朝の10分間を「BC」と呼ぶ理由——それは、夢を征服するための最短ルート
鈴鹿中等教育学校(鈴6)の朝は、8時25分のチャイムとともに始まります。そこから始まる10分間の時間は、校内では当たり前のように「BC」と呼ばれています。
「今日のBC、何だっけ?」「BCの勉強しなきゃ」
生徒たちの会話に日常的に登場するこの言葉ですが、実はその正式名称や、名前に込められた本当の意味を知る人は、今や校内でもほとんどいないかもしれません。
そこで今回、本校が鈴鹿中学校として開学した2年目から教壇に立ち、誰よりも鈴6の歴史を知り、そして愛している英語科の先生に聞いてみました。この先生は、後輩や若手教員にも常に紳士的で優しく、多くの卒業生から慕われている「鈴6の生き字引」のような先生です。
「連休中の自習課題」として自らに課し、丁寧に綴ってくださった回答をもとに、知られざる「BC」の物語を紐解きます。
「BC」とは何の略なのでしょうか
そもそも「BC」とは何の略なのでしょうか。教えてくれたその正体は、意外にも力強く、情熱的なものでした。
BCは “The Best Approach to Conquest” を意味し、開校当初から実施されています。
直訳すれば、「征服への最善の道」。
単に点数を競う小テストではなく、たとえ小さな一歩であっても、日々の積み重ねを続けることこそが、卒業時にそれぞれの夢や希望を叶える(征服する)一番の近道である。そんな熱い想いが、この10分間に込められているのです。
41年目の変遷:読書、リスニング、そして「65分授業」
BCの運用は、その時々の生徒の状況に合わせて、各学年の裁量に委ねられてきました。41年という長い歴史の中では、さまざまなドラマがありました。
多様なメニュー: 既習事項の復習、単語・漢字テスト、週末課題の確認、リスニングなど、学年ごとに工夫が凝らされています。
学年を越えた交流: 複数学年で同じ範囲を競う「チャンク・カップ」のような、生徒のやる気を刺激する取り組みも行われてきました。
読書の時間: 読書習慣をつくるために、学年全体で静かに本と向き合う時間を設定したこともあります。
かつての「1限目」: かつての高等部(現在の後期課程)では、BCの10分、休憩5分、そして1限目の50分を繋げた「65分間の1限目」として展開していた時期もありました。
「たかが10分、されど10分」がもたらす魔法
BCが持つ「小さな成功体験」の価値を強調します。
「たとえ10分、されど10分」「たとえ20点、されど20点」です。
定期考査の100点満点で満点を取るのは難しく感じても、「20点満点のテストなら、満点が取れる気がする」。そんな心理が、生徒たちのやる気を引き出します。
実際に、前回の自分を少しずつ超えていく喜びや、掲示された結果を見て「次はもっと」と奮起する姿など、BCを通じて多くの生徒が自分自身の力に気づいてきました。先生方にとっても、生徒の「小さな頑張り」を見つけて褒めることができる、大切なコミュニケーションの種になっているのです。
卒業して気づく「一番の近道」の価値
もちろん、毎朝のテストが楽しい思い出ばかりであるはずはありません。卒業生からこんな声を聞くこともあるそうです。
「在学中に真剣にBCを受けていなかったことを、今となっては後悔している。浪人時代に身に染みた。」
現役時代には「面倒だな」と思っていた時間が、実は基礎力を支える大きな柱だったことに、学校を離れてから気づく。そんな卒業生たちの想いも、鈴6の歴史の一部です。
編集後記:チャーミングな「オチ」
最後に、チャーミングなエピソードを添えてくれました。
実は先生のご家族にも本校の卒業生がいらっしゃいます。先生が「BCの思い出」について仕入れようと試みたところ、返ってきたのは「全く良い思い出が無い」という率直すぎる回答だったそうです。
「どうやら、この記事に書いたような前向きな話を、私はもっと家庭で(我が子に)話しておくべきだったみたいです」と、ユーモアたっぷりに結んでくださいました。
「征服への最善の道(The Best Approach to Conquest)」。
明日の朝、8時25分にチャイムが鳴るとき。生徒の皆さんが、この10分間の先に自分の「夢」が繋がっていることを少しでも感じてくれたら。そんな願いを込めて、私たちは今日もBCの準備をしています。
