【小説】Lv36 いざ、うみへ|先生、冒険の続きを。~31年目のサンスーファンタジー~|第4章 正義と別れ 編
Lv36 いざ、うみへ
魔王サンスーン、
そして、
最強のモンスター サンスラーが
待ち受ける敵の本拠地
『シネン城』
そこで、最終決戦がいよいよ
始まろうとしていた。
シネン城は、はるか遠く、
荒れ狂う海の上に
ドッシリと浮かんでいる。
城へ向かうためには、
どうしても勇気ある船乗りが必要だった。


僕たちが港にたどり着くと、
そこには4年4組の心のきれいな仲間
である『サコン』と『トモ』が、
大きな船の前に待っていてくれた。
2人が船を操縦して、
僕たちをシネン城まで
運んでくれるというんだ。
こんな最終決戦の直前に、
船を操縦してくれる
心強い仲間がいるなんて、
本当に、本当にありがたかった。
たくさんのカモメが鳴き、
自由に空を飛んでいる。
そして、港の冷たい潮風に吹かれながら、
よしきちが、静かに僕たちの前に進み出た。

「今回のたたかいは、
ズケインやサンスーンジュニアの
たたかいよりも、何倍も
きびしくなるような気がする。
みんなの命の
ほしょうもできない。
…だから、みんなはムリを
せず、ここに残ってくれ!!
あとは、おれと、
サコンとトモで
なんとかする…!」
よしきちは、どこまでも
僕たちの命の安全を最優先しようとしていた。
これから始まるのが
どれほど恐ろしい戦いか、
よしきち自身が
一番よく分かっていたからだ。
仲間は、1人でも多いほうが
いいに決まっている。
それでも僕たちを
危険に晒したくないという、
勇者としての圧倒的な正義感と、
深い優しさがよしきちから、
にじみ出ていた。
だが、そんな言葉で
引き下がる僕たちじゃない。

「おい!!船は、
5人乗りなんだろ!!
それなら、オレも行くぜ!!!」
真っ先に手を挙げたのは、
あの改心したドバッチーだった。
サンスーンジュニアを倒した強さ。
最強パーティーにふさわしいと思った。
本当の正義の強さを取り戻した
ボスが、不敵な笑みを浮かべて参戦を志願する。
これで、
乗船枠は残り『あと1人』
誰よりもサンスーファンタジーを愛し、
そして、誰よりも勇者よしきちへの
愛に溢れた僕が、ここで黙っていられる
はずがなかった。
細いキツネ目で大きな口を開け、

「よしきち!! お〜まえだけに、
いいかっこはさせないぜ!!!」
もちろん、僕も拳を突き上げて
全力で手を挙げた。
今度こそ、よしきちの最高の相棒として、
あの海を渡るんだと信じて疑わなかった。
その瞬間だった。
背後から、ゾクッとするような
凄まじい殺気を感じた。
ネズミが猫に睨まれている、
いや、虎に狩られるような気配。

振り返ると、4年4組の
心のきれいな子どもたちの中で、
ダントツでクラス1強い女子の
『ユーカン』が、
目を怪しくギラつかせて立っていた。

ユーカンは、
一瞬で自らの圧倒的な力を見せつけた。
あまりの破壊力に、
よしきちの目が輝く。

「ああ、たしかに女の子
ながらにたいした力だ。
ぜひ、力になってくれ」
ぜひ、力になってくれ、
ぜひ、力になってくれ、
ぜひ、力になってくれ、
ぜひ、力になってくれ……。
よしきちのその声が、
僕の耳の奥で何度も、
何度もむなしくリフレインした。
これで船の定員いっぱい。
僕たちの最強パーティー5人が、
ここに決定した。

そして、その中に、
僕の名前はなかった。
よしきちを一番近くで支える、
1番の戦士になりたかったのに。
僕は、選ばれなかった。
世界を救う最後の決戦の場に
行くことすら、
僕には許されなかったんだ。
結局、僕はシネン城へ行く
船に乗せてもらえず、
いつものお調子者の3枚目キャラらしく、
ユーカンから

『強烈なゲンコツ』
を頭に食らうことになった。
あの時は、
まだ何も分かっていなかったんだ。
このサンスーファンタジーの
異世界で...
この不器用な
『ゲンコツのシーン』こそが。
僕、ユーチの、ラストシーンに
なるなんていうことは。
その時は知らなかった。
その文字が刻まれたプリントが、
僕にとって、よしきちの隣で
戦うことのできた、
最後の冒険の記憶となったんだ。
『Lv74 いざ、うみへ』
ユーチ、海を渡れず!
Lv36:いざ、うみへ 完/Lv37へ続く
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『先生、冒険の続きを。
〜31年目のサンスーファンタジー〜』
▼ 第1章 ~ 第3章(Lv1〜Lv30)
