詩┆水平線の向こうの私
目の前に映る君は、
水平線の向こうにいる、
ほかでもない私。
焦って乱れた髪を整える私も。
目をぱちくりして化粧を確認する私も。
ぜんぶ、私なの。
でも、この場所以外では、
ちゃんとやれている。
弱い私は、
ぜんぶ君にあずけてきたから。
今夜だって、いつものように、
ひみつの呪文を唱える。
——キエテシマエ。
目の前の君は泣いているけど、
これで私はきっと笑っていける。
だって君は、
こちら側には来られないはずだから。
つらい思い出だけじゃない。
ひどい言葉だって。
画面の向こうへ投げた嘘も。
海の向こうで燃える街も。
ぜんぶ、
線の向こうにあずけてきた。
君を置き去りにしてでも、
私は笑っていたかった。
ピキッ。
ふいに、君は動いた。
境目に亀裂が入る。
——イヤダ。
その瞬間、
腕が引っ張られる。
ずっと、遠くへ。
水に溶け込むように。
君が私を閉じ込めていたのか。
私が君を閉じ込めていたのか。
ここはどこなのか。
どこまでが本当なのか。
——ワカラナイ。
どちらへも進めないまま、
流されてゆく。
それでも。
こぼれた涙だけは、
嘘にさせるものか。
