【小説】Lv34 目覚めたふたり|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第4章 正義と別れ 編
Lv34 目覚めたふたり
四天王ズケインを倒した後、
僕らには、1秒の猶予すら残されていなかった。

サンスー族 四天王の中で
『圧倒的最強』の力を誇る、
あのヘクトアールが、
ついに本格的に動き出していたからだ。
ヘクトアールの目的はただ一つ。
メンセキ城のキョーンひめが持つ、

ペンダントを奪うこと。
なぜならそのペンダントこそが、
地底に眠る
伝説のモンスター『サンスラー』
を完全に復活させるために必要な、
最後の鍵だったんだ。
ヘクトアールは、フジータ様の洞窟に
避難していたキョーンひめのところに現れた。
四天王最強の力は、
あまりにも圧倒的だった。
クンッ


ひめが命がけで守ろうとしたペンダントは、
ヘクトアールによって一瞬にして
奪い去られてしまった。
(こんな時、よしきちが、
僕たちがそばにいれば……!)
しかし、僕たちはズケインとの
激闘を終えたばかりで、
まだ現場への到着には時間がかかる。
絶体絶命、
敗北がすぐそこまで迫った、
その時だった。

「そのペンダントを、
こっちへ渡してもらおうか。
ヘクトアールよ」
冷たい空気の向こうから、
一人の男が立ち塞がった。
(誰だ……!? 新しい味方か?)
現れたのは、大地震の後、
姿を消した

サンスー族 四天王
『ヒョウ』だった。
ヒョウは、
生きていたんだ。
彼はヘクトアールにクールに、
そして、どこか情熱的に訴えた。
「そのペンダントを、
こっちにわたしてもらおう」
さすがのヘクトアールも
理解が追いつかない。
この男は、一体何を言っているんだ?
と言わんばかりの雰囲気が、
不気味なマスク越しでも、
ハッキリと伝わってくる。

「ヒョウ、どういうつもりだ。
私のてがらをよこどり
するつもりか?」
ヘクトアールの不気味な問いかけ対し、
ヒョウは静かに意外な言葉を発する…

「そんなことではない。
ただ、サンスラーを
この世に目覚めさせるわけには
いかないということだ」
その時だった。
激しい息を弾ませながら、
よしきちと、僕たちが、
ようやく洞窟へと到着した。
目の前の信じられない光景に、
よしきちの声が洞窟中に響き渡る。

「ヒョウ、お前いったい
何をたくらんでいるんだ!?」
すると、ヒョウは、
ひび割れたクールで甘いマスクで、
どこかスッキリした様子だ。
そして、
凛とした表情で微笑んでる。

「何もたくらんで
なんかいないさ。
ただ……前にあんたに
言われたことが、
少し分かりかけてきただけだ。
力の強い奴が世界を
支配するのが間違っている、
ということをな……」
あの大地震の後、
魔力を使い果たして
力尽きそうになっていたヒョウ。
そんな彼を救ったのは、
4年4組の心のきれいな子どもたち
『イクピ』『ピロコ』『ケイ』
だった。
敵であるはずの自分を、打算もなく

悪に染まった自分の心を満たすかのように、
純粋な優しさで救ってくれた。
ヒョウは、子どもたちの
『やさしい心』に触れたとき、
自らの過ちに気づき、
本物の『正義』に目覚めたんだ。
そして、
力の強い者が世界を支配する
ということが間違えだと確信して、
心を入れ替えたんだ。
「イ~~~~~ヒヒヒヒヒヒヒ」
しかし、一瞬の隙を突き、
空間から『カゲ』という魔物が現れた。

ペンダントは無慈悲にも、
シネン城にいる『魔王サンスーン』の元へ
導かれるように運ばれていってしまう。
「よしきち、
ここは私にまかせろ!!!
お前たちはサンスーンを
たおしに行くんだ。」
ヒョウは、ヘクトアールとの
一騎打ちに飛び出していった。
自分の力では、四天王最強の男には
到底勝てないと分かっていながら。

彼は自分の命を賭して、
僕たちの進むべき道を
切り開いてくれたんだ。
でも、、、
激戦の末、
ヒョウはヘクトアールに敗れた。
凄まじい勢いで、禍々しいオーラを纏った、
重厚な鎧が、空間を遮った。

結局、僕らはヒョウの最期の想いを
その背中に深く背負い、
最強の敵、ヘクトアールと正面から
対決することになったんだ。

「僕も、よしきちを
全力でサポートする!!」
相手の攻撃は苛烈を極めた。
だけど、これまでの異世界での戦いを経て、
お調子者だった僕は間違いなく、
確実に強くなっていた。
僕らは息を合わせてヘクトアールの
攻撃を次々とかわしていく。
その泥臭くも鋭い僕たちの実力を、
ヘクトアールも徐々に認め始めていた。
すると、彼は不敵に笑い、
この世界の重大な『秘密』を明かした。

「教えてやろう。
私の本当の名は
サンスーンジュニア。
サンスー族の王子だ」
ヘクトアールの正体は、
年老いて、日ごとに弱っていく
サンスー族の王サンスーンの息子だった。
父の最後の花道を飾るために、
『伝説のモンスター・サンスラー』と
合体させて最強の力を手に入れさせようという、
息子としての狂信的な計画だったんだ。

バババババババババババ…
「チェンジ!!」
バッ

その直後、よしきちは
サンスーンジュニアの放った
凶悪な呪文により、
近くにいたモンスター

『カケザーン』と
身体を強制的に
入れ替えられてしまったんだ。
「おーい、よしきち
だいじょうぶか」
余裕のない状況での
勇者の変わり果てた姿に、
僕は、右往左往し、
落ち着くことができない。
最強の勇者が、
愛嬌あるモンスターの
姿にされてしまった。
もう、終わりだ。
僕らの冒険も、
世界も、
ここまでか。
絶望が全員の心を支配した、
まさにその瞬間だった。

凄まじい衝撃音が響き、
サンスーンジュニアの
大きな身体が、黄色い閃光により
グラッっとよろめいた。
背後から強烈な一撃を叩き込み、
僕らの絶体絶命のピンチを
救ってくれたのは……

改心した
『ドバッチー』だった!
顔中を覆った、
呪いのヒビもなくなり、
全身に金色のオーラを纏っている。
4年4組の圧倒的なリーダーだった
ドバッチーが、今、本当の正義の力を
拳に宿して帰ってきたんだ。
ドバッチーの渾身の一撃によって、
僕たちは見事に

サンスーンジュニアを撃破
することに成功したんだ!
ヒョウ、
そしてドバッチー。
この2人は、それぞれ大きな過ちを犯した。
『力があるものだけが
この世を支配するべきだ』
と、強くなりたいと願う子どもたちの
心を利用し、呪いをかけたヒョウ。
その甘い言葉に騙され、
力を欲するあまり悪の道へと
それてしまったドバッチー。
けれど、
2人は気づき、改心した。
自分の過ちを認め、
最後は正しいことのために、
自分たちの持てるすべての力を使ったんだ。
自分たちの力を、
誰かを助けることに
生かしたんだ。
この世の中は、
本当に広い。
いろんな人がいて、
いろんな考え方がある。
力がある人が、
そうでない人を助ける。
これこそが、僕が考えた
『正義の価値観』
ヒョウとドバッチーの
2人が証明してくれた。
サンスー族の王子である
サンスーンジュニアの力より、
2人の正義の力が勝ったんだ。
僕は、過ちを犯しながらも
前を向いた2人の正義から、
教科書には載っていない
一番大切なことを学び、
また一つ、人として大きく成長
することができた。
ユーチは、『正義』を学んだ!
Lv35:目覚めたふたり 完 / Lv36へ続く
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