検索した先が偽物だった|偽AIツールに踏み込まない導線設計
その「無料AIツール」、公式サイトから入れましたか?
「新しいAI、ちょっと試してみよう」と思って検索バーに名前を打ち込む。トップに出てきたサイトをクリックして、ダウンロードボタンを押す。この動作を、何の疑いもなくやっている人は多いと思います。
自分がそうでした。セキュリティを仕事にしている人間でも、習慣になっていない操作には隙が出る。2026年に入ってから、話題のAIツールを名前で検索した先が偽配布サイトだった、という報告を業務で何件か確認しています。
「偽物を見破ればいい」という話ではありません。そもそも踏まない動線を作るほうが確実で、疲れない。今日はその設計を共有します。
なぜAIツールには偽物が湧きやすいのか
新しいAIツールが発表されると、SNSで一気に広まります。ユーザーは「今すぐ試したい」という気持ちになり、公式を調べる前に検索エンジンで名前を打ち込む。
問題はここです。
検索エンジンの広告枠は、一定の費用さえ払えば誰でも上位に表示できます。偽サイトを運営する側にとって、流行りのAIツール名は絶好のキーワードです。本家のリリースと前後して偽ダウンロードページや偽ブラウザ拡張機能が登場することが繰り返し観測されています。
ブラウザ拡張機能は特に危険度が高い。インストールすると閲覧ページへのアクセス権を得るものも多く、認証情報やクリップボードの内容を抜かれるリスクがある。しかも「名前が似ている」だけで公式に見えてしまう。
ツール名の人気が上がれば上がるほど、偽サイトの旨みも増す。これがAIツール周辺で偽物が増える構造です。
偽サイト・偽拡張機能の典型パターン
業務で確認してきた典型を3つ挙げます。
広告枠の偽ダウンロードサイト
検索結果の最上位に「広告」とかろうじて表示されているが、ドメインが一文字違いだったり見慣れないCCTLDが使われていたりする。UIや画像は本家から丸コピーしてあるため、見た目では判断しにくい。
Chromeウェブストアの偽拡張機能
ストア名と星評価だけ見ると本物に見える。開発者のアカウント名や公開日・レビュー内容を確認すると違和感がある。本家ツールが拡張機能を提供していない場合でも「〇〇 extension」として公開されていることがある。
偽装インストーラ(無料版・アンロック版を謳う)
有料プランのある人気AIツールに対して、「有料機能が無料で使える」として配布されているexeやpkg。本体は無効なバイナリか、マルウェアの梱包物です。
これらに共通するのは「ツールの名前が正しい」という点です。名前だけで信頼してしまうと、どれも本物に見える。
見破るのをやめて「踏まない動線」を設計する
フィッシング対策で以前に書いたことと同じ結論になりますが、「見破る」アプローチは続かないし疲れます。判断コストが毎回かかる上、注意力が落ちた瞬間に踏む。
確実なのは、そもそも検索結果に頼らない動線にする設計です。
公式ドメインをブックマークする
興味を持ったAIツールは、公式サイトをブックマークに登録してからアクセスを習慣にする。新しいツールが出たときは、「まずSNSの公式アカウントかGitHubのプロジェクトページからURLを拾う」手順にする。検索結果を経由しない。
ブラウザ拡張機能は公式ページからのリンクだけ
ツールが拡張機能を提供している場合、導入は必ずそのツールの公式サイトに記載されているリンクから行う。Chromeウェブストアを直接検索して選ぶのは避ける。
公式が提供していないものは入れない
有料機能の無料版、ツールのアンオフィシャルクライアントは原則入れない。必要なら公式の有料プランを検討するか、公式がOSSで提供しているもののみ使う。
自分はこの3つのルールを2026年初頭から運用していて、以来「これ本物か?」と迷うシーンがほぼなくなりました。判断する機会そのものを減らすのが、一番ストレスがない対策です。
今日やるチェックリスト
今インストールされているブラウザ拡張機能を一覧で確認し、出所が不明なものを削除する
よく使うAIツールの公式URLをブックマークバーに登録する
次に新しいAIツールを試すとき、公式SNS/GitHubからURLを取得してからアクセスする
「有料機能が無料」を謳うダウンロードを見かけたら、問答無用でスルーする習慣を作る
1つだけ選ぶなら「ブックマーク登録を先にする習慣」です。検索する前にブックマークを確認するだけで、偽サイトに誘導される経路がほぼなくなります。
派手な対策は要りません。動線を変えるだけ。セキュリティで一番効くのは、いつも地味な習慣の話です。
参考になれば嬉しいです。
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