【売上1000万以下】インボイス登録する?しない?元塾長が徹底比較したメリット・デメリットと判断基準
売上10,000,000円以下の個人事業主にとって、確定申告と同じくらい……いや、それ以上に頭を悩ませるのが「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」問題です。
「登録しないと取引を切られるって本当?」
「登録したらどれくらい手取りが減るの?」
「自分のような小さな事業者はどう判断すればいいの?」
正社員から独立した際、私もこの「登録すべきか・見送るべきか」の選択を前に関係書類を何度も読み込み、頭を抱えました。
今回は、売上10,000,000円以下の免税事業者がインボイス制度をどう扱うべきか、制度の基本から「登録するメリット・デメリット」「登録しないメリット・デメリット」までを網羅し、自分に合った判断ができるよう徹底解説します。
1. そもそもインボイス制度とは何か?(超ざっくり整理)
本来、年間の課税売上が10,000,000円以下の個人事業主は「免税事業者」と呼ばれ、消費税の納付を免除されています。読者から受け取った消費税分も、自分の手元に残してよかったわけです(いわゆる益税)。
しかし、インボイス制度の開始により、仕組みが変わりました。
登録すると: 「課税事業者」となり、売上10,000,000円以下でも消費税を国に納める義務が発生する。代わりに「適格請求書(インボイス)」を発行できる。
登録しないと: 「免税事業者」のままでいられるため消費税の納付は不要。ただし「適格請求書」を発行できないため、取引先(企業)側が仕入税額控除を受けられなくなる。
つまり、「消費税を払って取引先に喜んでもらうか」対「免税のまま手取りを守るか」の選択を迫られているのが、今の売上10,000,000円以下の事業者です。
2. インボイス制度に「登録する」場合のメリット・デメリット
登録して「課税事業者」になる道を選んだ場合のポイントです。
⭕️ 登録するメリット
企業(BtoB)との取引で選ばれやすくなる・継続できる
取引先が法人の場合、相手はインボイス(適格請求書)を欲しがります。登録しておけば「取引見直し」や「打ち切り」のリスクを回避できます。
値引き交渉の口実にされない
「免税事業者だから消費税分安くして」といった交渉を未然に防ぐことができます。
事業としての信用度が上がる
取引先に対して「しっかり税務処理を行っている事業者」という印象を与えられます。
❌ 登録するデメリット
消費税の支払いが発生し、手取りが減る
これまで手元に残っていた消費税分を納付するため、単純に収入が下がります。(※経過措置の「2割特例」などを活用しても負担ゼロにはなりません)。
確定申告・経理の手間が激増する
所得税の確定申告に加え、「消費税の確定申告」という別の計算・申告作業が必要になります。
本名や登録番号が公表される
国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」に登録情報(氏名や番号)が掲載されます。
3. インボイス制度に「登録しない(免税のまま)」メリット・デメリット
登録を見送り「免税事業者」のままでいる道を選んだ場合のポイントです。
⭕️ 登録しないメリット
消費税を納めなくていい(手取りが守られる)
売上にかかる消費税をそのまま手元に残せるため、売上10,000,000円以下の強みを活かせます。
面倒な消費税の確定申告をしなくていい
これまで通りの所得税の確定申告だけで済むため、経理作業の負担が増えません。
❌ 登録しないデメリット
法人顧客から値引き交渉をされる可能性がある
取引先企業側が控除できない消費税分(またはその一部)について、「その分安くしてほしい」と打診されるリスクがあります。
新規のBtoB案件で失注しやすくなる
募集要項に「インボイス発行事業者に限る」と書かれている案件に応募できなくなるケースがあります。
4. 登録すべきか?の判断基準(フローチャート)
自分がどちらを選ぶべきかは、「誰からお金をもらっているか(顧客層)」でほぼ決まります。
パターンA:お客さまが「一般消費者(BtoC)」メインの方
例:学習塾、家庭教師(保護者相手)、個人向けサロン、飲食店、BtoCイラストレーターなど
結論:登録しなくてOK(免税のままで十分)
理由:一般消費者は「インボイス」を求めていないため、登録してもデメリット(税負担・手間)しかありません。
パターンB:お客さまが「企業・法人(BtoB)」メインの方
例:法人向けコンサル、BtoBライター、企業向けWebデザイン、業務委託のエンジニアなど
結論:登録を前向きに検討すべき
理由:取引先がインボイスを必要としているため、登録しないと競合(登録している他の事業者)に仕事を奪われるリスクが高まります。
※個人事業主の方は、明確に打ち出していない取引先が相手の場合は、先に聞いた方が良いと思います。私も新しい案件が来たときは、自分から聞いています。
塾や予備校の講師と家庭教師の私の出した結論
取引先によって対応が分かれる、複業ならではの悩み
私は塾講師・家庭教師として、複数の取引先と契約しています。インボイスへの対応は、取引先によってバラバラです。
塾D:雇用契約を結んでいるので、給与収入なので、業務委託でない。(そもそもインボイス制度とは無関係)
家庭教師派遣所:インボイス登録の有無で時間単価が変わる(未登録だと時間単価が安くなる)
予備校E、別の家庭教師派遣所:登録の有無にかかわらず、差別はしないと明言(時間単価も変えないし、持ちコマ、今後の紹介も差をつけない)
家庭教師(個人契約):そもそも相手が事業者ではないので、インボイスはほぼ関係ない
複業で複数の取引先を持っていると、こういう「まだらな状況」に直面することが多いのではないでしょうか。
「登録しないと10%損する」は誤解だった
インボイス登録をして課税事業者になると、消費税を納めなければなりません。「売上の10%が持っていかれる」というイメージを持っている方も多いと思いますが、これは正確ではありません。
インボイス制度開始にあわせて、免税事業者から課税事業者に切り替えた人向けに「2割特例」という負担軽減措置が用意されています。これは、受け取った消費税額のうち、2割だけを納めればいいという制度で、2023年10月から2026年分の申告(2027年2〜3月申告分)まで使えます。さらに、この措置が終わったあとも、個人事業者に限り「3割特例」として2028年分まで延長されることが決まっています。
つまり、当面は「消費税額の2割、その後は3割」という負担で済むということです。
自分の数字で試算してみた
私のある年度の給与収入以外の事業収入(営業等)は3,828,240円でした。これを税込とみなして消費税相当額を計算すると、次のようになります。
3,828,240円 × 10/110 = 約348,022円
この金額をベースに、登録した場合の実際の納税額を計算すると――
2026年分まで(2割特例):約69,600円/年
2027年分以降(3割特例):約104,400円/年
一方、インボイス登録の有無で時給が変わる塾からの収入は、時給で約60円、月にすると約1,800円の差です。年間にすると、約21,600円になります。
比較してみて出た結論
つまり、登録しない場合に失う金額(年間約21,600円)と、登録した場合に納める消費税額(年間約69,600円〜104,400円)を比べると、今の私にとっては、登録しない方が経済的に有利という結論になりました。
「登録しないと仕事を失う」という漠然とした不安だけで判断せず、実際の数字で比較してみることの大切さを、あらためて実感しました。
締め
もちろんこれは、私の今の取引先構成・収入規模だからこその結論です。取引先に課税事業者が多い方や、収入規模が大きい方は、また違う結論になるはずです。同じように複業・掛け持ちで働いている方は、ぜひ一度、ご自身の数字で試算してみてください。
