【J★K】悪徳インド人を包囲せよ!(1)
その時、日本から来た大学生男子の二人がドミトリーに現れてこんな事を言った。
「助けて下さい、旅行会社でボラれちゃいました!」
「な、何ですと?」
僕は向かいのベッドに陣取っていたウラさんと顔を見合わせた。ウラさんは共にホーリーを闘い抜いた色かけの戦士である(そして後日、パリにて僕の旅の完了を確かめる事となる重要人物でもある)。
インドでは旅行者を狙った悪質な事件が後を絶たないが、そう言えば旅の玄関口であるデリーは特に悪質だとガイドブックに書かれてあった。
空港からタクシーに乗ると直接ホテルではなく先ず旅行会社に連れて行かれ、法外な値段でツアーを組まされると言うのもその手口の一つだとか。
しかし、まさか本当にその被害者を目の当りにするとは思ってもみなかった。
詳しく話を聞くと、アーグラー行きの一泊二日強行ツアーで二名90ドル。つまり一人45ドル(約5000円)だと言う。
僕はタイで詐欺師と200万円を賭けた格闘をしていたので(嘘の様な本当の話。本編・タイ編参照)あまりの桁のショボさに若干拍子抜けした。
だが、二人の組んだツアーをルピーに換算するとだいたい2100〜2200ルピーくらいだろう。これは第一感、少し割高な印象を受けた。
改めて内訳を概算すると、部屋の相場は100~200ルピーくらいなものだし、彼らは部屋をシェアするのだからその半額で十分だ。
運賃だってクラスによるが400ルピーで往復できる。
タージマハルの入場料金960ルピーを足しても原価で1500ルピーがいいところ。
正当な手数料を払っても1800ルピーくらいが落とし所だろう。
僕からすると少なく見積もっても一人300ルピーは多く払っている感覚であり、300ルピーと言えばあの15ルピーの激安ターリーに換算すると20杯に値した。
しかし逆に言えば、旅行代なんてものはサービスの質によって比例する。質の良いホテルを選んだり、質の良い電車のクラスを選べば料金が上がるのは必然だ。
そう言う観点から言えば、これは法外とも言い切れない価格設定ではあった。
◯
だが何より問題なのは、彼らは「まだチケットを貰っていない」と言う事実だった。
「えーッ! チケット貰ってないですって!?」
「完全にやられたね」
「こりゃ、まずいな……」
「よし、みんなで押し掛けよう!」
こうして、その場に居合わせた数名の勇士も加わり総勢七名の日本人がその旅行会社に押し掛ける運びとなった。
頼れる兄貴肌のウラさんは秘密兵器を持ち出した。ペンとカメラである。
「詐欺の事実を本に載せると詰め寄るのさ」
そう不敵に笑う彼は、旅のライターさんなのだ。
「おーッ、なんて心強い!」
これなら相手だって滅多な事は出来まい。
僕ら一団は夜の街角をゾロゾロと歩いてその旅行会社に向かった。
