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25億人のアフリカを誰が支えるのか――水を起点に、日本企業が「単品輸出」から脱却する方法 ※土曜日の投稿

2050年、アフリカの人口は約25億人に達すると予測されている。

現在の約14億人から、四半世紀ほどで10億人以上増える計算だ。

この数字を見たとき、多くの企業は、

「巨大な消費市場が生まれる」

と考えるかもしれない。

もちろん、それは間違いではない。

だが、私はもっと基本的な問題があると思う。

10億人増える人々を、誰が支えるのだろうか。

人が増えれば、水が必要になる。

食料が必要になる。

住宅が必要になる。

学校や病院が必要になる。

工場が必要になる。

そして、それらを動かすための電力、空調、道路、物流、上下水道が必要になる。

ところが、現在のアフリカには、その人口増加を受け止めるインフラが十分に整っていない。

ここに、アフリカという市場の特殊性がある。


人口は増える。しかし、水インフラが追いついていない

アフリカ開発銀行によれば、アフリカでは今なお数億人が基本的な飲料水サービスを利用できていない。

地域によって状況は異なるが、東部・南部アフリカでも、安全な水へのアクセス不足は依然として巨大な問題である。

つまりアフリカは、

人口が増える市場

であると同時に、

その人口を支える基本インフラがまだ大量に必要な市場

でもある。

先進国とは構造が違う。

日本では、水道管やポンプ市場の中心は、

更新
省エネ
老朽化対策
維持管理

になっている。

だがアフリカでは、

新設
+拡張
+更新
+農村給水
+灌漑
+下水処理
+海水淡水化
+再利用

が同時に必要になる。

しかもアフリカ開発銀行は、水・衛生分野だけでも毎年数百億ドル規模の投資不足があると指摘している。

これは巨大な社会問題である。

だが、見方を変えれば、

今後数十年間続く巨大な設備投資需要

でもある。


水道は人を支え、灌漑はその人を食べさせる

さらに重要なのが農業だ。

人口が増えるということは、飲み水を使う人が増えるだけではない。

食べる人も増える。

サブサハラ・アフリカの農業は現在も天水依存が大きい。

しかし気候変動によって降雨は不安定になり、気温上昇によって作物の必要水量も増える。

そこで灌漑の重要性が高まる。

2024年に PNAS Nexus に掲載されたマリの長期研究では、小規模灌漑の導入による農業生産増加が長期間持続し、周辺地域では子どもの栄養状態改善まで確認された。

2025年のサヘル地域を対象とした研究でも、小規模灌漑は天水農業より収益性が高く、とりわけ高付加価値作物では経済効果が大きいことが示されている。

つまり、

水道は増える都市人口を支え、灌漑はその人口を食べさせる。

水は単なる一産業ではない。

人口、都市、農業、製造業をつなぐ基盤なのである。


だから私は「水」を日本企業のアフリカ戦略の入口にしたい

日本には、水に関係する優れた企業が多数ある。

例えば荏原製作所。

ポンプによって、

地下水をくみ上げ、
海水を取り込み、
浄水場へ送り、
都市へ配り、
工場の中で循環させ、
使い終わった水を排出する。

水インフラの至るところにポンプが存在する。

荏原はすでに南アフリカ、ケニア、ナイジェリアに拠点を持ち、アフリカで建築・産業、水、エネルギー分野を重点市場としている。

ケニアではUPDATERと協力し、2030年までに東アフリカで太陽光発電ポンプを延べ500台導入する計画も進めている。

これは非常に興味深い。

なぜなら売っているのは、もはや単なるポンプではないからだ。

太陽光
+ポンプ
+水
+農業

という一つのシステムになり始めている。

私は、この考え方をもっと大きくできると思う。


荏原だけでは水問題は解決できない

ここで重要なのは、

「荏原はアフリカでポンプをもっと売ればいい」

ではない。

水問題は、ポンプだけでは解決できないからだ。

例えば海水淡水化なら、

水を取る。

高圧にする。

塩分を除去する。

水質を監視する。

都市へ送る。

設備を何十年も維持する。

すべてが必要になる。

ここで東レが入る。

東レはRO膜で世界的な競争力を持ち、中東でも大型海水淡水化案件への供給実績と製造・技術支援基盤を持つ。

すると、

荏原 → 水を動かす。

東レ → 水を作る。

という補完関係が成立する。


横河電機を加えると、「水道」を売れる

さらに横河電機を加える。

アフリカの水道問題では、取水量そのものだけでなく、配水途中で大量の水が失われる「無収水」が大きな問題になっている。

漏水。

盗水。

メーター不良。

請求漏れ。

水圧の過大。

様々な原因がある。

横河はアフリカでも流量・圧力を監視する配水管理システムの実績を持つ。

そこで、

横河が測る
→ システムが異常を把握する
→ 荏原ポンプの運転を最適化する

という構造にできる。

すると売るものは、

高効率ポンプ

から、

「水道事業体の漏水と電力費を減らすサービス」

へ変わる。

最近の研究でも、アフリカの無収水問題は単なる配管技術の問題ではなく、料金制度、盗水、サービス品質、顧客管理を含むシステム問題であることが示されている。

だから、本当に水道を改善するなら、

ポンプ
+計測
+制御
+料金
+保守

まで考えなければならない。


LIXILは「水道が来ない地域」を担当できる

ただし、アフリカ全土に巨大な上下水道網を一気に建設することはできない。

農村。

非正規居住地。

急速に拡大する都市周辺部。

こうした地域では、そもそも下水道に接続されていない住宅が大量に存在する。

ここではLIXILのSATOのような分散型衛生設備が重要になる。

LIXILはすでにアフリカ各国で低価格衛生設備を展開し、JICAとも水・衛生分野で協力を進めている。

つまり、

大都市 → 荏原・東レ・横河・水ing

下水道未接続地域 → LIXIL/SATO

という二層構造で考えればいい。

集中型インフラと分散型衛生は競合しない。

両方必要なのである。


しかし、水だけでは都市は動かない

ここから、さらに視野を広げたい。

人口が増え、所得が上がれば、

病院
ホテル
ショッピングモール
工場
物流施設
データセンター

も増える。

すると水だけでなく、空調が必要になる。

ここでダイキン工業が出てくる。

ダイキンはすでにアフリカ40か国超で事業展開し、複数国で現地法人や代理店網を築いている。

ナイジェリアやアルジェリアでは軽組立にも踏み込んでいる。

例えば病院なら、

ダイキン → 空調・チラー

荏原 → 給水・排水・冷却水循環

横河 → 制御・監視

と組み合わせられる。

売るものを、

エアコン+ポンプ

ではなく、

病院の空調・水・冷熱を止めないシステム

に変える。

工場でもホテルでも同じである。

ここまで来れば、「水ビジネス」はすでに水だけの話ではない。


なぜ、こんな連合が今までできなかったのか

ここで当然、一つの疑問が出てくる。

それほど合理的なら、なぜ今まで日本企業はもっと連携しなかったのか。

私は、これが非常に重要な問いだと思う。

原因は、日本企業に能力がなかったからではない。

むしろ逆である。

各社が強い独立企業だからこそ、自社最適から抜けにくかった。

荏原には荏原の利益がある。

東レには東レの利益がある。

ダイキンにはダイキンの販売網がある。

商社同士も競合する。

メーカー同士も一部では競合する。

さらに大型案件では、

誰がFS費用を負担するのか。
誰が政府と交渉するのか。
誰が為替リスクを取るのか。
誰が工事遅延責任を負うのか。
設備が故障したら誰の責任なのか。

を決めなければならない。

固定的な「オールジャパン」を作れば、むしろ意思決定が遅くなることもある。

だから私は、

オールジャパンではなく、Modular Japan Alliance

が必要だと思う。


「Modular Japan Alliance」とは何か

固定されたメンバーで巨大企業連合を作る必要はない。

案件ごとに必要な企業だけを組み替える。

例えば海水淡水化なら、

荏原東レ横河商社現地EPC

病院なら、

荏原ダイキン横河Developer

農村給水なら、

荏原UPDATER現地企業JICA等

工業団地なら、

荏原東レ/栗田ダイキン横河商社

でいい。

毎回メンバーが違っても構わない。

これがModularなのである。


日本企業だけで固める必要もない

さらに重要なのは、

「Japan Alliance」と言っても、日本企業100%にしないこと

である。

例えばエジプトなら、

Orascom Construction。

Hassan Allam。

南アフリカなら現地水処理企業。

欧州にはVeolia、SUEZ、ACCIONAのような水メジャーがいる。

彼らをすべて競争相手だと考える必要はない。

例えば、

欧州企業 → Developer・O&M

現地企業 → 土木・施工

日本企業 → 高付加価値設備・制御・サービス

という組み方もできる。

目的は、

日本企業だけで案件を独占すること

ではない。

世界中の案件で、日本企業の強い部分が必ず使われる状態を作ること

である。


最大の鍵は商社かもしれない

では、誰が企業をつなぐのか。

ここで豊田通商や丸紅の役割が重要になる。

特に豊田通商はCFAOを通じ、アフリカ全土に幅広い事業ネットワークを持っている。

自動車だけではない。

医療。

消費財。

電力。

インフラ。

さらにアフリカ企業との関係も深い。

豊田通商グループはTICAD9でも多数のMOU等を締結し、エジプトのOrascom Constructionとは、水・電力などのアフリカインフラ案件共同開発に踏み込んでいる。

つまり商社は、

日本製品を輸出する会社

ではなく、

案件そのものを作る会社

になり得る。

ここにメーカーが接続する。


アフリカでは「金融」も商品になる

ただし、技術も商社もあるのに、まだ足りないものがある。

お金である。

アフリカのインフラ案件では、

良い設備だから買う

とは限らない。

そもそも購入資金がなければ売れない。

だから、

JBIC
NEXI
JICA
AfDB
Afreximbank
民間銀行

を案件形成段階から組み込む必要がある。

アフリカでは、

ポンプ
+膜
+制御
+工事

だけでは商品が完成しない。

金融まで付いて、初めて商品になる。

この発想が重要だ。


「水を売る」のではなく、継続収益を作る

さらに日本企業は、設備を売って終わりにしてはいけない。

例えば荏原なら、

新品ポンプ販売

Installed Base増加

点検

部品交換

オーバーホール

更新

という収益循環を作れる。

横河も遠隔監視契約を取れる。

水ing/インフロニアHDなら、長期O&MやPPPに参加できる。

ダイキンも保守契約を持つ。

つまり、

20年間、水と空調を止めない。

こと自体を商品にする。

設備価格だけで中国企業や他国メーカーと競う必要はない。

競争軸を、

CAPEX

から、

稼働率
エネルギー効率
故障率
部品供給時間
Total Cost of Ownership

へ変えればいい。


そのためには、アフリカ人技術者が必要になる

もちろん、日本人技術者が毎回アフリカへ飛んで修理していたら採算が合わない。

そこで重要になるのが現地人材育成だ。

例えば、

EBARA Certified Service Engineer

のような認定制度を作る。

ケニア。

南アフリカ。

ナイジェリア。

エジプト。

などにRegional Service Academyを置く。

Level 1なら据付・点検。

Level 2なら診断・部品交換。

Level 3ならオーバーホール。

と段階的に認定する。

さらに将来、

荏原。

横河。

ダイキン。

KITZ。

などが共同で、

Japanese Infrastructure Service Academy

を作ってもいい。

すると人材育成はCSRではない。

サービス網そのものになる。

現地に雇用が生まれ、日本企業には保守契約と部品販売という継続収益が生まれる。


もちろん、アフリカにはリスクがある

ここまで書くと、あまりに楽観的に見えるかもしれない。

当然、リスクは大きい。

為替下落。

インフレ。

政変。

政府の債務問題。

代金回収。

外貨送金規制。

現地パートナーの信用。

だからこそ、すべてのリスクをメーカーが取ってはいけない。

輸入設備は可能な限りドル・ユーロ建て。

現地人件費や家賃は現地通貨建てにしてNatural Hedgeを作る。

大型案件ではNEXIの貿易保険や投資保険を使う。

AfDBや世界銀行が入る案件を優先する。

Letter of CreditやEscrowを活用する。

さらに公共水道だけに依存せず、

鉱山
食品工場
石油化学
ホテル
病院
データセンター

など、支払能力の高い民間顧客を混ぜる。

つまり、

人口が大きい国へ行く

のではなく、

リスク調整後リターンの高い案件へ行く

必要がある。


BE FORWARDから学べることもある

最後に、少し異色の企業を挙げたい。

BE FORWARDである。

同社は中古車輸出で、アフリカに強いブランドを築いた。

面白いのは中古車そのものではない。

日本から港へ送り、

通関し、

さらに何千kmも離れた内陸国へ届ける仕組みを持っていることだ。

重工メーカーは、

大型ポンプを売る方法

には詳しくても、

500ドルの部品をザンビアの地方都市へどう届けるか

には必ずしも強くない。

ここは学ぶ価値がある。

大型案件はEPCルート。

小型ポンプ・消耗部品は越境EC・物流ルート。

二つを持てれば、アフリカでのサービス能力はかなり変わる。


日本企業が輸出すべきものは「製品」ではない

2050年、アフリカには約25億人が暮らしている可能性がある。

その人々は、

水を飲む。

食事をする。

家に住む。

病院へ行く。

工場で働く。

買い物をする。

データセンターを使う。

そのすべてを支えるインフラが必要になる。

日本には、

水を動かす企業がある。

水を作る企業がある。

空気を冷やす企業がある。

設備を制御する企業がある。

衛生設備を作る企業がある。

案件を作る商社がある。

資金を支える金融機関がある。

問題は、技術がないことではない。

それらを接続する仕組みが弱かったこと

なのではないか。

だから固定された「日本企業連合」ではなく、

Modular Japan Alliance

なのである。

必要なときに。

必要な企業だけ。

現地企業や欧州企業も巻き込み。

金融まで含めて組み直す。

そして、

製品を売るのではなく、20年間動き続ける仕組みを売る。

水を入口にする。

そこから農業へ。

空調へ。

工場へ。

病院へ。

都市へ。

私は、これが日本企業がアフリカで取るべき戦略の一つではないかと思う。

アフリカの人口増加を、

「将来の消費市場」

とだけ見るのでは足りない。

その前に必要になるものがある。

25億人が生き、食べ、働くための基盤である。

そして、その基盤を作る仕事には、日本企業がまだ大きく貢献できる余地が残っている。

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