なぜ外壁剥落事故は繰り返されるのか? - FM視点で考える
土地の工作物たるもの、安全なものでなくてはなりません。
例えば、人が多数集まるような商業施設や複合施設、公共建築物など、このような建築物が簡単に倒壊したり、外壁や付帯物などが落下したりと、もし、そのようなことがあったらと考えるだけでも「とんでもないこと」であるのは誰しも想像に難いと思います。
だから、「土地の工作物たるもの」は、びくともしないほどに、完全に土地に固着し、安全なものでなければならないわけであります。
しかし、「この世のもの、すべて時間経過とともに劣化し、最後は滅するもの」
この自然の法則により建築物が劣化していくのは必然であります。
そして、劣化剥離した外壁を放置すれば、ゆくゆくそれが事故につながるのも必然であります。
ですので、建築物を安全で良好な状態で長期維持するには定期的な修繕が必要となるわけであります。
しかし、この修繕をすべきタイミングというのは、故障物理の法則によれば、ある程度の目安(初期故障期、経年故障期など)はあるものの、その建築物の立地環境や使用の状況による損耗の程度等によっても劣化の進行が左右され、一体いつ、どのタイミングで、事故が生じてしまうのか?というのは誰も予見ができず、事故発生のタイミングは偶然であるわけです。
このような偶然性による不測の事故を未然に防ぐためにも、定期的に、建築物の状態を、予防的見地で、診断実施するのが重要となってきます(予防保全)。
しかし、この定期的な診断・修繕を怠ったことにより、公共に影響を及ぼした残念な事故が最近ニュースで話題となりました。
・読売新聞オンライン記事
・株式会社テックビルケア様コラム
この事故については、どうやら長きにわたり未修繕であって、このような事故がいずれ起こることは予見できたと推察されます。
以前より、平成元年には北九州市の高層住宅で外壁タイルが剥落落下し、2名の方が亡くなる事故や、その後も平成17年に東京都中央区で発生した事故等が契機となり、「剥落による災害防止のためのタイル外壁、モルタル塗り外壁診断指針」が制定され、BELCA(公益社団法人ロングライフビル推進協会)が「予防保全」について普及活動をしておられますし、また、建築基準法第12条にかかる定期報告制度も見直され、規制も設けられております。
にもかかわらず、なぜ、このような事故が繰り返されるのか?
特に、一般的な民間オーナーは「今」・「お金」=「家計」の傾向が強いのではないかと考えます。
中にはしっかりと自身の建築物を「資産」として捉え、経営を取り入れて「会計的な見地」で、長期視点で、計画的な維持管理をなさっているオーナーさんもたくさんおられますが、長期維持による恩恵よりも「何かあってから修繕すればよい」というような意識の方が多いのは事実です。
公共建築物におきましては、公共施設の老朽化問題を背景とし、国は2015年にインフラ長寿命化基本計画を策定のうえ、公共ファシリティマネジメントの推進を進めています。
このファシリティマネジメントの考え方は民間にも広がってきており、企業アセットや病院施設等におけるドローンや赤外線を用いた診断事例が多く報告されています。
このファシリティマネジメントの考え方が普及すれば、建築物の状態を定期的に把握する重要性はさらに高まるものと思われます。
しかし、従来の打診調査や仮設足場を伴う調査は、費用や工期の面で負担も小さくありません。
そのため、より効率的かつ安全に建築物の状態を把握できる手法として、地上撮影方式の赤外線診断やドローン診断が注目されています。
建築物の安全を守るためには、事故が起きてから対応するのではなく、事故が起きる前に状態を把握することが重要です。
赤外線建物診断技術は、その予防保全を支える有効な手段として、今後ますます重要性を増していくものと思われます。
