【写真詩】追想の水鏡
水と空との狭間
水面に映る草陰を揺らし
ひらひらと舞い枯れる
しのび草

憂う面影を映す 水鏡
すくい上げたら
零れおちる
淡い記憶たち
消えゆく影に記憶の跡
透き通る心は
どこまでも澄み渡り
揺らめく水景
夢の続きの中に沈んでいく
霞む空の鳥の影
閉じ込められた
水底を飛ぶ
幻影の翼
枯れ始めた彩り
失われた日々の
遠い約束のように
手の届かない
追憶の彼方へ
たそがれ老人のつぶやき
ファインダーが切り取った「事実」は、水面、草、枯れ枝、そして大空を自由に飛ぶ鳥の影です。
一枚の、ただの水辺の写真から生まれる心象、今この時に生まれた、そこから感じる感情、 静寂と孤独、命への渇望、そして去りゆく時への切ない思い。
映り込んだ鳥影と枯れ枝、それは、遠い記憶の残像で、未来への漠然たる不安。
2度と戻らない風景がある、見えていた景色が消えて妄想が映り込む。
水と空の狭間に現実と幻想が溶け合い、好奇心の向くまま、手の届かない遠い記憶を言葉に変えていく。
心はあてもなく彷徨い、遠い記憶の写真ばかり眺めて、頭の中の、想像領域に分泌過剰な妄想、老化途中に起きた、幻想のクリエイション。
平穏な日常の中で、少しずつ削られていく時間。
沈黙の奥にある、言葉に尽くせないすべてを、 今日も液晶の向こうへと放ってみる。
しのび草、
その影は、
静かに、しかし確かに、
私の心を、 水鏡の奥へと、
連れ去っていく。
何処へ?
おそらく、
まだ誰も見たことのない、
心の最果てへ。
