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地方の偉人に会いにいく旅

私は、毎月一人旅に出ることを決めている。

先日、サラリーマン時代の友人にその話をしたら、少し驚いた様子だった。

「毎月?一人で?」

と聞き返された。

私にとって一人旅は自分自身との対話のようなものだ。そこで得たもの、感じたことを内省し、そこから明日へのエネルギーをもらえる。

どこに行くのか、なにをするのか、どこに泊まるのか、なにを食べるのか、どんな移動手段にするのか。すべて一人で決める。自分なりの目的があり、発見があり、失敗がある。

その日出会ったことを、旅先の宿泊場所や家に帰ってから振り返るのが好きだ。

旅に出る前に、ざっと情報を集めて、どこに行くか目的地を決める。しかし、現地では必ずしも予定通りにはいかない。予定外のことが起きたり、新しいアイデアが浮かぶ。

「よし、こうしよう」

アドリブで変更することも、旅の楽しみの一つだ。

旅先では必ず、その地に関係した有名人を探し出して勉強する。

歴史上の人物の場合もあれば、現役の場合もある。その人物とは、歴史館や博物館、あるいは記念館や美術館、文化ホールなどで出会う。

先日、倉敷に行ってきた。白壁の町並みを一人で歩いていると、並木道を飾る和傘が風に揺れ、江戸時代からの繁栄を今に伝えていた。

そこで出会ったのは、大原孫三郎という人だった。倉敷紡績の経営者であり、社会事業家だ。倉紡記念館に足を踏み入れると、彼の業績を示す展示が静かに並んでいた。

彼は単なる経営者ではなく、様々な社会活動をした人であることを学んだ。例えば大原美術館だけでなく、大原社会問題研究所、倉敷労働科学研究所、倉敷中央病院、大原農業研究所などを立ち上げた。一つ一つの事業が、彼の社会に対する問題意識を物語っている。

会社経営においては「従業員の幸福なくしては事業の繁栄はない」という労働理想主義を掲げ、労働環境の改善や教育に力を入れた。

私が新卒で入社した会社は、敷地内に従業員の寮があり、私も3年間お世話になった。倉敷紡績の活動を学んでいくと、寮での様々な施設や施策、例えば図書室、健康管理室、食堂での栄養管理、夏祭りの開催などはきっと、倉敷紡績の影響を受けていたのだろうと思い当たった。過去と現在が、一本の線でつながった。

経営者には色々なタイプがあると思う。大原孫三郎は博愛精神と人間味の非常に強い人だったようだ。彼のおこなった色々な活動や今残っている成果を見ると、彼の人間愛に基づいた思想が垣間見えてくる。

記念館の一角に、彼の言葉が掲げられていた。

「生涯一片青山」

説明を読むと、

「人間の生涯は、貴賤貧富の差別なく、最後は平等に青山の一片の土となる」

という意味だという。しばらく立ち尽くした。

どんなに富を築いても、権力を手にしても、最後は同じ土に還る。だからこそ、生きている間になにをするか、誰のために尽くすか、が問われる。

大原孫三郎の生涯そのものが、この言葉の実践だったのだと思った。私はその言葉が気に入って、それを写真に収めた。

倉敷の街を歩くと、美しく整備された、昔からの建物がたくさん残っていて、過去の繁栄が並々ならぬものだったことが理解できる。しかもその繁栄の跡は、現代にも受け継がれている部分が少なくない。

旅をすると様々な人に巡り会える。彼らの足跡は生き様を示してくれる。

私は対話する。考える。その刺激が私をまた旅に誘うのだ。

次の旅ではどんな人に巡り合うことができるだろうか。


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