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アメリカのZ世代が今、10年前の"根拠なき前向きさ"に憧れる理由、Millennial Optimismに迫る

2025年11月末、アメリカのTikTokにひとつの動画が流れてきた。

投稿主は@millennial.ca

彼女はトロントを拠点に、ミレニアル世代の懐かしい文化やネット美学をTikTok・Instagramで発信するクリエイターだ。

キャプションは「Idc I miss the 2010s(別にいいけど、2010年代が恋しい)」。粒子の粗い写真、寄せ集めのハウスパーティー、意味もなく撮った友達との1枚。そこに流れるのは2009年のインディーフォーク曲「Blood」(The Middle East)。

わずか10数秒の動画が、38万件以上のいいねを集めて拡散し始めた。

きっかけとなったこの動画から生まれたのが、「Millennial Optimism(ミレニアル・オプティミズム)」と呼ばれる文化現象だ。半年以上たった今もアメリカのSNSで語られ続けている、なかなかしぶといトレンドである。

「懐かしい」のに、経験していない世代が主役

このトレンドの一番おもしろいところは、盛り上がらせているのが当事者世代ではないという点だ。

「ミレニアル・オプティミズム」が指すのは、おおよそ2010年代前半、ミレニアル世代(1980年代〜1990年代半ば生まれ)が20代だった頃の空気感。Tumblrに自分の世界観を作り込み、フラワークラウンのSnapchatフィルターをかけ、「いつか人生は動き出す」と根拠もなく信じていた時代だ。

これを懐かしがっているのが、当時まだ子供だったZ世代なのだ。彼らはこの時代を生きていない。にもかかわらず、メッシーバンにジェルペンで書いた手書きの名言、カフェでバイトしながら6人でルームシェアする未来を夢見ていたあの空気を、まるで自分の記憶であるかのように懐かしんでいる。

Forbes、英GQ、Daily Dot、InsideHookといったメディアが軒並みこの現象を記事化し、TikTok上では「Millennial Optimism Explained(ミレニアル・オプティミズムとは)」という解説動画自体が4万件超のいいねを集めるほどの盛り上がりを見せた。

なぜ今、この現象が起きているのか

背景にあるのは、シンプルに言えば「今のSNSに疲れた」というZ世代の感覚だ。

AI生成コンテンツがフィードに溢れ、アルゴリズムがすべてを最適化し、投稿ひとつひとつが”パフォーマンス”になっている現在の環境。そこから逃げ込む先として選ばれたのが、まだアルゴリズムがそこまで強くなく、投稿がもっと雑で個人的だった2010年代前半だった。

実際、この現象は同時期にバズった「2026 is the new 2016(2026年は新しい2016年)」という大きなノスタルジー潮流の一部でもある。こちらはすでに日本のメディアでも報じられているので、ご存じの方もいるかもしれない。ただ「ミレニアル・オプティミズム」は、その中でもより世代論的な切り口を持つ、独立したサブカルチャーとして扱われている。

当のミレニアル世代からは、静かな異議あり

ここからが、このトレンドを単なる懐古ブームで終わらせない面白さだ。

盛り上がりを見て、当のミレニアル世代がこう反応し始めた。「その時代、実はそんなに前向きじゃなかったけど」と。

あるクリエイターは、当時イラク戦争のニュースを見て育ち、2008年のリーマンショック後の就職難、莫大な学生ローンを抱えながら20代を過ごした経験を語り、「あの頃、自分は人生で一番悲観的だった」と証言した。

トレンドで使われている「Blood」という曲も、実は明るいメロディーに反して歌詞は悲哀に満ちているという指摘も出ている。

つまりZ世代が”懐かしんでいる”のは、実際にあった時代そのものではなく、後から都合よく再構成された記憶のイメージだ。歴史修正主義的なノスタルジー、と言ってしまうと大げさかもしれないが、構造としてはそれに近い。

(ここから先は、この現象が今どんな方向に発展しているか、日本の”平成レトロ”ブームとの構造的な違い、そして今後日本のSNSでも起こりうるかについて、もう少し踏み込んで書いていきます)

もっと詳しく知りたい方へ

このトレンドの続報や、他の「海外ではバズっているのに日本ではまだ知られていない」ネタは、今後もこのマガジンで随時取り上げていく予定です。よければフォローしてお待ちください。

出典: Forbes, InsideHook, Daily Dot, The Tab, HerCampus, Thred, Wikipedia「Millennial optimism」項目 ほか(2025年12月〜2026年6月の各報道に基づく)

 

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