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#51 チョコミントアイスが一番すき

アイスのなかの、
それもいちばんすきなものについて
書こうと思う。

​冷蔵庫を開ければ、
あるいは街の小さなコンビニの
ガラス戸を引けば、
いつでもそこには
たくさんの甘い誘惑が並んでいる。
濃厚なバニラ、
ずっしりと重たいチョコレート、
みずみずしい果物たちの
鮮やかな赤や黄色。
どれもそれなりに魅力的だし、
疲れた夜にはどれを選んでも
やさしく慰めてくれるのだろうけれど、
私はいつも、迷うことなく
同じひとつのものに手を伸ばしてしまう。
チョコミントアイス。
物心ついたときからずっと、
私にとってのアイスはこれなのだ。

​あの、なんともいえない
パステルグリーンが好きだ。

決して自然界にある植物
そのままの色ではなくて、
どこか少し人工的で、
けれど見ているだけでふっと
心が軽くなるような、淡くて冷たい緑色。
そのなかへ、まるで
夜のしずくみたいに散りばめられた
小さなチョコレートの茶色。
この二色のコントラストを見るだけで、
私はもうすでに
すこし幸せな気持ちになっている。
冷凍庫のなかの
小さな小宇宙みたいだな、
といつも思う。

​そして、
ミントは強ければ強いほどいい。

世の中には、ほんのりと香る
上品な優しさを
好む人たちもいるようだけれど、
私の好みはまったく逆だ。
ひとくち食べた瞬間、
息をするのがすこし難しくなるくらいの、
あの圧倒的な爽快感。
鼻の奥がツンとつよく冷やされて、
頭のてっぺんまで一瞬で
クリアになるような、
そんな強気なやつに惹かれてしまう。
甘さの隙間から、ひそやかに、
けれど猛烈に牙をむくような
ミントの暴力性が、
どうしようもなく愛おしい。

​夜、すべてを終えて部屋に戻り、
静まり返ったリビングで
冷凍庫からそれをとりだす。

プラスチックの蓋をあけると、
ひんやりとした白い湯気が
うっすらと立ち上る。
スプーンを差し入れると、
カチコチに凍った緑色の生地が、
心地よい音をたてて削り取られる。

​ひとくち、口に運ぶ。

ひんやりとした冷たさが
舌の上でほどけたとおもうと、
すぐにあの鮮烈なミントの風が
ふわりと広がる。
あぁ、これだ、と思う。
昼間、外の世界でまとってきた
余計な緊張や、
めんどくさい思考の澱のようなものが、
その冷たさとともに
綺麗に洗い流されていく。
時折、歯に当たってコリッと
音をたてて砕けるチョコレートの
ビターな甘さが、
冷え切った口のなかで
絶妙なアクセントになる。
甘さと爽やかさのバランスなんて
無視して、ただひたすらに
ストロングなミントの波に
溺れていく時間が、たまらなく好きだ。

​誰かと一緒にいるときには、
ちょっとした物言がつくこともある。

「そんな歯磨き粉みたいな味のものが、
どうして美味しいの」なんて、
まるで理解できないと
言いたげな顔で笑われる。
でも、私はそんな言葉を
心から聞き流しながら、
ただ静かに微笑んで、
「これがいいのよ」と心でつぶやく。
わかってもらえなくたっていい。
私にとってのこの緑色の
小さなカップは、
誰と分かち合うためでもなく、
ただ私自身を取り戻すための、
小さくて確かな儀式なのだから。

部屋のなかの明かりを落とし、
スプーンをもつ手に
伝わってくる冷たさを感じながら、
私はゆっくりとふた口、
みくちと食べ進める。
ミントの清涼感は、
体を通り抜けて、
心の一番奥のほうまで
しっかりと届いていく。
明日がどんな一日になるかなんて
わからないけれど、
今夜はこの冷たい緑色さえあれば、
なんだか機嫌よく
眠れそうな気がしている。




今日も最後まで読んでくださって
本当にありがとうございます。
皆さんは、アイスのすきな味はありますか?

では。また覗いてくださいね。
お待ちしております。

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