見出し画像

朝の影は、少し長かった。


カチャ。

朝、家を出る。

玄関を閉める。


鍵の音が、

まだ静かな朝に響く。


外へ出ると、

夜の涼しさが少し残った空気が、

頬に触れた。


夏の朝だけが持つ、

ほんの短い涼しさ。


角を曲がる。


足元に、

細長い影が伸びていた。


自分の影だった。


電柱の影。

植木の影。

塀の影。


いくつもの影が、

朝の道に重なっている。



風が吹く。


葉が、

さら、と揺れる。


そのたびに、

影も揺れた。


遠くで、

蝉が鳴いている。


まだ少しだけ、

眠たそうな声だった。


一歩。

また一歩。


歩いているうちに、

朝の光が少しずつ強くなっていく。


白い壁が、

まぶしく光っている。


目を細める。

さっきまで長かった影が、

少し短くなっていた。


太陽が、

思っていたより早く、

高くなっている。


歩道の端に、

小さな葉が一枚落ちていた。


風が吹く。


葉が、

ほんの少し動く。


その上に重なっていた影が、

ふっとほどけた。


光が戻る。

また風が吹く。


今度は、

葉の影が、

別の形になった。


立ち止まる。


しばらく、

それを見ていた。


葉の緑。

朝の光。

揺れる影。

蝉の声。


どれも、

特別なものではない。


また歩く。

靴音が、

朝の道に響く。


コツ。

コツ。

自分の影も、

またついてくる。


さっきより、

少し短くなっていた。


朝の光は、

何も言わないまま、

今日を、

少しずつ明るくしていた。




あわせて読みたい


朝の道を歩いていると、いつもの景色の中に、ふと目が止まるものがあります。

今回は足元に伸びる影でしたが、こちらの記事では、歩いた道から見えた遠くの山について書きました。

遠くを眺めているうちに、少しずつ戻ってきたもの。

よかったら、こちらもどうぞ。

「遠くを見ると、心も戻ってくる。」





いいなと思ったら応援しよう!

taka|朝は景色を、夜は心を言葉に🌸 貴重なご支援をいただき、心から感謝申し上げます。いただいたお気持ちは、より良い情報をお届けするための活動費や、心身を整える研究のために大切に活用させていただきます。誠心誠意発信を続けてまいります。温かい応援に、深く感謝いたします🌿🙏