大文字山に登ってみた
大学時代、私は通学の足として叡山電鉄 出町柳駅を利用していた。学校への行き帰り、いつも視界に入っていたのが大文字山(右大文字)だ。あの頃の私にとっては、ごく日常の風景の一部でありながら、一度も登ったことがなかった。それから40年近くが経ち、2025年12月にようやく大文字山を訪れる機会に恵まれた。
大文字山といえば、毎年8月16日の“五山送り火”が何より有名だ。送り火が灯される場所は「火床」と呼ばれ、大文字山を訪れると山頂と火床の両方を楽しめることになる。あの火床から下界を覗くと、一体どんな景色が広がっているのだろうか――今さらながらもそんな興味も背中を押した。
一般的には、銀閣寺の裏手から火床に至るルートがよく使われている。しかし今回はせっかくの機会なので、蹴上から登るルートを選び、大文字山を目指すことにした。
このnoteに登場する地名と進行方向はこんな感じ。

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出発前に東山駅の近くにある「お福」でけいらんうどんを食べ、しっかり腹ごしらえを済ませた。その後向かったのは、蹴上駅から少し南にある日向大神宮。ここから京都一周トレイルを利用し、大文字山の山頂と火床へ向かう計画だ。参考にしたのは「“京トレの聖地” 大文字山を登る。」という記事である。


琵琶湖疏水船の蹴上乗下船場を横目に見つつ、想像していたより長い順路を歩いて日向大神宮に到着。少し休憩をとってから京都一周トレイルコースへと進むと、そこからすでに本格的な山道が始まっていた。



登ったり下ったりを繰り返しながら進んでいると、大文字山方面からやって来た多くのハイカーとすれ違い、「こんにちは」とあいさつを交わす。いくつかのグループからは「あとどれくらい着きますか?」と尋ねられた。彼らはすでに1時間半ほど歩いているので、ゴールの目安がわかれば、もうひと踏ん張りできるのだろう。


日向大神宮を出発してから約2時間、ようやく大文字山の頂上に到着した。標高465メートルと決して高い山ではないが、登りきったときの達成感はしっかりとある。山頂付近は木々が視界を遮っていて足元の眺望こそ限られるものの、頂上ならではの開放感は格別で、平地の散歩では得られない心地よさがあった。その景色と空気を前に、同行者もうれしそうだった。


山頂には、いろいろなタイプの人たちがいた。天気の良いハイキング日和だったこともあるのか、いかにもハイカーな人たちからカジュアルな服を着た10代、引率された小学生、いろいろな国籍の人まで様々だ。
次の目的地は火床だ。頂上からは、どうやら1時間弱で到着できるらしい。落ち葉に覆われて足元が見えにくい山道を、滑らないよう慎重に進んでいく。この頃はかなり疲れていたけど、前方から山頂にいた小学生たちの元気な歓声が聞こえてきて、ずいぶん励まされた気がする。
火床からの眺望はまさに絶景だった。下からあれほどよく見えるのだから、上からの視界が開けているのも納得だ。この日は天気にも恵まれ、遠くまで見渡すことができた。条件が良ければ、あべのハルカスや梅田スカイビル、さらには四国まで見えるという。また、夕方になると夕陽を目当てに訪れる人も多いらしい。



火床から銀閣寺までは道もわかりやすく、迷う心配はほとんどない。このルートでは、いかにもハイカーという装備の人以外にも、銀閣寺観光のついでに立ち寄ったような軽装の人が増えてくる。銀閣寺近くの入り口には、このような看板が立っていた。私も次回はこちらからのルートで火床を再訪したい。

日向大神宮を出発したのが12時半、銀閣寺に着いたのが16時過ぎ。銀閣寺道で振り返ると、つい先ほどまでいた火床のあたりがはっきりと見えた。

その後は祇園方面へゆっくり散歩しながら向かい、四条大橋東詰にある南座の隣の「松葉」で名物のにしんそばを食べた。にしんそばは見た目があまりおいしそう見えないので、昔は敬遠していたけど、ここの一杯を食べてからすっかり好きになった。かつて京都でパソコン雑誌のインタビューを受けた際、「取材後すぐに東京へ帰る」と言う編集者を、せっかくだからと誘ってここで食事をしたのを、ふと思い出した。

この日歩いた距離は合計でおよそ23km。山歩きを含んでいるので、我ながらよく頑張ったと思う。京都でのハイキングは今回が初めてだったが、次はどの山に行こうか——すでに楽しみになっている。
