【取材裏話】いま、十国峠パノラマケーブルカーを愉しむ
取材=小野洋平(編集部)
2026年8月21日発売の『旅と鉄道2026年10月号』では、2027年夏にスロープカーへの切り替えが予定されている十国峠パノラマケーブルカーをご紹介します。この掲載に合わせる形で、noteの本稿では誌面でお伝えできなかった情報やその道中の話題を綴ってみたいと思います。
静岡県・十国峠パノラマケーブルカーの取材は2026年7月、まだ梅雨が明けていない時期でした。残念ながら取材は天候不良のため一度延期になりましたが、その後 “梅雨の中休み”の晴れ間に現地を訪れることができました。
熱海駅→十国峠登り口 路線バスの旅
十国峠へ向かうにあたり、鉄道の最寄駅は東海道新幹線・東海道本線の熱海になります。取材当日は東京方面からの普通列車で、午前9時ごろ熱海に到着。そして同駅から伊豆箱根バスで十国峠登り口へ向かいました。つまり十国峠山頂までのアクセス手段は、鉄道→バス→鉄道(ケーブルカー)というわけです。



熱海駅から十国峠登り口までのルートとしては、いったん熱海港の海沿いへ出て国道135号を走り、お宮の松・起雲閣前・市役所前などを経由して来宮方面へ。来宮神社の南側で東海道本線のガードをくぐると、ここから県道20号の山道に入ります。熱海周辺はとにかく狭い道が多く、まるで「秘境バス路線」のような乗車になります。せっかくならば、バスの車窓も楽しんでおきたいですね。

十国峠山麓
9時56分、十国峠登り口バス停に到着しました。東京から電車・バスを利用して現地を訪れる場合、これが十国峠山麓の最も早い到達時刻となります。

ケーブルカーの十国峠山麓駅は「森の駅 箱根十国峠」2階に改札口があります。発車時刻は午前9時~17時(上りは16時45分)まで15分おき(多客時はこれに加えて臨時運転あり)。料金はおとな往復730円、こども往復370円、ペット1匹300円です。
ちなみに伊豆箱根グループでは、熱海駅~十国峠登り口間のバス乗り放題、十国峠パノラマケーブルカーの1往復乗車付きの「絶景富士山乗車券」(大人2,300円)をスマホ乗車券として発売しています。普通に切符を買うよりもややお得で、バスの指定区間が乗り降り自由になるので、こちらも検討してみるとよいでしょう。

十国峠パノラマケーブルカーでは、1956(昭和31)年開業当時からの車両が現在も稼働しています。そのスタイルは、どこか懐かしい湘南顔。全国的に昭和が感じられるレトロなケーブルカーは少なくなってしまいましたが、ここではノスタルジックな車両が現役です。しかし、それもいよいよカウントダウンが始まりました。
※ケーブルカーについては、『旅と鉄道2026年10月号』で紹介しています。
十国峠山頂
山麓駅を発車してからおよそ3分で、十国峠山頂駅に着きました。山頂は「パノラマテラス1059」と名付けられたデッキになっています。これは2022年8月のリニューアルで誕生したもの。ここからの景色は360°遮るものがなく、十国峠の大自然を満喫することができます。

まわりを見渡すと、雲と同じ高さに自分が居て、植物が低いために標高が感じられます。そして、この「秘境感」がとにかく心地いい。十国峠は公共交通機関のみでアクセスすることができ、手軽に“天空からの絶景”を楽しめる魅力的なスポットです。
まさに「日ごろの忙しさを忘れさせてくれるような、のんびりとした時間…」と言いたいところですが、今回は相変わらず忙しく取材をしていました(笑)。
十国峠の「十国」とは、伊豆・駿河・遠江・甲斐・信濃・武蔵・上総・下総・安房・相模、これら十の国が見渡せることに由来します。そして運が良ければ、山頂から富士山の姿が見られます。さて、取材日はどうだったのでしょうか?

雲がなければ、この方向に富士山が見えるはず…でした。
「パノラマテラス1059」には、「十国峠」の文字と富士山を1枚のフレームに収められる記念撮影スポットが設けられています。取材時、残念ながら富士山は雲の中でしたが、広報さんによると「朝は見えていたんですけどね…」とのこと。ちなみに最も見える確率が高いのは、天候が安定する11月~12月だそうです。こうした時期を狙ってみるのもいいでしょう。
気を取り直して、山頂からのトレインビューはどうでしょうか。先ほど下車した熱海駅は死角に入って見ることができませんが、隣の湯河原駅をはるか遠くに見ることができます。ただし相当な距離がありますので、トレインビューとまではいかないようです。

そして、山頂にはカフェもあります。雲上でご当地メニューが楽しめるのも、十国峠ならでは。



「とうげ ぐるめ」を愉しむ
最後に、食事についての補足を。山頂駅では上記の通り、デザートメニューが中心の「TENGOKU CAFE」があります。一方、山麓駅「森の駅 箱根十国峠」では「とうげ ぐるめ」といわれるメニューが充実しています。ここでは地元・沼津産のアジフライや由比港産桜えびのかき揚げ、高級ブランド牛「箱根西麓牛」など静岡の味が楽しめるほか、そば処ではとんかつや唐揚げなどの定食もあります。せっかく十国峠に来たならば、こうしたご当地グルメにも注目してみましょう。
※時期によりメニュー内容が変更になる場合あり


まとめ
以上、今回は静岡県の十国峠についてご紹介いたしました。十国峠山頂は首都圏からのアクセスもよく、360°の絶景と秘境感、ご当地グルメなどが楽しめる魅力的なスポットです。そして2027年夏にはスロープカーが導入されることにより、十国峠パノラマケーブルカーは約70年という長い歴史に幕を降ろすこととなります。ケーブルカーとしては最後の1年に、ぜひ十国峠を訪れてみてはいかがでしょうか。
「いま、十国峠パノラマケーブルカーを愉しむ」が掲載された『旅と鉄道2026年10月号』は、2026年8月21日発売です。どうぞお楽しみに。
https://books.ikaros.jp/book/b10161466.html
