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老境の武術 第21話 K-1の立役者 怪獣王子・闘志天翔 佐竹雅昭

現在の格闘技ブームの礎を築いたものは何か。

私は、それは1990年代に誕生した二つの大会だと思っている。

ひとつはアメリカの「UFC」。

そしてもうひとつが、日本から世界へ羽ばたいた「K-1」である。

立ち技最強を決める夢の舞台として、1993年4月に開催された第1回「K-1 GRAND PRIX」。

空手、キックボクシング、拳法、さまざまな立ち技格闘技の頂点を競うその大会は、日本中を熱狂の渦へと巻き込んだ。

その歴史的な舞台の実現と成功を語るうえで、決して欠かすことのできない人物がいる。

正道会館の絶対王者。

「怪獣王子」「闘志天翔」の異名を持つ男。

佐竹雅昭さんである。

佐竹さんは極真空手全盛の時代に正道会館を背負い、空手界を牽引しただけでなく、キックボクシングにも果敢に挑戦し、空手家がプロ格闘技の世界へ羽ばたく道を切り開いた先駆者だった。

現在も京都で佐竹道場を主宰され、後進の育成や講演活動に力を注がれていると聞く。

私が佐竹さんを初めて間近で拝見したのは、1993年の空手ワールドカップであった。

その頃の佐竹さんは、すでに正道会館の絶対王者。

まさに日本を代表する空手家であり、誰もが憧れる存在だった。

会場となった大阪府立体育館。

出場した下
カラテワールドカップ93

私は一回戦でシュートボクシング・ヨーロッパチャンピオン、クレイグ・マッコード選手と対戦した。

相手の反則による顔面殴打を受けながらも、渾身の上段膝蹴りで技ありを奪い、辛くも勝利。

しかし二回戦では、正道会館四天王の一人・玉城厚志選手に敗れ、私の挑戦はそこで終わった。

試合後、知り合いだった演出家のI監督へ挨拶に伺うと、その控室に佐竹さんがおられた。

監督から、

「知っているかい。」

と紹介されるまでもなく、もちろん私は存じ上げていた。

恐る恐るご挨拶すると、佐竹さんは優しく微笑みながら、

「どこから来たんですか。お疲れさまでした。」

そう声を掛けてくださった。

そして、ご自身のそばに置いてあったお弁当を私に差し出してくださったのである。

日本一と言われる空手家が、無名に近い中年選手を気遣ってくださる。

その優しさに、私は心から感動した。

強い人ほど優しい。

武道の世界で何度も感じてきた真理を、佐竹さんからも学ばせていただいた。

それから数年後。

今度は北海道で開催された空手大会で再会する機会があった。

私の弟子が出場しており、一緒にご挨拶へ伺った。

その時、地元の先生が面白い話を聞かせてくださった。

「昨日、狸小路の有名なおもちゃ屋『まんだらけ』へご一緒したんですよ。たくさんおもちゃを買われていました。」

その話を聞き、私は思わず笑みがこぼれた。

伝説のチャンピオンにも、少年のような趣味があるのだと、何とも微笑ましく感じたのである。

そういえば、私がパーソナルトレーニングでお世話になっていた名ボディービルダー・宮野成夫さんも、大のおもちゃ好きだった。
収入の多くをコレクションに費やすほど熱中されていたそうである。

若き頃、パーソナルトレーニングをお願いした宮野成夫さん

その宮野さんが製作・販売していたロボットを、佐竹さんが購入されたという話も耳にした。

佐竹さんは幼い頃からゴジラに憧れ、

「自分もゴジラのように強くなりたい。」

その一心で格闘技を始めたという。

怪獣王子という愛称は、単なるニックネームではなかったのだ。

少年時代の夢を、大人になっても失わない。

その純粋さこそが、多くのファンに愛され続ける理由なのだろう。

さらに数年後。

再び佐竹さんとお会いした。

それは、大山倍達総裁二十回忌法要であった。

かつて極真会館と正道会館は、決して良好な関係とは言えなかった。

だからこそ、その場に佐竹さんがおられる姿を見た時、私は深い感銘を受けた。

流派や会派を超えて、大山倍達総裁を敬い、法要へ参列される。

その姿を見て、

「やはりフルコンタクト空手の原点は大山倍達総裁なのだ。」

そう改めて感じた。

そして同時に、

流派の垣根を越えて敬意を示せる佐竹雅昭という人物の器の大きさにも、深く心を打たれた。

大山総裁20回忌にて

強さとは何だろう。

試合で勝つことだけではない。

人を思いやる心。

恩を忘れない心。

そして、自分のルーツに感謝する心。

そのすべてを兼ね備えた人こそ、本当に強い人なのではないだろうか。

現在も佐竹さんは京都で道場を開き、多くの後進を育てておられる。

現役時代に築いた栄光だけに生きるのではなく、次の世代へ武道の精神を伝え続けている。

それこそが、本当のチャンピオンの姿なのだと思う。

老境とは、若き日の栄光にしがみつくことではない。

歩んできた道を誇りとし、その経験を次の世代へ手渡していくことである。

佐竹雅昭さんの生き方は、まさにそのことを私たちに教えてくださっている。

心より敬意と感謝を申し上げたい。

カラテが原点の佐竹雅昭さん


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