【小説】Lv31 地続き|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第4章 正義と別れ 編
【これまでのお話】
勉強も学校も大嫌い。
『だらしなキング』
と呼ばれていた
小学4年生のユーチ。
24歳の新任教師、
やまのべよしきとの出会いが、
少しずつユーチの人生を変えていく。
やまのべよしきが作った
『漫画×RPG×算数』の教材、
『サンスーファンタジー』
に夢中になったユーチは、
いつしかその世界へ
魂だけで
『ログイン』
してしまう。
異世界で出会ったのは、
カケザーンなどの数式モンスター。
大嫌いだった算数も、
RPGの冒険だと思えば戦える。
しかし、
子どもたちに算数の呪いをかける
最凶の軍団、
『サンスー族』
が勇者よしきちの前に立ちはだかる。
恐ろしい文章題を繰り出す
ケイサーンの部下、
イッショーニとベツベツーニ。
その恐怖に耐えきれず、
ユーチは一度、戦場から逃げ出した。
そして、現実世界へ
強制『ログアウト』
してしまう。
それでも、
異世界では、
勇者よしきちが一人、
戦い続けていた。
やがてユーチは、
再びサンスーファンタジーの世界へ。
今度は、
逃げない。
勉強からも。
サンスー族からも。
そして、
自分自身からも。
ユータン、タカチ、
そして勇者よしきちとともに、
四天王ケイサーンとの決戦へ挑む。
圧倒的な数字の暴力。
絶望的な戦場。
それでもユーチは、
最後まで鉛筆を置かなかった。
そして、自分が導き出した答えを
よしきちへ託す。
その一撃が、
四天王ケイサーンを
打ち砕いた!!
『だらしなキング』だった少年が、
初めて自分の力で
仲間の役に立った瞬間だった。
ユーチは気づく。
自分には、自分にしかできない
大切な役割がある。
そして、
「僕だって、
みんなの役に立てる」
という自信を手に入れた。
しかし、
戦いは終わっていなかった。
新たな四天王、
『ヒョウ』
が現れる。
子どもたちの「強くなりたい」
という気持ちを利用し、
悪の道へ引きずり込もうとするヒョウ。
さらにヒョウは、
勇者よしきちに世界支配を持ちかける。
しかし、よしきちは断固として拒絶した。
その瞬間、
大地が激しく揺れた。
それはヒョウの攻撃ではなかった。
原因不明の、
突然の大地震。
崩れ落ちる洞窟。
飲み込まれるよしきち。
ユーチとよしきちは、
別々の戦場へ
引き裂かれてしまった。
動き始める四天王ズケイン。
未だ姿を見せないヘクトアール。
そして、
本気になった四天王ヒョウ。
サンスー族の脅威は、
さらに勢いを増していく。
この地震は、
異世界だけの
出来事ではなかった。
現実世界でも、
何かが起ころうとしていた。
31年前の教室と、
サンスーファンタジーの世界。
二つの世界をつなぐユーチに、
今、大きな変化が訪れようとしている。
第4章 『正義と別れ 編』開幕。
Lv31 地続き

突然発生した大地震
僕が目を覚ますと、
そこは、現実世界の4年4組の教室だった。
僕は、あの地震で異世界から
ログアウトしてしまったんだ。
夢中になって冒険していたのが
抵抗不可能な自然の力によって、
遮られたからだろう。
それにしても、
凄まじい揺れだった。
まるで、大地の怒りのような...。
「よしきち!!!!!」
異世界のよしきちや、
タカチ、ユージョー、ユータン、
そして、僕は...
「頼む、無事でいてくれ...」
「こうしちゃぁ、いられない!」
早くログインしないと…。
頭の中でそんな焦りが渦巻いている時に、
その事件は起こったんだ。
季節はもう、秋だった。
今日は、毎週行われていた
漢字と算数のテスト返却日。
先生は、僕たちのやる気を
引き出すために、ある工夫をしてくれた。
両方のテストが
100点だったとき、
先生はみんなの前で
「W(ダブル)100点!」
と名前を呼んで、称えてくれたんだ。
「がんばったことを認めたい」
「自信を持ってほしい」
そんな、先生の温かい親心が詰まった、
クラス、みんなが楽しみにしている瞬間。
僕は、なかなか呼ばれなくて
悔しい思いをしていたんだけど...
その一方で、学年の後半まで、
ほぼ毎回のように『W100点』で
名前を呼ばれる、
素晴らしい努力家の女の子がいた。
異世界のキガク村にいた、

天才楽器作りの『ミポ』
のモデルになった子どもだった。
彼女にとってその時間は、
自分の頑張りが認められる誇らしい
瞬間だったはず。
事件は、そんな幸せな時間に起きた。
4月からずっとW100点だった女の子が……
その日のテスト返却で、
いつもなら必ず呼ばれるはずの、
彼女の名前が呼ばれなかったんだ。
一瞬の静寂...
その隙を突くように、
クラスのやんちゃな男の子たちが声を上げた。
「イエーーーーーーーイ!!」
彼女が『W100点』を逃したことを、
4年4組の男の子たちは、
大喜びしたんだ。
彼女はその場に突っ伏して
目から大粒の雫で机を濡らした。
当然のことだと思う。
大人になった今、
客観的に振り返っても、
胸が締め付けられるほどの
『最低な光景』
先生が子どもたちのために作った
『温かい場』を、僕たちが一変させてしまった。
その瞬間、
異世界で起こった大地震と同じ、
いや、それ以上の衝撃
すべてを振り切る速さを持ち、
凄まじい破壊力を持つ、
まさに勇者の雷だった。
それは、僕たちがそれまで
見たこともないような、
地鳴りのような怒り。
「君たちの点数は、
問題外だ!!!!!!!!」
ひらり、
ひらり、
ひらり、
ひらり、
しゅーぅ......
ばさっ!!
束ねられていたペーパーが、
鮮やかに宙を舞い、
無造作に地面に着地した。
その言葉の重みを、
小学生ながらに
受け取ることは容易だった。
でも、不思議と怖くはなかった。
僕たちは分かっていたから。
僕たちは越えてしまったんだ。
学級開きの日に先生が言っていた。
『先生が絶対に許さない一線』を。
僕たちは人の心を
傷つけてしまったんだ...
先生は、彼女を傷つけた者たちに対して、
そして『人の失敗を喜ぶ』という醜い心に対して、
僕たちと全力で向き合ってくれたんだと思う。
心優しき勇者の
瞬時の雷だった。
あの時、泣き崩れた女の子は、
今でもこの出来事を覚えていると思う。
時間がどれほど流れても、
あの瞬間の痛み、
あの瞬間の恥ずかしさ、
あの瞬間の孤独は、
完全には消え去らない。
「心の傷は絶対に消えない」
先生が教えてくれたこの言葉は、
長い月日を重ねるほど、
より一層の重みを持って
僕たちの心にのしかかっているんだ。
異世界での大地震は、
現実世界でも先生の怒りという
『地続き』
でつながっていたんだ。
僕は、この出来事をきっかけに、
『あること』について
深く考えることになる。
4年4組は、心の傷が絶対に
消えないことを学んだ!
Lv31:地続き 完/Lv32へ続く
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『先生、冒険の続きを。
〜31年目のサンスーファンタジー〜』
▼ 第1章 ~ 第3章(Lv1〜Lv30)
