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超短編小説 【タイトル】 ルート66の「思い出食堂」

ひび割れたアスファルトが続くルート66の只中に、そのダイナーはぽつんと佇んでいた。激しい雷雨の中、ワイパーが悲鳴を上げるのを聞きながら、私は逃げ込むように車を店の前に停めた。

店内には客はおらず、カウンターの奥で初老のウェイトレスが気怠そうにグラスを磨いているだけだった。 「いらっしゃい。迷い人かい?」 「いや、腹が減っただけだ。……ここ一番のおすすめは?」 私が席につくと、彼女はニヤリと笑ってメニューも出さずに言った。 「『あの日の一皿』さ。あんたが人生で一番戻りたい瞬間の味を再現してやる」

馬鹿げていると思ったが、私はふと、三十年前に死んだ母が作ってくれたミートローフを思い浮かべた。貧しかったけれど、あの焦げたソースの匂いだけは幸せの象徴だった。 「じゃあ、それを頼むよ」

十分ほどして出てきた皿を見て、私は息を飲んだ。盛り付け、湯気、そして匂い。一口食べると、口の中に幼い頃の情景が鮮烈に蘇った。狭いキッチン、母の鼻歌、温かい灯り。私は大の大人でありながら、カウンターで声を殺して泣いた。完璧だった。

「勘定を頼む」 涙を拭い、私は財布を取り出した。いくら請求されても構わないと思った。 「お代は金じゃないよ」 ウェイトレスは静かに言った。 「『記憶』でいただくんだ。あんた、その料理の味を思い出す代わりに、その料理を作った人間についての記憶を置いていってもらうよ」

私は鼻で笑った。「まさか。そんな寓話みたいな話があるか」 私は20ドル札をカウンターに叩きつけ、店を出た。車に乗り込み、エンジンをかける。

雨は止んでいた。腹は満たされ、舌の上にはまだあの最高のミートローフの余韻が残っている。 「あぁ、本当に美味かったな……」

私はハンドルを握りながら、ふと首をかしげた。 あの味は確かに懐かしかった。最高に愛おしい味だった。 しかし、一体誰がよく作ってくれていたのだったか? 実家のキッチンに立っていた女性の顔が、まるで濃い霧に包まれたように、どうしても思い出せなかった。


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