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【小説】Lv2 魔法の黒板|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第1章 冒険への誘い 編

【前回のお話】



4年4組の教室の前に立ち、
古い扉にそっと手をかけた。

木製の扉の木の香り、
手をかけた取手の冷たさ、
どこか不思議な心の高鳴り、

その時。

閉ざされた扉の向こう、
新しい4年4組の教室の中では、
すでに信じられないような
『魔法』が掛けられていたんだ。


ガラガラ……。



心地よい摩擦音とともに
引き戸を開けた瞬間、
教室の中にいた
クラスの誰もが完全に心を奪われていた。

みんなが荷物を抱えたまま、
ただ呆然と、前方に広がる
大きな緑色の壁を見つめている。

いつもなら、ガヤガヤと久しぶりの
再会に騒いでいるはずの初日の朝。

教室に入った僕もまた、
入り口で足がすくんだまま、
一歩も動けなくなってしまった。

僕たちの視線の先。

教室の正面にある、
いつもは見飽きているはずの、
あの四角くて、暗く、退屈なはずの...

そこに、
信じられない光景が広がっていた。

色鮮やかなチョークを駆使して、
黒板の端から端まで、
見たこともないほど巨大な

『冒険の地図』の
絵が描かれていたんだ。


31年前の当時、
黒板アートなんて、
存在していない時代。

それは学校の先生が授業の合間に描くような、
おざなりな落書きなんかじゃ断じてなかった。

信じられなかった。

これまでの10年間の
僕の人生の中で見たどんな絵よりも、

圧倒的にうまい。


そして、、、なによりも、

見つめているだけで
心臓がドクドクと動き、
バクバク音を立てて暴れ出すくらい、
すごく、ワクワクする絵だった。

一体、誰が、何の目的で、
この絵を描いたんだろう。

息を呑んで見惚れる僕たちの視線の先。

大冒険の地図の、
一番目立つ場所に、
カラフルで力強く、
迷いのない筆跡で
メッセージが刻まれていた。


『今日からいっしょに
冒険する仲間です』



ドクン、と胸の奥を
激しく矢で貫かれたような感覚だった。

31年たった今も、
その矢は抜けないままだ


学校という、つまらなくて
窮屈なはずの場所に着いて、
こんな熱い気持ちになったのは、
生まれて初めてのことだった。

それまでの僕にとって、
学校という空間は、
ただただ退屈で、
息が詰まって、
我慢するためだけの場所でしかなかった。

授業を聞いてもわからないから

勉強も嫌い。



足が遅くて不器用だから

運動だって、
工作だってダメ。



毎日毎日、忘れ物や落とし物
ばかりをしては、先生や親に

「また失くしたの?」

「どうしてできないの?」


と怒られてばかり。


僕の目に映る学校生活の景色は、
いつだって冷たくて、色がなくて、
どんよりとしたモノクロの世界だったんだ。

今日もきっと、
そんな灰色の一日が始まるんだと、
そう諦めながら重い足取りで
登校してきたはずだった。

それが今、目の前にある
カラフルな地図によって、
一瞬にして、鮮やかに彩られていく。

世界に、一気に眩しい光が
差し込んできたような気がした。

「この黒板、すごい、
本当に、すごい。」


ここは、ただただ退屈な授業を
耐え忍ぶための場所じゃない。

漢字の書き取りや、算数の計算を、
お説教されながら無理やり詰め込まれる
部屋なんかじゃない。

ここはもう、僕たちの『冒険の舞台』なんだ。
この地図の向こうへ、みんなで旅に出るんだ。

一瞬でそんな感覚になった。

「誰だ、一体、誰なんだ!」

新学期の最初の朝、
誰もいない教室に忍び込んで、
こんな魔法のような技を使ったやつは。
僕たちを魔法で操ろうとしているのか。

僕たちを、こんなにも一瞬で
ワクワクさせてしまう、
この絵を描いたのは。

……なんか、ものすごいことが始まる気がする。

いや、違う。
気がするんじゃない。

僕が、あの古くて冷たい扉に手をかけ、
ガラガラと音を立てて開けたあの瞬間に、


もう始まっていたんだ。


誰も見たことのない、
僕たちの冒険が。

黒板の絵を描いたのは誰だ!

Lv2:魔法の黒板 完 / Lv3へ続く

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