名前がつく前から、知っていた。
誰かが怒っている。
まだ何も言っていない。
それなのに、
部屋に入った瞬間、
胸の奥が少し重くなる。
誰かが落ち込んでいる。
笑っているし、
言葉もいつも通り。
でも、
なぜかこちらまで静かになる。
「気のせいじゃない?」
そう言われたこともある。
考えすぎ。
気にしすぎ。
敏感すぎ。
何度も聞いた。
だからずっと、
自分がおかしいのかと思っていた。
でも、
そうじゃなかった。
ある日、
そんな感覚には名前があることを知った。
身体感情転移。
相手の感情を、
頭で理解する前に、
体が先に受け取ってしまう感覚。
その言葉を見たとき、
ああ。
これ、
私だけじゃなかったんだ。
理由もわからないまま、
胸のあたりがざわつくことがあった。
ずっと、
自分の弱さだと思っていた。
でも、
ただ感じていただけだった。
それを知った日、
少しだけ肩の力が抜けた。
感じすぎる自分を、
少しだけ嫌わずに済んでいる。
そして、
この感覚には、 こわい面だけじゃなく、
良い面もあるのかもしれない、 とも思う。
相手が何も言わなくても、
変化に気づける。
「大丈夫?」
その一言が、
誰かに先回りして
届けられることがある。
それは、
ただの「敏感さ」ではなく、
誰かのそばに、
そっと寄り添える力でもある。
感じすぎる自分は、
弱さでもあり、
誰かを支える、 小さな力でもある。
そんなふうに、 今は思える。
そんな自分が、
愛おしい。

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