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胸の音 #シロクマ文芸部(525字)

夏休みの帰省中。

「胸から時計の音がするの」

と姉が言った。

私は「なにそれ?」と笑ったあと、姉が心臓の手術をしたことを思い出し、改めて聞き直す。

「時計の音?」
「そう。静かなときに聞こえるの。最初は何だろう?って思ってたんだけど、よく聞いたら、自分の胸から鳴ってた」
「まじで?」
「まじで。聞いてみる?」

姉の前へ移動し、そっと耳をすましてみると、胸からチッチッチッ…と規則正しい音がする。

「ほんとだ、鳴ってる!」
「うるさいのよ、これ」

あっけらかんとした様子で姉が言うから、思わず吹き出した。

「すっごい機会音」
「そうそう。もうサイボーグなのよ」
「ロボコップ的な」
「改造されました」
「なんかかっこいい」

数ヶ月前、姉は原因不明の高熱で緊急入院した。細菌によって心臓の弁が炎症を起こし、手術で人工弁を入れている。明るく話しているが、生死の境をさまよった人なのだ。
心臓の人工弁には種類があるらしく、姉の胸に入っているのは『機会弁』という半永久的に使えるものらしい。

「いつ死んでもいいのよ」

姉はそう言うけれど、できれば長生きしてほしい。まだ死なないでよ。お願いだから。
いつも、どんなときも、おもしろいお姉ちゃんが、私は好きなのだ。

今日も姉の胸から規則正しい命の音がする。
  


こちらの企画に参加させていただきました🙏

期限を過ぎてしまった~。
でも書いておきたかった、姉の話でした。

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玉三郎 お読みいただき、ありがとうございました☺️