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宮沢賢治の伝承【カフェ浪漫主義50】

【カフェ浪漫主義】
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鎌倉では旧暦七夕と星祭りの日が近い。

以前は我が荒庭の竹を保育園に寄付していたが最近はそれも無くなり、鎌倉宮の笹飾りにも子供達の願いの短冊があまり見られなくなったからこの慣習自体なくなっていくのかもしれない。

我家の星祭りは相変わらず宮沢賢治風の童話ファンタジー仕立てでやっている。

昭和初期の宮沢賢治の名作童話『銀河鉄道の夜』は後世の多くのクリエイター達に引き継がれ、映画や絵本の良きテーマとして今日まで続々と派生作品が作られて来た。

『銀河鉄道の夜』 初版 宮沢賢治
『銀河鉄道の夜』木版画 佐藤國男
ピューターマグ ソーサー 英国19世紀末

私のお気に入りはますむらひろしの猫版アニメ映画と、佐藤國男の木版画の絵本だ。最近この絵本の原版の木版画が手に入り、我家の星祭りの壁面を飾っている。

名作絵本の原画を見ながら夏の星界神話などに想いを馳せれば、きっと精神の奥底まで涼風の通うひと夜となるだろう。

そして飲み物は今年からワールドカップで世界中の多くの選手が飲んでいたマテ茶を試している。カルシウムと鉄分が豊富でカフェインは少なめだから、アスリート達の身体作りにも良いらしい。

マテ茶にはストレートとミルクティーのような飲み方があり、それぞれで茶葉が違う。またアイスとホットでも各国で違いがあり、今我家でも色々と飲み比べている所だ。

新体験のマテ茶の何やらエキゾチックで不思議な風味は、日常を脱したファンタジックな異世界の旅にふさわしい気がする。

茶器は宮沢賢治が憧れていた英国19世紀製の、古色の付いたピューターマグとソーサーが似合うだろう。

こちらは上と同じ佐藤國男の数々の絵本で、みな宮沢賢治原作の童話だ。

宮沢賢治童話の絵本の数々 初版 佐藤國男画

『セロ弾きのゴーシュ』は一番最初に買って当ブログでも以前紹介したが、その後彼の絵本が続々と集まってしまった。

彼の絵は何故か賢治以外の童話作品には合わないようで、賢治の東北地方の土着性と北海道生まれの彼の木版画の素朴な線が、特別に相性良かったのだろう。

私も他の画家の賢治原作の絵本は数々見たが、彼の木版画の表現が賢治の世界に最もしっくり来た。これらの絵本の原画は佐藤国男工房のホームページで直接販売もしていて、今でも工房特製の木彫フレーム付きで買える。

版画の技法は色々あり過去数世紀の西洋ではエッチング(銅版画)、東洋では木版画が主力だった。特に日本の浮世絵木版の技術は独自に目覚しい発達を遂げ、錦絵はヨーロッパでも大人気で彼の地のジャポニスム(日本趣味)へ多大な影響を及ぼした。

コンピュータ文明の現代ではさらに多様な版画技術が開発されているが、私は原初的な木版画の素朴な線が、最も版画の良さを出せると思っている。

手書きよりもずっと困難な線描が自ずと物の形体を単純化し、写真的な描写ではない心情的な表現に繋がる所がファンタジックアート方面の私の嗜好に合っているのだ。

宮沢賢治の開拓した童話ファンタジーは彼の死後しばらくその伝承者が出なかったが、1980年頃からようやくコミックやアニメ分野でファンタジーの良作が続々と出るようになる。スタジオジブリや松本零士などの作品を見ればその影響は顕著だ。

さて、今回でこの【カフェ浪漫主義】の連載も50回を迎えた。これまでロマン派クラシックを中心にさまざまな音楽を紹介してきたが、今回はこの節目を記念して、私のお気に入りのプレイリストを公開しようと思う。

ロマン派クラシックの厳選50曲だ。構成はピアノソロ、ピアノ協奏曲、合奏室内楽(弦楽ソナタ)、弦楽協奏曲、現代作家/映画音楽でそれぞれ10曲ずつ集めている。どの曲も最上の演奏を探さないと気が済まない性分なので、Apple Music Classicalに登録されている演奏を片っ端から聴き比べて、ベストだと思われる録音をプレイリストに並べた。

ピアノソロ曲は、ロマン派の黎明となったリストとショパンに続けて、フォーレのノクターン、ラフマニノフとスクリャービンを入れた。中でもヴォロドスが編曲したラフマニノフの2曲とスクリャービンの幻想ソナタは格別だ。ショパンとフォーレのノクターンも、ロマン派らしい流麗な演奏と残響の効いた心地良い録音が増えてきた。

ピアノ協奏曲もやはりラフマニノフとスクリャービンだ。オーケストラとのバランスがあるので、ソロ曲以上に厳選が大変だった。

繊細な緩徐楽章ではマイクの配置やリマスタリングを凝らないと弱音部が聞こえなくなってしまうのだが、著名な楽団でもその辺りに無頓着なことが多く、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」でさえも第2楽章を満足に聴ける演奏は少なかった。その点、ロンドン・コンチェルタンテ(室内オーケストラ)によるショスタコーヴィチの緩徐楽章は、小編成なのが功を奏して、各楽器の分離や弱音の残響まで配慮が行き届いており、「こんなに豊富な音があったのか」と唸らされたものだ。

Apple Music Classicalにラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」は現時点(2026.8/20)で253枚分あるが、そのうち明らかに音質の悪いものを除いた全ての録音を聴き比べてようやく見つけたのがプレイリストにあるアンゲリッシュ盤だった。

アンゲリッシュの神懸かった打鍵は、殊の外他の演奏とはかけ離れたレベルに達している。ERATOの録音も流石に素晴らしい。会場の咳が多いところだけが玉に瑕だが、今後このレベルの演奏が再現できるのか疑わしくなるほどの完成度だ。こういう掘り出し物があるのだから、名盤探しは苦労を厭わずしてみるものだ。

近年の録音技術向上の恩恵を最も享受しているのが室内楽の弦楽ソナタだ。この連載でも何度も紹介している英国ロマン派の弦楽曲やチェロ・ソナタは、最近の録音で楽器自体の音色が格別美しく聴こえるようになった。そのおかげで演奏機会も増えてきたようで、今まで全く知られていなかった曲にも素晴らしい名演が生まれつつある。

一方、ヴァイオリン協奏曲は録音の良い新譜が出ても結局パールマンの演奏に戻ってきてしまう。パールマン自身の技量も別格だが、パールマンが持つグァルネリ製のヴァイオリンも余程の名器なのだろう。ブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」は他にも惜しい演奏はあるのだが、結局73年パールマン盤の野暮ったいジャケットを今後も眺め続けることになりそうだ…

映画音楽でもパールマンは圧倒的な存在で、ジョン・ウィリアムズと組んだ"Cinema Serenade"は名盤中の名盤だ。

こうしてロマン派の弦楽曲と映画音楽の名曲を並べてみると、モリコーネやルグランこそロマン派の後継者だったということがよく分かる。

ご覧の通り私の好みは専らロマン派なので、ベートーヴェンやモーツァルトなどの古典派はほとんど聴かない。また、交響曲はプレイリストを分けているので、そちらもいつか紹介しよう。

サブスクリプションによる音楽体験の変化については賛否が分かれるところだが、少なくともクラシック音楽はApple Music Classicalの登場で楽しみやすくなったと言えるだろう。何より、これまではアルバムを揃えなければできなかった聴き比べが手軽にできるようになり、好みの演奏を揃えてプレイリストを共有できるようにもなった。

演奏ごとに一曲の細部まで聴き込むというのは、クラシックならではの楽しみ方だ。聴き比べをして発掘した好みの演奏を一楽章ずつ並べてプレイリストを作ることができるなんて、野村胡堂や吉田秀和のような音楽評論家が知ったらどれほど羨むことだろう。まして、そのプレイリストを共有して音楽談義もできる友人の一人でもいれば言うことはない。

是非とも多くの人にこのような楽しみを味わってほしいものだ。

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