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【連載】ヨーロッパ移住旅 第3回

文・写真=アンドロイドのお姉さん SAORI

 こんにちは。ギリシャ在住・旅行系YouTuberのSAORIです。
 前回のセルビアに続き、今回も東欧を攻めようと隣国のルーマニアへ行ってきました。
 ルーマニアといえば、ドラキュラ伝説で有名な国です。

 ただ、そのようなオカルト的なイメージとは別に、ルーマニアと聞くと日本人女性が巻き込まれた悲惨な事件のことを思い出す方もいるかもしれません。
 それは今から14年前のこと。
 ルーマニアの首都ブカレスト郊外で、ボランティア活動のために訪れていた日本人の女子大生が、タクシーを探すのを手伝うと言って近づいてきた男とタクシーに同乗。
 その後、目的地とは逆方向の森へ連れていかれ暴行を受けたうえに金品を奪われ、命を落とすという痛ましい事件が起きました。
 もちろん悪いのは犯人です。
 ただ、当時は女子大生が深夜に一人で空港へ到着したことや、親切を装った見知らぬ人物について行ってしまったことなどから、「危機管理がなってないのではないか」「海外の治安を甘く見てすぎでは」といった声もあり、被害者を非難するような空気がありました。
 さらに、その議論が尾を引く形で、被害者女性に対する多くのデマも出回りました。

 日本人にとって、ルーマニアはあまり馴染みのないヨーロッパの国の一つ。
 そのため十分な情報の更新がされないまま、14年前の事件のイメージがインターネット上に残り続けている側面もあります。

夜のルーマニアの街並み。

 実際、「ルーマニア」と検索すると、「危険」などネガティブなワードがサジェストに並んでいます。

 私はギリシャに住んでいる間に、できるだけ多くのヨーロッパの国を見ておきたいと思っているのですが、やはり身の安全が第一。
 治安に関して良くない情報を見てしまうと、「本当に一人で行って大丈夫なのか」と二の足を踏んでしまいます。
 ところが、危ない国には一人で行かないでといつも心配してくるギリシャ人の彼氏に聞いてみると、
 「ルーマニアは美しい国だよ」
 と、むしろ背中を押されました。
 ちなみに、ドイツへ行くと言った時のほうが心配していたくらいでした。

東欧のパリとよばれる美しい旧市街の風景。

 そこで「ルーマニアって、実はそこまで危険な国ではないのでは?」という疑問が生まれます。
 私のモットーは百聞は一見にしかず。
 実際に自分の目で確かめるため、ルーマニアへ行ってみることに。

 
 飛行機の関係もあり、ルーマニアの首都ブカレストのアンリ・コアンダ空港に着いたころにはすでに夜遅くなっていました。
 24時間運行のバスや空港鉄道はあったものの、乗り換えに不安があったので、空港から市内への移動はUberアプリで呼ぶことに。
 Uber乗り場に移動する際に客待ちのタクシーが列をなしているのが見え、14年前の事件が頭をかすめたのですが、現在は空港公認タクシーのみ乗り入れ可能になっていたり、空港警察による取り締まりが強化されたりなどタクシーを取り巻く環境もよくはなっているようです。
 ただそれでも違法タクシーによるボッタクリ行為は横行しているようですが。

 Uberなどの配車アプリは、日本語で操作できるうえ、運転手の名前や利用客の評価、料金の目安を確認してから利用できるので、海外ではよく使う移動手段です。
 こうしたサービスが普及する以前は、海外でタクシーに乗るときは、行き先を伝えて料金交渉をするのが当たり前でした(メーターも改造されているなど100%信用できるものでもなかったので)。
 「50でOK」と双方納得したはずなのに、それが現地通貨なのかドルなのかで揉める、なんてことも。
 そう考えると、配車アプリは旅の難易度を一気に下げた画期的な発明だと思います。
 私が呼んだUberの運転手さんは、もともとツアーガイドもしていたそうで、道中では通り過ぎる観光名所の説明までしてくれました。
 最後に「チップお願いね」と言い残して、颯爽と去っていきました。
 
 ホテルは旧市街にありました。石畳になっているため、ホテル前まで車は入ることはできなかったのですが、夜中3時までクラブミュージックが鳴り響くような歓楽街だったので、幸か不幸か、人通りがなくて怖いという感じはまったくありませんでした(その代わり騒音はすごかったのですが)。

騒音が酷すぎてホテルに耳栓が用意されていました。

 翌日からは、チャウシェスク政権時代に建てられた巨大な「国民の館」を見学したり、トランシルヴァニア地方まで足を伸ばして、“ドラキュラ城”として知られるブラン城を訪れたりと、活動的に動き回ってみました。

社会主義時代のチャウシェスク大統領が、建設を指示した国会議事堂“国民の館”。
吸血鬼ドラキュラのモデル・ヴラド3世が住んでいたとされるブラン城、しかし実際に住んでいたのは彼の叔父さんだったのだとか。

 でも、旅をしていて怖い思いをすることは一度もありませんでした。

 実際に現地を歩いてみると、抱いていたイメージとのギャップがありました。
 そんな感じで、帰国後にYouTubeへ動画をアップロードしました。
 テーマは、「危険だと言われているルーマニアは、本当に危険なのか」。
 すると、あるルーマニア人の方から、
 「たった一人のクレイジーな犯罪者を見て、その国全体を決めつけないでほしい」
 というコメントが届きました。
 確かに、日本でも、ある凶悪事件を起こした犯人を見て「日本人は危険思想を持っている」と思われたくはありません。
 それと同じことなのかもしれないなと思いました。
 もちろん、あの事件を風化させたいわけではありません。
 女一人で旅をする以上、持っておくべき恐怖心や警戒心は必要だと思います。
 ただ同時に、世界は少しずつ変わっていく。
 昔の情報だけを鵜呑みにして、過度に怖がりすぎるのも違うのかもしれない。
 そんなことを考えたルーマニア旅でした。


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