【田舎暮らしの小話】命の値段|気まぐれな野良猫と少しの寂しさ
こんにちは、在宅男(たくお)です。
パニック障害をきっかけに30代前半で仕事を失うことになり、なんだかんだあって東京から房総半島の田舎町へと移住したバツイチ独身Webライターです。
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ここ1週間ほど、野良猫たちが自宅の裏口で涼むようになっていた。
よく見かけるのは黒の子猫と白の子猫。
夕方くらいになると、おそらく母親と思われる茶色の猫が2匹の様子を見に来る。

人間でもきつい猛暑日が続く中、野良猫たちも大変だろうと思い、
裏口で涼むくらいは何となく許容していた。
ただ、さすがに住み着いてしまうのはちょっと厳しいので、
ソフトな感じで「別のところにも行ってねー」と促してみた。
そこで気付いたのが、
クロはあんまり動けないということ。
少し近づくと、親猫とシロは一目散にダッシュで逃げていく。
しかし、クロは反応が遅く、捕まえようと思えば捕まえられてしまうくらい動きが鈍い。
顔を覗き込んでみると、目ヤニのせいか眼があまり開いていないように見える。
「この子は目が見えてないのか??」
疑問に感じたので、目の前でホウキをフラフラと振ってみる。
微妙に顔を動かしているので、目が見えていないわけではなさそう。
とはいえ、目の前にホウキを差し出されるくらいの距離にいるのに、クロは逃げ出そうとしない。
物怖じしない性格なのか、それとも逃げる体力がないのか。
ネコを飼ったことがないので習性は分からないが、さすがにこれだけ動きが鈍いのはちょっと心配になる。
ある日、仕事の合間に裏口を覗いてみると、クロだけが寝ていた。
親猫とシロはおらず、クロだけがいつもとは違う場所で横になっている。
「え?これ、生きてるか?」
近くまでいって、呼吸をしているか確かめた。
お腹が小さく上下しているので、どうやら生きている模様。
安心はしたものの、いつも一緒にいるシロがいないこともあり、
「親兄弟に見放されたわけじゃないよな?」
といった疑問も出てきた。
しばらくするとクロは目を開け、こちらを見ながら「人間がいるなぁ」といった態度のまま微動だにしなかった。
逃げようとするそぶりもせず、そのまま横になっている。
外の気温は30℃を超えていて、日陰がある裏口は多少涼しいものの、暑いことには違いがない。
このままだと気力・体力ともに尽きて、うちの敷地から出られないかもしれないと思い、
ひとまず水だけあげることにした。
本当は野良猫に何かを与えることはダメなんだろうけど、さすがにこの状態を放置しておくことはできない。
せめて水分補給だけでもすれば、多少は回復するかもしれないと思い、水を入れた紙皿をクロの前に置いた。
正直なところ、
このままクロが動けないとなると、敷地内で命を落とす可能性がある。
それはちょっと困るし、何より悲しすぎる。
こういう場合にどうすれば良いか分からないので、とりあえず色々と調べてみた。
その結果、
自分で保護して動物病院に連れていき、不妊手術やら予防接種やらを受けさせて、また野良の状態に戻す。
もしくは動物病院に頼んで里親を探してもらう。
という方法があることを知った。
いわゆる地域猫の保護活動にあたるものらしい。
この去勢手術や予防接種などの費用は、1匹あたり全部で3~5万円くらい。
市には補助金の制度もあるようだが、少し見ただけで手続きの煩雑さが分かる。
いま住んでいる家では動物を飼うことが難しいものの、
仮にクロを動物病院に連れていき、面倒を見るとなった場合にはいくらかかるのかも調べてみた。
ざっくりとした金額だが、猫1匹を飼う費用は年間で15万円くらい。
生涯だと200万円ほどかかるらしい。
率直に、これが命の金額なんだなと思った。
また、
野良猫から保護されて、無事に里親が見つかる可能性はどれくらいあるんだろうとも感じた。
このままクロがどうしようもなさそうな場合には「うちでは飼えないけど、動物病院には連れて行くか…」と思い、
近場の動物病院を検索してみる。
野良猫の保護活動に力を入れている病院があったので、理解がありそうだなと少し安心した。
翌日の夕方、
裏口にいくとクロとシロの2匹が寝ていた。
兄弟に見放されたわけではなかったようだ。
近づいてみると、いつも通りシロはすぐに起き上がり、全力ダッシュで逃げていった。
一方、クロも立ち上がり、こちらをジッと見つめている。
前日よりも身体は重くなさそうな様子。
さらに近づくと、クロも逃げようと動き出した。
しかし、いかんせん遅い。
手を叩きながら動くように促すと、頑張って走り出した。
たどたどしさはあるものの、少しは体力が回復したように見える。
これなら最悪のケースはなさそうだなと、また安心した。
たびたび裏口の様子を見ることが日課になっていたが、
あるときを境にクロとシロの姿が見えなくなった。
その前日の夜、玄関を開けると真っ暗な中に珍しく親猫とクロ・シロの3匹が揃っていた。
こちらに気が付くと親猫は威嚇の声をあげながら、クロとシロが逃げる時間を作っているように見えた。
シロは一目散にフェンスの隙間から逃げたが、クロはやはり動きが遅い。
頑張ってフェンスによじ登り、なんとかシロと一緒に逃げていった。
その後、親猫も走り去っていったが、このときから家の裏口にくることはなくなった。
もしかしたら、もっといい避暑地を見つけたのかもしれない。
居着いてしまうと困るなぁと思っていたものの、
まったく姿が見えなくなるのは、それはそれで少し寂しくも感じる。
まぁ、何はともあれクロが元気な野良生活を送れることを願うばかりだ。

あとがき
玄関の前に、おそらく猫が捕ってきたであろう雀が置かれていたことがあった。
4年半住んでいて、そんなことは初めてだったので、多分親猫の仕業だと思う。
あれは1~2週間分の家賃のつもりだったのだろうか。
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