訓練の紙が届くたびに、袋ごと中身を見直せば、それでローリングストックになります。

飲むためのものではないので、そこだけは子どもにも先に伝えてあります。手と、口に入るものが触れる場所のためのものです。

学校は、待つ子どものために衛生用品を数えていました。こちらは、迎えに行く道のために一本数える。役割を分けたら、ようやく引き渡しの紙が最後まで埋まった気がしました。

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メタディスクリプション

引き渡し訓練で決まるのは動線だけ。学校の待機物資には衛生用品があるのに、迎えに行く親の袋には手のためのものがない。文科省の手引きから、抜けていた一つを埋め直した記録。


参考

  • 文部科学省『学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き』(平成24年3月)

https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1323513.htm

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