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自分のことは、冷めてから。


お茶を淹れる。

湯気が、ゆっくり立ちのぼる。


何もしていないのに、

少しだけ疲れている。


今日は、

やさしくしようと思っていたわけじゃない。


ただ、

相手が困っていたから。

場の空気が重くなりそうだったから。

誰かが傷つかないように。


気づいてしまったから、

やさしくするしかなかった。


そうしているうちに、

気づいたら、

ずっとやさしくし続けていた。


嫌いなわけじゃない。


むしろ、

大切に思っているから、

やさしくできた。


でも、

帰り道に気づく。


どこかで、

少しだけ重い。


大きな出来事があったわけじゃない。

誰かに何かを言われたわけでもない。


ただ、

今日一日、

やさしくし続けていた。


それだけのことが、

あとから静かに残る。


不思議なのは、

その場では、

ちゃんと楽しかったことだ。


笑っていた。

うなずいていた。

ちゃんとそこにいた。


後悔はしていない。


やさしくできたことは、

よかったと思っている。


それなのに、

お茶を淹れながら、

静かに疲れている自分がいる。


悪いことをした、

わけじゃない。


でも、

夜になると、

自分のカップだけが、

少し空いている気がした。


カップを両手で包む。

温かい。

何もしたくない。

というより、

何もできない。


それでいい。


窓の外は、

もう静かだった。


お茶は

入れたときのまま、

一口も飲んでいない。


少しだけ冷めていた。




姉妹編
この物語と、静かにつながる朝の一編です。


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