【通算122|要求AI 39】毎年3000名の異動を、半年かけて決めていた
ここから4本、本題に入る。1記事目は県庁職員の人事になる。
(1)|「県立」とつく施設で働く人は、みな県庁職員だった
最初に戸惑ったのは、対象が誰なのかが分からないことだった。
「県庁職員」と聞いて思い浮かべるのは、県庁舎の中で机に向かっている人だと思う。実際の範囲は、もっと広かった。
「県立」とつく施設で働く人は、みな県庁職員になる。
県立の図書館や美術館。山の中にある社会教育の施設——当時は青年の家と呼んでいた種類の施設だ。農業や水産の試験場。職業訓練の学校。
そして県庁舎の屋上。ここは展望台と土産物売り場になっていて、そこで働いている人も県の職員だった。
だから職種の幅が、ふつうの会社とはまるで違う。研究職がいて、技術職がいて、事務職がいて、施設で接客をしている人もいる。
手当も勤務の形も、職種ごとに違う。まず「誰が対象なのか」を数えるところから始まった。
(2)|国からの出向者がいた
県庁職員の中には、国の省庁から出向してきている方がいる。
実際に働いている人の中に、県が採用した人と、国からの出向者が混じっているということだ。
キャリアシートは国と同じ様式だった。
ここが分かったときは、なるほどと思った。様式が同じだから、県と国をまたいで経歴を並べられる。 3年ほどで異動していくローテーションも、その上で動いている。
つまり官公庁のキャリアというのは、県の中だけで完結していない。 県も国もまたいだ形で、経歴が積み上がっていく仕組みになっている。
「職員」という1つのくくりでは扱えない。 どういう入り方をした人なのか、経歴がどこから続いているのかが、扱いを分ける。
(3)|基本的に、民間企業の人事と変わらない
県庁だからといって、特別な人事をやっているわけではない。
採用があって、配属があって、昇給と昇格があって、退職までの事務手続きがある。一般の会社が人事部でやっていることと、中身はほとんど同じだった。
121で、制度が分かれているところでチームも分けた、と書いた。そう書くと、人事のやり方まで特殊なのだろうと読めたかもしれない。そうではない。 県庁職員の人事は、採用から退職までを一貫して扱っていて、そこは違和感なく話が進んだ。
早い段階で詳しい方が見つかり、詳細なレクチャーを受けた。
驚いたのは、制度ではなく人数のほうだった。
(4)|半年かけて、毎年3000名の人事異動を行う
人事の仕事の中で、いちばん大きいのがこれだった。準備から辞令の発行まで、約半年かかる。
なぜ3000名になるのか。1つの部署にいられるのは、基本的に3年までだからだ。
県庁職員は約1万人。3年で一巡するので、毎年その3分の1が動く。 それで3000名になる。
では、なぜ3年で動かすのか。特定の部署に長くいると、特定の業者との関係が深くなる。癒着を避けるための仕組みだ、という説明だった。
そしてこの考え方も、国の人事制度と同じだった。(2)で書いたキャリアの仕組みと、根は同じところにある。
流れそのものは、一般の会社でやっていることと変わらない。
人事異動の対象者を洗い出す
→ 異動先の案を作る
→ 上長へ確認する
→ 本人へ内示する
→ 事情があって動けない人が出る
→ 洗い出しに戻る
(1)で書いたとおり、職種の幅が広い。研究職の代わりに事務職を置くことはできないし、試験場の技術職は、その分野の中でしか動かせない。代わりを探せる範囲は、職種ごとに決まっている。
そこに、個人の事情が重なる。動けない人は必ず出る。 そこを埋めるために、また候補を探す。
会社でも同じことをやっている。違うのは、これを3000名分やることだった。
そして4月1日の異動に合わせて、プレス発表がある。 日付は動かせない。辞令は3000人分を作成して、手渡しする。
この量を、なんとか楽にしたい。 現場の実感としては、そこにあった。
(5)|パソコンを導入しても、半年はかかった
クライアントサーバーにする意味は、ここにあると思われていた。手元のパソコンで作業ができるようになれば、この半年が楽になるはずだと。
サーバーから手元のパソコンへデータを落として、そこで作業できるようにした。 何もできなかったわけではない。紙を配って回していた部分は、確かに減った。
もう1つ、効果があったところがある。人事の情報は、機密情報だ。 誰がどこへ動くかは、内示が出るまで外に出せない。手元のパソコンである程度の作業ができるようになったこと自体に、効果があった。
ただ、半年という期間そのものは、短くならなかった。
時間がかかっているのは、入力ではなかった。
上長に確認する。本人に内示する。断られる。事情を聞く。別の案を考える。半年のうちの大半は、この作業に使われている。
(6)|同じMS明朝なのに、機種が変わると画面が崩れた
もう1つ、これは作る側の話になる。そしてこの件だけは、人事に限らなかった。 給与も含めて、画面を作るところすべてに関わっている。
当時の Windows 3.1 は、日本語の表示をハードウェアに任せていた。 日本語を出す仕組みがOSの側になくて、メーカーごとの機構で表示させる形だった。OSが日本語をそのまま扱えるようになったのは、Windows 95 からだ。
県庁にはA社のパソコンが、県立高校にはB社のパソコンが、すでに入っていた。今回のシステムのために新しく入れる分も、同じメーカーで揃えることになっていた。
一方、こちらが開発に使っていたのは、大阪の本社にあったC社のパソコンだった。これもC社に依存した日本語表示になる。
開発が進んで、C社機で作った画面を県庁に持ち込んだ。県庁の中に開発ルームを設けてもらって、そこでA社機とB社機に表示させた。
同じMS明朝を指定しているのに、文字が枠からはみ出した。 逆に、小さすぎて画面がスカスカになるところもあった。
結局、こういう手順を踏むことになった。
大阪でレイアウトを作る
→ 県庁の開発ルームで、A社機とB社機に表示させて確認する
→ 県庁のパソコンに導入する
画面が動くかどうかは、大阪で確かめられた。どう見えるかは、確かめられなかった。
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