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#7 私にとって MSX後継機 とは?


はじめに

 今回は、私にとって「MSX後継機」とは何か?について触れたいと思います。

なぜMSXを使い続けるのか?

 世間一般でいえば、40年も前のパソコンなんて単なる骨とう品。今のパソコンを象に例えると、MSX は蟻みたいな性能です。そんなものを今使う価値があるのか?

懐古

 中学生や高校生の頃にハマっていたのが MSX です。MSXに触れていると、当時に戻ったような懐かしい気持ちになるわけですね。そればかりに浸っていてはいけませんが、若いころの気持ちを思い出して今の原動力につなげるのは、悪いことではないと思っています。
 そして、昔の MSX のソフトを入手しては動かしてみるというのも、当時を懐かしむ気持ちが強いです。

憧れ

 当時は学生の身分ですので、次から次へとソフトや周辺機を買ったりはできませんでした。当時憧れたハードやソフトを今手に入れて少し動かしてみることで、当時手に入れられなくて残念に思っていた気持ちを供養させる意味合いもあります。
 そして、当時は、インターネットも使われていない時代ですので、プログラム雑誌でプログラムを覚えたりしながら、当時のプロが作るソフトウェアに憧れたものです。「プログラミングをマスターすれば、こんなすごいソフトを作れるんだ!」と。今、当時プロだった人が、実は年齢的にはほんの少し上くらいの人が多かったことを知り、そして多少の知識も身に着けたので、それを使って当時の「プログラミングをマスターしたら作ってみたかったもの」を実際に作ってみることで、当時の小さな夢をかなえるという意味合いもあります。

MSX後継機

 MSXturboR の次である MSX3 を当時は待ち望んでいました。
 MSX3 になれなかったマシンとして、ちょっと残念な機種扱いのMSXturboRですが、私は FS-A1ST を購入して、本体内蔵メニューが「私が噂のターボアール A1ST です」とクリアな声で喋ったときには、「おぉ!喋った!すごい!」と感激しましたし、いろいろ遅かったソフトが速くなったりして嬉しかった思い出があります。
 それでも数年使ってるうちに、さすがに「動作がもうちょっと速ければ」と思うように変わっていくわけですが、8年の間に MSX2, MSX2+, MSXturboR と3回もバージョンアップした MSXを数年使い続ければ古く感じる時代だったのは仕方がないところ。
 買った人を驚かせるだけの性能を持っているという点では、MSXturboR は、全然失敗じゃなかったと思います。
 なので、MSXturboR で MSX を終わらせていなければ、2~3年後には新機種として、今度こそ MSX3 が出るだろう、という期待を持っていた。
 MSXDIY向けに V9958互換コアを作ってほしいと頼まれたことに背中を押された部分はありますが、MSX2++ はその気持ちを満足させるために、自分で作ってみようと思ったのが根っこにあります。

レトロPCとしてのMSX

 MSX, MSX2, MSX2+, MSXturboR は、ハードの機能として「ちょっと足りない」と感じる部分が少しずつ残っています。当時はその部分に不満を感じたりしていたわけですが、一部の人の間で2020年くらいから 2026年の今まで続いているレトロPCブームは、そういった「ちょっと足りない部分」を「当時の味」として楽しんでいるブーム、だと私は思っています。
 そして、長年しつこく MSX を使い続けてる人たち(=MSXコミュニティ)は、当然 MSX, MSX2, MSX2+, MSXturboR が好き。
 レトロPCブームに乗っかってる人たちや、MSXコミュニティは、昔の儘の MSX が好きなので、そこを生かした後継機でなければならないと、私は思いました。
 つまり、その人たちが MSX に求めているのは、今どきの OS である Windows や Linux が動くことでもなければ、8K や 16K といった高解像度表示ができることでもない。オーケストラ演奏ができることでもない。
 MSX3 という名前に惹かれて集まってきた人の多くは、1995年ころに出なかった MSXturboR の後継機を求めて集まってきたんだ、と私は定義づけました。
 もちろん、DEVCON開催で大勢集まってきた人の中には、新しいものを望む人もいるでしょうし、むしろ昔の MSX2+ や MSXturboR を復刻してくれればいいという人もいるでしょう。でも、一番「MSXらしさ」が残るのは、やっぱり MSXturboR の延長であり、かつ「ちょっと足りない」と感じる部分が残っている後継機ではないでしょうか?

ちょっと足りない

 なぜ「ちょっと足りない」がいいのか?
 MSXの最大の強みとして「カートリッジスロットにデバイスを装着すれば自由に拡張できること」があります。
 あえて足りない部分を残しておいて、それを補うハードをユーザーが作り出して遊ぶ。補う人によって、補い方が千差万別で個性があって面白い。
 足りない部分を、プログラミングやデータ(画像や音)の作り方で補って遊ぶ。これも補う人によって、補い方(=工夫)に個性があって面白い。
 MSX本体や、昔のソフトを懐かしむだけでなく、「このちょっと足りない部分を、各自が様々な工夫で目立たなくしたり、逆に個性として活かしたりする工夫を楽しむコミュニティ」が MSXコミュニティだと思います。
 だから、本体に全部の音源を丸ごと載せるとか、昔販売していたハードを全部載せるというような後継機を出してしまったら、一気に魅力がなくなってしまうと、私は思います。

V9968

 そういう価値観で、V9958 の後継といえるような VDP はどんなだろう?と考えて作ったのが、V9968 です。スプライトは無茶苦茶強化しましたが、一方でまだ「ちょっと足りないんじゃない?」と思う部分も残してあります。最初のうちは、新機能でいろいろ盛り上がるでしょう。でも、少しすると不満が出てくると思います。
 でも、その不満を工夫で乗り越えてくる人が絶対に出てくる。その工夫を見せつける人が出てくる。
 それでコミュニティが盛り上がれば、私は大成功だと思います。

コミュニティ

 MSXはきっかけ。そこに集まってきた人たちで、共通の思考の軸になっているタネです。
 それを使って楽しんでいるコミュニティ。私はそれが好きだから MSX をいじり続ける。
 先端技術にも興味はありますが、それは MSX とは別のところで取り組みます。先端技術は、特許で守ったり、高額な設備を使って製造したりしないと実現は難しい。だから、そういうのは本業でしっかりやればいい。
 MSXは、もっと緩い枯れた技術をみんなでオープンにいじくって楽しむ場であれば、私は十分ですね。
 私は、そんな気持ちで FPGA MSXtR と MSX2++ の開発を進めています。

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