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【小説】Lv11 ログイン|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第2章 異世界突入編


これまでのお話


31年前のとある教室で、
だらしなくて、忘れ物ばかり。

クラスメイトや周囲の人から、
だらしなキングと呼ばれていた。

勉強も学校も大嫌いだった
小学4年生の少年『ユーチ』

そんな少年の前に現れたのは、

24歳の若き教師、
やまのべよしき先生。

黒板いっぱいに
描かれた冒険の地図。

「今日から一緒に冒険をする仲間です」

その一言から、
すべてが始まった。

先生は、
優しさを教え、
本気で遊ぶことを教え、
仲間を信じることを教え、

そして、

算数を、
“冒険”に変えてしまった。

『漫画×RPG×算数』
誰も見たことのない学習教材

『サンスーファンタジー』

それは勉強ではなく、
子どもたち自身が主人公になる冒険だった。

しかし、
少年ユーチは気づき始める。

小4の春に骨折した日から感じていた
説明できない違和感。

先生が語った
『異世界』の話。

そして、

サンスーファンタジーを手にした
瞬間に感じた奇妙な魔力。

それは偶然ではなかった。
物語の歯車は、

静かに、
しかし、確実に動き始めていた。

ここから先は、
僕自身が生きる物語だ。

現実と異世界。
二つの世界が交わる時、

31年前の秘密が、
少しずつ姿を現し始める。

さあ、ページをめくろう。

第二章、開幕。



Lv11 ログイン



「……追え、奴らを。
決して逃がすな」




地を這うように低く、重々しい謎の声。
誰の、何の叫びなのかはわからない。

けれど、まるで数式の世界を何百年も
生き抜いてきたかのような、
圧倒的な威厳に満ちたその声は、
僕の脳裏の奥底をジリジリと
焦がすように鳴り響いていた。

先生が配ったプリントを前に、
僕の心臓はドクドクと高鳴っていた。

不穏な予感と、
それを上回る圧倒的なワクワク。

それが

『サンスーファンタジー』
が放つ魔力。


なのか。

それとも

先生という人の
底知れない魅力のせいか。


また、

腕を骨折した時の違和感のせい

なのだろうか。

わからない。

けれど、あの1枚の紙を手にした瞬間に、
僕の指先から脳裏へと宿った
あの奇妙な感覚だけは、
間違いなく本物だった。

次の日の算数の時間、
先生は、記念すべき最初の1枚を
僕たちの机に配った。

プリントの最上部に躍る文字は、

『サンスーファンタジー Lv1 旅立ち』


相変わらず、
僕は勉強は大嫌いだった。

漢字の書き取りも、
算数の計算ドリルも、
見るだけで嫌気がさす。

でも、

この『サンスーファンタジー』なら、
僕にもできるかもしれない。

ゲームが大好きな僕なら、
この冒険をクリアできるかもしれない。

そんな、勉強に対する初めての前向きさが、
胸の奥からふつふつと湧き上がってくるのを
感じていた。

「このプリントを使って、
思いっきり勉強するんだ!」


机に向かい、鉛筆を握りしめる。

気がつけば、僕は恐ろしいほどの
猛烈なエネルギーで集中していた。

プリントに描かれた、
吸い込まれるような美しい物語。

クラスメイトが次々に登場する、
先生の圧倒的な画力。

今まで、僕を苦しめるだけの
冷たい活字にしか見えなかった

『数 字』


その一行一行が、
今はまるで、僕に解かれるのを
待っているように見えて、
たまらなくワクワクした。

プリントに取り組んでいくと、

僕は、集中という領域を
完全に通り越して、
ただただ、

『夢 中』


になっていた。

ガヤガヤと騒がしいはずの周りの
クラスメイトの声も、
鉛筆を走らせる音も、
何もかもが僕の耳には届かなくなっていた。


世界から、音が消えていく。



すると。

あんなに熱く脈打っていた胸の奥が、
急にスーッと静かになり、
なんだか猛烈な眠気が僕を襲ってきた。

まぶたが、鉛のように重たい。
視界が歪み、意識が、
底なしの深い場所へとどんどん遠のいていく。


「…あぁ、僕、やっぱり勉強が
嫌いなのかな」




こんなに面白いプリントなのに、
やっぱり勉強をはじめると眠くなっちゃうんだ。

だらしなキングの僕には、
サンスーファンタジーでも、
やっぱりダメだったのかな。

そんな情けない後悔を最後に、
僕の思考は完全にシャットダウンした。

鉛筆が手から転がり落ちる音すら
聞こえないまま、僕は教壇の上の
先生の目の前で、そのまま深い闇の中へと、
気を失うように眠りに落ちてしまったんだ。















ぐにゃり



















「ユーチ、起きろ...」








どれくらいの時間が経ったのだろう。

誰かの声が聞こえたような気がして、
僕の意識が戻った。

まだ頭がぼんやりとする。

いつものように、
机にヨダレでも垂らしながら居眠りをして、
先生にデコピンでもされるんだ。

そう思った。
けれど。

教室は、静まり返っていた。
先生の声もしない。

クラスメイトたちの気配も、
机を並べる音も、何一つとして聞こえない。


誰も、いない。



おかしい。

もう放課後になっちゃったのかな。
そう思って、僕は自分の周り見回して、
息を呑んだ。

そこは、古い鉄製の扉がある、
いつもの4年4組の教室となんか違う。
扉は木製だったはず...


見上げるほどに広大で、

どこまでも澄み切った青空。


目の前に広がるのは、

見たこともない
鮮やかな緑色の草原。



冷たい風が、
僕の頬を優しく撫でて通り過ぎていく。

そして、遠くの地平線に見えるのは、
あの『サンスーファンタジー』に描かれていた、
あの巨大なシルエット。



「う、うそ、だろ……」




現実じゃない。
でも、夢なんかじゃない。

風の匂いも、
土の柔らかさも、
すべてが五感にダイレクトに
伝わってくる。

そう、ここは。
僕たちが昨日までプリントの中で
眺めていた、あの冒険の舞台。

『ヨンヨン城』



だらしなキングだった僕の、
本当の命がけの大冒険が、
今、ここから始まるんだ。

僕は、寝てしまったんじゃない。
サンスーファンタジーの世界に

ログインしてしまったんだ。


さぁ、冒険の書を開け!

Lv11:ログイン 完 / Lv12へ続く


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