香りから審査される昼ごはん
夏休みのお昼ごはん作りは、億劫である。
だって、子どもたちに決めさせたら、すぐにマックだの寿司だの好き勝手言いたい放題。予算だってあるんだ。湯水のようにお金が湧いてくるシステムじゃない。毎度のようにお金をかけてられないから、できる限り安く済ませたい。もっと言えば、家にあるものでチャチャっと作ってしまいたい。
ゲームに勤しむ子どもたちをアテにできないので、今日のお昼は私が決める。私だけじゃない。子どもたちも喜ぶものを作りたい。
冷蔵庫に顔を突っ込み10秒。ウインナーがもうすぐ賞味期限だから使おう。玉ねぎもたくさんあるから良し。パスタがあるから、今日はナポリタンだ。
わが家の定番の塩昆布とツナのパスタではなく、今日は見た目も鮮やかなナポリタンにしよう。ピーマンがないから少し彩りが偏るけど、それでもきっと大丈夫。炒めたケチャップの香りが食欲をそそるだろう。
玉ねぎとウインナーを刻みながら、パスタを茹でる湯を沸かす。ケチャップやソースなどを混ぜた合わせ調味料を作っておくと、炒めるときに楽になる。パスタを鍋に入れると、小6二男がやってきた。
「今日のお昼はなあに?」
「ナポリタンです」
「ナポリタンって何だっけ」
「ケチャップ味のスパゲッティだよ」
すると、「やったー!たぶんおいしいやつ!」と大喜びで中2長男へ報告に行った。
さて、期待に応えられるよう作らなければ。パスタを茹でながら、隣のコンロで具材を炒める。玉ねぎに透明感が出たら、合わせ調味料を入れて少しふつふつさせる。ケチャップの香りがキッチン中を漂う。すると子どもたちが寄ってきて、鍋の近くで深呼吸をした。
「はあ〜、香りがおいしいね」
香りから審査されているようだ。期待値がとても高い。フライパンでぐつぐつ煮える真っ赤なソースを見て、ニヤニヤしている。
パスタが茹で上がったら、フライパンにパスタだけ移してソースとよくあえる。麺がオレンジ色に染まっていく様子を見て、「いいねぇいいねぇ」と合いの手を入れてくる。
皿に盛り付けようとすると、「僕のは大盛りね!」と二男が欲をかいた。負けじと長男も「僕のこそ大盛り!」と言ってくる。大丈夫。パスタ麺を多めに茹でておいたから、お腹いっぱいになれるはず。
子どもたちの監視のもと、慎重に盛り付けた。私の皿は少なめにして、子どもたちの皿は平等に大盛りにする。そうしないと、後で喧嘩になってしまうから、ここは絶対に采配を間違えてはいけない。
それぞれのナポリタンを食卓へ運んで、いざ実食。

「好みで粉チーズをかけていいよ」といったら、2人のナポリタンの上に粉チーズの山が出来上がった。そんなに粉チーズかけたかったのね。
「おいしい!」
「うまいうまい!」
嬉しそうに頬張っている様子を見て安心したところで、私もひと口。
うん、おいしい。
上手くできた。
思わず微笑んでしまうおいしさ。想像以上に上手にできたのが嬉しくて、写真を夫に送りつけた。すると夫からも、「おいしそうだね。いいなあ」と返事が来た。そういえば、夫はナポリタンが好きだった。なのに、いないときに作ってしまうのはなぜだろう。
あ、そうだ。夫は子ども以上に大盛りを食べたがって、パスタの量が尋常じゃなくなるからだ。麺を増量したら、調味料も調整しなければならない。それが面倒でナポリタンを4人の選択肢に入れてなかったんだ。「ナポリタンなんて作れません」という顔で、今までやり過ごしてきた。でも子どもの前で作っちゃったから、いつかは夫がいるときにも作らなければならない。うちのフライパンで作り切れるかしら。心配だ。
そんなことを考えながら食べていたら、あっという間に子どもたちが食べ終えた。
「お母さん、これまた作ってね」
「今度はもっと大盛りで!」
とりあえず今は、子どもが満足してくれればいいや。
と思ったけど、その日の夜、夫が帰って来るなり言った。
「写真見てたらナポリタンの口になっちゃったよ。どうしよう。ナポリタン食べたい」
どうやら、今週末は大量のナポリタンを作ることになりそうだ。
