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「時計」が社会インフラになる日NICTの時空間同期から、自動運転・遠隔手術・関連銘柄まで考える ※土曜日の投稿

先日、NICT(情報通信研究機構)の時空間に関する研究者の講義を聞く機会があった。

そこで私は、一つのことを考えた。

もし、離れた場所にある機械同士が、ほとんどずれることのない時計を共有できたら、何が起きるのだろう。

例えば自動車。

車Aと車Bが、

「何時何分何秒に、どの位置にいて、どの速度で、どちらへ動いている」

という情報を正確に共有できれば、衝突を事前に避けやすくなる。

遠隔医療もそうだ。

東京の外科医が、遠隔地にある手術ロボットを操作する。

医師の操作、映像、ロボットの動きが正確に同期すれば、地理的に離れた場所でも高度な医療を提供できる可能性がある。

最初は、

「ものすごく正確な時計を作る研究なのだろう」

くらいに考えていた。

しかし調べていくと、話はもっと大きかった。

これは時計の研究というより、

コンピュータ、通信設備、車、ロボット、工場、電力設備など、現実世界に存在する無数の機械へ共通の時間軸を与える研究

なのである。

そして驚いたことに、この世界は未来の話だけではない。

金融。

通信。

放送。

衛星測位。

データセンター。

すでに多くの場所で、

「正確な時間を共有すること」

そのものが社会インフラになり始めている。


1.「絶対にずれない時計」が重要なのではない

まず表現を少し正確にしたい。

重要なのは、

「絶対にずれない時計を一台作ること」

ではない。

むしろ、

離れた場所にある複数の時計を極めて高い精度で同期し、その共通時間を使って信号・位置・動作を管理すること

である。

現在のGPSも、この発想の代表例だ。

衛星が、

「私はこの時刻に信号を送りました」

と知らせる。

地上の受信機は、

「この時刻に届きました」

と測る。

その時間差から距離を計算する。

つまり、

時間を測る

距離が分かる

位置が分かる

という構造になっている。

光は1ナノ秒、つまり10億分の1秒で約30cm進む。

逆に言えば、

時間を極限まで正確に扱えるようになるほど、空間も正確に扱える。

だから「時計」だけではなく、

時空間

なのである。


2.日本標準時には、すでに光格子時計が使われている

ここで興味深いのが、日本標準時である。

NICTは、ストロンチウム光格子時計を使って日本標準時の精度を高めている。

ただし、ここは少し誤解しやすい。

現在の光格子時計が24時間365日、日本標準時そのものを直接刻み続けているわけではない。

NICTでは2021年6月から週1回以上、光格子時計を用いて標準時の刻み幅を評価し、2021年8月から週1~2回、光格子時計を参照して日本標準時の周波数を継続的に調整している。

つまり、

連続運転に向く水素メーザーやセシウム原子時計で時刻を維持する

さらに高精度な光格子時計で定期的に「本当に1秒が正しいか」を確認する

必要に応じて補正する

という構造である。

これによって、日本標準時とUTCとの時刻差を、それまでの約±20ナノ秒から**±5ナノ秒以内**へ抑えられるようになった。

NICTは2022年6月、国家標準時の維持に光格子時計を利用した世界初の成果として公表した。

つまり光格子時計は、

「いつか使われる未来技術」

ではない。

すでに国家の時刻インフラの精度を支える上流技術として使われている。


3.そして日本のNTPには、1日70億回もの問い合わせが来る

私たちは普段、

スマートフォン。

PC。

サーバー。

ネットワーク機器。

などが表示する時計をほとんど意識しない。

しかしその裏では、膨大な機械が「正しい時刻」を必要としている。

NICTの公開NTPサーバーには、2019年時点で最大、

毎秒5万回

1日70億回

もの時刻問い合わせが到達していた。

70億回である。

これは非常に象徴的だと思う。

道路や水道と違い、

時刻インフラは目に見えない。

しかし社会のデジタル化が進むほど、

「何時だったのか」

「どちらが先だったのか」

「同じ瞬間だったのか」

を正しく決める重要性は増していく。


4.金融市場では、すでに「ナノ秒」が価値を持っている

分かりやすいのが金融市場だ。

高速取引の世界では、

A社の注文。

B社の注文。

どちらが先だったのかを決めなければならない。

例えば、

A社
10時00分00.000001234秒

B社
10時00分00.000001267秒

なら、その差はわずか33ナノ秒である。

人間には全く認識できない時間差だ。

しかしコンピュータにとっては、

「どちらが先だったか」

という明確な順序になる。

この世界では時計は、

時間を見る道具ではなく、取引の順序を証明するインフラ

である。

だから証券取引所、金融機関、データセンターではPTP(Precision Time Protocol)などを使った高精度な時刻同期が必要になる。


5.放送では「3000km離れた機械を一つのスタジオのように動かす」ところまで来た

さらに実用化が進んでいるのが放送である。

NTTとTBSは2024年、IOWN All-Photonics Networkを使ったリモートプロダクションを実証した。

東京、埼玉、台湾などを接続し、離れた場所のカメラや制作設備をPTPで同期した。

台湾を含む約3000km離れた拠点間では、リモートカメラ制御を約30msの伝搬遅延で実現。

さらに、1μs未満のジッタでPTPロックを維持した。

これは非常に重要である。

撮影設備と制作設備が同じ場所にある必要がなくなるからだ。

さらに2025年には、大規模スポーツイベントで、

映像20チャネル

をリアルタイム送受信。

二つのネットワークルート間の遅延差を約60μsに抑え、PTP同期を維持しながら、

9日間、一度もトラブルなく

地上波生放送を完遂した。

つまり、

物理的に離れた機械を、共通時間を使って一つの巨大なシステムとして動かす

ところまでは、すでに実用段階へ入っているのである。


6.では、なぜ自動運転で交通事故はまだなくならないのか

ここまで調べると、逆に疑問が生じる。

そこまで正確に同期できるなら、なぜ自動運転は完成しないのだろう。

答えは、

時計は必要条件だが、十分条件ではない

からである。

高精度時刻同期が得意なのは、

「いつ起きたか」

を正確にすることだ。

しかし自動運転では、

何があるのか

どこにあるのか

どちらへ動いているのか

次に何をするのか

まで理解する必要がある。

例えば、V2X対応車同士なら、

「11時00分00秒、交差点から50m、時速40km」

という情報を共有できる。

二台とも正しい位置と速度を通信しているなら、衝突予測はしやすくなる。

ところが道路には、

V2Xを持たない古い車。

自転車。

歩行者。

動物。

落下物。

工事現場。

などが存在する。

彼らは、

「私は今ここにいます」

と電波を送ってくれない。

だから自動運転車には依然として、

カメラ

LiDAR

レーダー

高精度地図

AI

などが必要になる。

さらに自分の車だけV2Xに対応していても効果は限定される。

道路インフラ。

信号。

他の車。

広く対応して初めてネットワーク効果が発生する。

米国運輸省が全国的なV2X Deployment Planを発表したのも2024年8月であり、現在も普及を進めている段階だ。

つまり交通事故防止の問題は、

時計性能だけでなく、センサー、AI、通信、標準化、社会全体への普及の問題

なのである。


7.遠隔手術は「まだできない」のではなく、「でき始めている」

遠隔手術についても、調べてみると認識を少し変える必要があった。

遠隔手術そのものは、すでに人間への実施例がある。

2025年に公表された中国の多施設Phase I試験では、4病院の18人に対して、450~2200km離れた場所からロボット遠隔手術を実施した。

成功率は100%。

平均リアルタイム往復ネットワーク遅延は約38msだった。

したがって、

「遠隔手術は実現していない」

というのは正しくない。

より正確には、

限定された条件ではすでに可能だが、安全性・通信・制度・コストまで含めて一般医療として普及する段階には至っていない

のである。


8.そして遠隔手術では「時刻同期」と「低遅延」は別問題である

ここは、私がこのテーマを調べていて最も重要だと感じた部分である。

例えば東京と北海道の時計を、

1ナノ秒

以内で同期できたとする。

それでも通信に100msかかれば、

ロボットは100ms遅れて反応する。

つまり、

時計を正確にすることと、通信を速くすることは別問題

なのである。

正確な時計があれば、

「通信に100.000msかかった」

と正確に測ることはできる。

しかし、

100msを0msにはできない。

2022年にPLOS ONEに掲載されたNankakuらの研究では、34人が0、70、100、150、200、300msの通信遅延条件でロボット操作を行った。

結果として、熟練者では100ms以下なら操作性能への影響は許容可能と考えられた一方、100msを超えると遅延が大きくなるほど作業時間も長くなる傾向が確認された。

さらに実際の通信では、

平均遅延

だけではない。

Jitter=遅延の揺らぎ

がある。

例えば、

50ms。

52ms。

48ms。

突然250ms。

51ms。

となれば、操作感覚は大きく乱れる。

ほかにも、

パケットロス。

映像停止。

回線断。

サイバー攻撃。

がある。

だから遠隔手術には、

正確な時刻

だけではなく、

低遅延通信

低ジッタ

ロボット制御

高品質3D映像

通信冗長化

Fail-safe

現地医療チーム

責任分担と法制度

まで必要になる。

実際、日本外科学会は2026年に遠隔手術ガイドライン第2版を公表しており、技術だけでなく医療体制や安全管理を含めた社会実装のルール作りが進んでいる。


9.そこで見えてきた「時空間インフラ」という6層構造

ここまで調べて、私はこのテーマを単なる「時計産業」と考えるのは違うと思うようになった。

もっと大きな、

時空間インフラ

というTechnology Stackとして考えた方が分かりやすい。


第1層 基準時刻を「生成する」

原子時計。

光格子時計。

セシウム時計。

水素メーザー。

ここでは、

そもそも正しい1秒とは何か

を作る。


第2層 時間・位置の「ソースを確保する」

GPS/GNSS。

LEO PNT。

Holdover。

ここでは、

社会の機械が参照できる信頼性の高い時刻・位置情報を確保する。

GNSSが妨害された場合のバックアップも重要になる。


第3層 時刻を「配送する」

PTP。

SyncE。

White Rabbit。

光ネットワーク。

ここでは、

作った正確な時刻を、離れた場所の機械まで届ける。


第4層 品質を「測定・保証する」

Time Error。

Jitter。

Wander。

Packet Delay Variation。

正確な時計を作っても、

本当に正しく届いているか

を誰かが確認しなければならない。


第5層 社会インフラを同期する

5G/6G基地局。

データセンター。

金融市場。

電力網。

放送。

スマートファクトリー。

多数の機械が共通時間軸で動き始める。


第6層 現実世界を制御する

自動運転。

ドローン。

遠隔手術。

協働ロボット。

完全自動工場。

ここまで来て初めて、

現実世界そのものをネットワーク越しに協調制御する

ことが可能になる。

つまり、

時計 → PNT → 時刻配送 → 測定 → 社会インフラ → 自律制御

という巨大なValue Chainなのである。


10.この見方をすると「関連銘柄」も全く違って見える

このテーマを投資対象として考える場合、

「時計を作っている会社はどこか」

だけを探すのでは不十分だと思う。

半導体産業でも、

NVIDIAだけが産業ではない。

TSMC。

ASML。

KLA。

Broadcom。

データセンター。

通信会社。

それぞれ違う場所でValue Chainを握っている。

時空間インフラでも同じことが起こる可能性がある。


11.島津製作所(東証7701)

「時間そのものを作る」日本企業

今回、改めて調べて最も興味深かった日本企業の一つが島津製作所だった。

2025年3月、島津製作所はストロンチウム光格子時計、

Aetherclock OC020

を発売した。

18桁精度、すなわち同社の表現では、

100億年に1秒の誤差

に相当する。

しかも実験室を占有する巨大な研究装置ではなく、約250Lまで小型化した世界初の商用光格子時計である。

用途として島津製作所は、

次世代の標準時生成

6Gなどの基地局間超高精度同期

相対論的測地・センシング

を明示している。

そして2025年6月には、NICTから第一号機を受注した。

時空間Value Chainでいえば、

第1層「時間を作る」

に位置する非常に分かりやすい企業である。

ただし、島津製作所全体から見れば光格子時計はまだ極めて小さな新規事業である。

技術的重要性と、現在の業績への重要性は別

という点には注意が必要だ。


12.古野電気(東証6814)

「正しい時間を受け取る」

古野電気というと、多くの人は船舶用レーダーや魚群探知機を想像すると思う。

しかし同社はGNSSを利用した高精度時刻同期機器を展開している。

2026年2月期第2四半期には、

ITS・GNSS売上高44億円

前年同期比37.6%増

となり、会社は、

時刻同期製品の販売が海外向けを中心に好調

と明記している。

つまり古野電気は、

単なるGPS受信機メーカーではなく、衛星からTrusted Timeを受け取り社会インフラへ渡す企業

として見ることができる。

第2層の企業である。

ただし、44億円はITS・GNSSカテゴリー全体であり、すべてが時刻同期製品ではない。

また、時刻同期事業が伸びても、古野電気全体の利益が同じ割合で伸びるわけではない。

ここも、

技術テーマへの純度と、株価への感応度を分けて見る

必要がある。


13.Microchip Technology(NASDAQ:MCHP)

時間を作り、運ぶ

米国企業で非常に興味深いのがMicrochip Technologyである。

半導体会社というイメージが強いが、Timing分野では、

原子時計。

GNSS Timing。

PTP Grandmaster。

Holdover。

GNSS妨害対策。

まで幅広く持つ。

TimeProvider 4500では、光ネットワークを使って最大800kmにわたりサブナノ秒級のTime Transferを提供する。GNSSを利用できない環境でも、地上ネットワークから高精度時刻を供給できることを狙っている。

これは、

GPSが止まっても、5G、電力、交通などの重要インフラを止めない

ための技術でもある。

Microchipは、

第1~第3層をまたぐ総合Timing Infrastructure企業

と見ることができる。


14.ADTRAN(NASDAQ:ADTN)

1ナノ秒より先の世界へ

ADTRAN傘下のOscilloquartzも非常に興味深い。

2025年には既存のGrandmaster ClockへWhite Rabbit技術を追加し、

sub-nanosecond

つまり1ナノ秒未満の同期を提供し始めた。

想定市場は、

金融

データセンター

計量

研究機関

などである。

さらにOscilloquartzは光ポンピング型セシウム原子時計も展開し、通信、データセンター、電力、防衛などへ用途を拡大している。

つまりADTRANは、

時間を作る技術と、超高精度で時間を配送する技術

の両方を持っている。

時空間インフラの純度という意味では、かなり興味深い会社である。


15.Iridium Communications(NASDAQ:IRDM)

「GPSが使えなくても止まらない」PNT

もう一つ重要なのが、

GPS/GNSSへの過度な依存をどう減らすか

という問題である。

IridiumはSatellesを買収し、LEO衛星を利用したPNT事業へ参入した。

会社はIridium PNTについて、

金融

通信

サイバーセキュリティ

交通

などのCritical InfrastructureにおけるGPS補完を想定している。

さらに、PNTサービスの年間売上を2030年までに1億ドルへ成長させる目標を掲げている。

これは第2層、

「時間・位置のソースを確保する」

ビジネスである。

GPSが妨害されても、

電力網。

基地局。

データセンター。

金融システム。

は止められない。

そのため、

PNTそのものの冗長化

が新しい社会インフラ市場になる可能性がある。


16.NTT(東証9432)

時間を社会へ運ぶ

NTTは時計メーカーではない。

しかしIOWN APNによって、

正確な時間を遠隔地まで低遅延・低ジッタで運ぶ

役割を担う可能性がある。

すでにTBSとの実証・本番利用で、

PTP。

3000km。

20チャネル。

9日間連続。

というところまで来ている。

つまり技術的には非常に重要である。

ただしNTTは巨大通信会社であり、

PTPや時空間同期市場が成長したからといって、NTT全体の利益が大きく動くとは限らない。

投資では、

技術的重要度★★★★★

でも、

現在の株価感応度は低い

という可能性がある。

これは区別したい。


17.アンリツ(東証6754)

「本当に同期したのか」を測る

そしてValue Chainには必ず、

測る会社

が必要になる。

アンリツのNetwork Master Pro MT1000Aでは、

SyncE

IEEE 1588v2 PTP

Time Error

PTP Wander

などの測定が可能である。

5G基地局が、

「正確に同期しています」

と言っても、それを検証しなければならない。

時空間インフラが高度化するほど、

正しく同期していることを保証する測定市場

も大きくなる。

半導体でいう、

KLA。

レーザーテック。

Keysight。

のような「つるはし」ポジションである。

ただしこちらも、PTP関連測定はアンリツ全社事業の一部にすぎない。

NTTと同様、

技術テーマとして重要だから、必ず大きな利益寄与になる

とは限らない。


18.日本株だけでもValue Chainができる

今回調べて面白かったのは、日本企業だけでも時空間インフラのValue Chainがある程度見えることである。

となる。

この企業群は競争相手というより、

同じ時空間インフラの違う階層にいる

と考えた方が分かりやすい。


19.AIの次に「現実世界の同期」が重要になるのではないか

AIは、デジタル世界の情報処理能力を劇的に高めた。

しかしAIが、

自動車。

ロボット。

工場。

電力網。

医療機器。

を動かし始めると、別の問題が出てくる。

AIが、

「今」

と言ったとき、

ロボットAとロボットBにとって、本当に同じ「今」なのか。

東京のセンサーと大阪のセンサーが記録した出来事は、

本当にどちらが先なのか。

Digital Twin上の世界と、

現実世界の機械は、

どこまで正確に同期しているのか。

CPS=Cyber Physical Systemが高度化するほど、

デジタル空間と物理空間をつなぐ「共通の時間軸」

の価値は高まる。

AIが「頭脳」なら、

通信は「神経」。

センサーは「目や耳」。

そして高精度な時空間同期は、

全身に共通する時間感覚

のようなものなのかもしれない。


20.今後、私は三つの変化に注目したい

この分野はまだ成長初期にある。

今後特に注目したいのは三つだ。

① GNSS代替・補完PNTの商用化

LEO PNT。

地上Timing Network。

Holdover。

耐Jamming。

耐Spoofing。

GPSが止まっても社会が止まらない仕組みが、どこまで普及するか。


② Beyond 5G / 6Gでの高精度時刻同期

通信速度だけではなく、

基地局・エッジ・データセンター・端末がどこまで正確に同じ時間を共有する必要があるのか。

ここでPTP、White Rabbit、光周波数基準などの需要が大きく変わる可能性がある。


③ 金融・電力・工場・データセンターでの超高精度同期

sub-nanosecondまで本当に必要な市場が、

研究・金融などの一部から、

AIデータセンター

スマートファクトリー

電力ネットワーク

などへ広がるのか。

ここが市場規模を大きく左右すると思う。


おわりに――時計は「時間を見る道具」から「世界を同期するインフラ」へ

時計というと、

何時に起きる。

何時に会社へ行く。

何時に会議をする。

という道具を想像する。

しかしこれから重要になる時計は、

人間が文字盤を見るためのものではないのかもしれない。

コンピュータに順序を与える。

車に位置を与える。

通信基地局を同期する。

工場のロボットを協調させる。

離れた場所の機械を、一つのシステムとして動かす。

つまり、

時計そのものを見る必要がなくなるほど、時計が社会の中へ埋め込まれていく。

20世紀の社会インフラには、

道路。

鉄道。

電力。

通信。

があった。

21世紀にはそこへ、

「正確な時刻を社会全体へ配るインフラ」

が加わるのかもしれない。

そして、その先に、

自動運転。

交通事故の大幅な削減。

完全自動工場。

遠隔医療。

分散型AIデータセンター。

がある。

「絶対にずれない時計があったら、何ができるのだろう」。

NICTの講義を聞いたときの素朴な疑問から調べ始めた。

しかし行き着いたのは、時計そのものの話ではなかった。

世界中の機械が、同じ「今」を共有したとき、社会はどう変わるのか。

時空間同期とは、そのための基盤技術なのだと思う。


※本稿で取り上げた上場企業は、時空間同期・PNT・通信・測定技術のValue Chainを説明するための事例であり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。また、関連技術が各社の売上・利益に占める割合は大きく異なります。「重要な技術を持つ会社」と「その技術の市場拡大が全社利益や株価へ大きく影響する会社」は分けて考える必要があります。

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