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noouchi
【シロクマ文芸部】水たまり
水たまりだと言い切るので教えてあげた。
「これは琵琶湖です」
拡声器を使ってはいるが声に力がこもる。
大男は
「そうですか、ビワコオですね、覚えておきます」
と言った。真面目な顔を装っているが、絶対覚えておくつもりなどなさそうで悔しい。
だけど大男のことを責め立て切れない自分もいる。
私だって普段は道端の水たまりに対して、周摩湖、一和田湖と名付けたりはしない。
その度にカエル達は怒っていたかしら。
あそこの水たまりは周摩湖と言うのに、人間はただそれを水たまりと呼ぶんだって怒っていたかしら。
そんなこと考えていたら大男が尋ねてきた。
「ここの水たまりの水、飲んでいいか?」
ほらもう早速忘れてる。
「水たまりじゃなくって琵琶湖ね。ちょっとだけなら良いんじゃない」
さすがに全部は飲まないだろうけど、飲んでしまわれたら琵琶湖の者達に怒られちゃうのは私だから一応注意喚起。
それなのに大男は、朗らかに笑って
「ありがとうございます、恩に切ります」
と言って琵琶湖の水、全部飲んだ。
「なにやってんのよ!!!」
と叫んだが、大男は、ごめんなさい、ごめんなさいと言いながらズンズンと遠くに歩いていってしまった。
残されたのは水のない琵琶湖。
底に少しだけ水が残っていた。
それを見てカエルが言った。
「よかった、まだ琵琶湖があった」
私は答える。
「あれは水たまりです」
私は泣いている。
カエルは怒っている。
おわり
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