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早稲田が相模原市に来る――相模原は「JAXAの街」から宇宙×テクノロジー都市へ進化する 業務開始前、PCオフ

相模原市にとって、かなり大きなニュースが入ってきた。

2026年8月26日、神奈川県と早稲田大学が、宇宙関連産業の振興に関する連携協定を締結した。

そして早稲田大学は、相模原市緑区の橋本地区に宇宙関連の研究拠点を設置する方針を明らかにした。早稲田大学にとって神奈川県内初の拠点になる。早稲田が行政機関と宇宙分野の連携協定を結ぶこと自体も初めてだという。

一見すると、

「橋本に大学の研究施設が一つ増える」

というニュースに見える。

しかし、相模原市を少し広い視点から眺めると、意味はかなり違って見えてくる。

なぜなら相模原には、すでに、

JAXA宇宙科学研究所

がある。

さらに、

青山学院大学理工学部

があり、

三菱電機の宇宙関連製造拠点

があり、

宇宙・先端技術に取り組む企業やスタートアップも存在する。

そして橋本には、宇宙関連企業の交流拠点まで整備されている。

そこへ早稲田大学がやって来る。

相模原は今、

「JAXAがある街」から、「大学・研究機関・企業が集まる宇宙とテクノロジーの街」へ変わる入口

に立っているのではないか。

私は今回のニュースを、そう見ている。


早稲田が研究するのは「宇宙で人間が暮らす技術」

今回の早稲田大学の研究は、ロケットを飛ばしたり人工衛星を作ったりするだけの宇宙研究ではない。

テーマは、

一般民間人が宇宙で健康かつ快適に暮らすための「宇宙QOL」

である。

宇宙船や宇宙ステーションには、ECLSSと呼ばれる環境制御・生命維持システムが必要になる。

酸素を供給する。

水を再生する。

二酸化炭素を除去する。

温度や湿度、気圧を管理する。

これまでの宇宙開発は、高度な訓練を受けた宇宙飛行士が活動することを前提としてきた。

しかし今後、宇宙旅行や商業宇宙ステーションが普及すれば、普通の民間人も宇宙へ行くようになる可能性がある。

そこで、

「生きられる宇宙」から「快適に暮らせる宇宙」へ

研究を進めようというわけだ。

しかもこれは短期間の小さな研究ではない。

JAXA宇宙戦略基金の「SX-CRANE」に採択され、支援予定期間は2026年4月から2034年3月まで、最長8年間

代表機関は早稲田大学。

連携機関には、

慶應義塾大学
東京理科大学
東京女子医科大学
名古屋市立大学
大阪大学
有人宇宙システム
パナソニック
ジャムコ

などが名を連ねる。

ここは重要だ。

慶應義塾大学が相模原に新キャンパスをつくるという話ではない。

しかし、橋本に置かれる早稲田の研究拠点を中心として、日本有数の大学や企業の研究ネットワークが相模原と接続する可能性が生まれるのである。


相模原には、すでにJAXAという巨大な資産がある

もちろん、相模原と宇宙の関係は今回突然始まったわけではない。

中央区由野台には、1989年からJAXA相模原キャンパスがある。

ここには宇宙科学研究所をはじめ、

宇宙教育センター、

宇宙探査イノベーションハブ、

ロケットや人工衛星搭載機器の開発・試験施設、

地球外試料キュレーションセンター

などが集まっている。

さらに重要なのは、JAXA相模原キャンパスが全国の大学研究者が集まる共同利用拠点でもあることだ。

つまり相模原には以前から、

日本中の宇宙研究者を結び付ける巨大な知的インフラ

が存在していた。

問題は、それを市内産業や大学、スタートアップ、まちづくりへどこまで接続できるかだった。

今回の早稲田進出は、その接続を大きく進める可能性がある。


そして淵野辺には青山学院大学がある

JAXA相模原キャンパスの近くには、青山学院大学相模原キャンパスがある。

ここには理工学部があり、宇宙物理、材料、ロボットなどの研究が行われている。

青山学院大学はJAXAとの連携大学院も行っており、JAXA研究者による学生指導や講義も実施している。

大学自身も、

相模原キャンパスとJAXA宇宙科学研究所が近いため、研究者が行き来しやすく、共同研究を行いやすい

という立地のメリットを挙げている。

つまり、

JAXAだけが孤立して存在しているわけではない。

すでに、

大学教育・研究 × JAXA

という接続が相模原には存在する。

そこへ早稲田が加わる。


さらに相模原では「宇宙機を実際に作っている」

研究だけではない。

中央区宮下には、

三菱電機 鎌倉製作所 相模工場

がある。

2024年に世界初のピンポイント月着陸を成功させたJAXAの小型月着陸実証機「SLIM」。

その開発では三菱電機が主開発メーカーを務めた。

そして相模原市によれば、SLIMに使用された薄膜太陽電池セルをパネルへ組み込む作業や、探査機構体パネルの製造は、相模原市中央区宮下の三菱電機工場で行われていた。

これは象徴的だ。

相模原には、

宇宙を研究する場所だけでなく、宇宙へ飛んでいく機体の部品を実際に作る場所まである。

のである。


スタートアップまで生まれ始めている

さらに面白い動きがある。

相模原市に本社を置くPXPというスタートアップだ。

PXPはペロブスカイト太陽電池など、軽量で柔軟な次世代太陽電池を研究開発している。

2025年には三菱電機が、宇宙用太陽電池の研究開発でPXPと連携すると発表した。

地上で利用される次世代太陽電池技術を、人工衛星などの宇宙環境へ展開する研究である。

つまり相模原では、

JAXA

だけでなく、

大企業

Deep Techスタートアップ

の接続まで始まっている。


そして橋本が「宇宙ビジネスの玄関口」になる

ここで今回の早稲田進出先である橋本が重要になる。

橋本駅前には2025年12月、

KANAGAWA Space Village

が開設された。

宇宙関連企業、大学、研究機関、金融機関などが利用できるコワーキング・交流拠点で、企業の宇宙産業参入や共同事業を促進することが目的だ。近隣にはラボスペースも設けられている。

2026年1月には、神奈川県・相模原市・JAXAによる「Sagamihara Space Industry Forum」も橋本で開催された。

そこにはJAXAだけでなく、三菱電機やさまざまな宇宙関連企業が参加した。

そして今回、

早稲田大学まで橋本へ来る。

これは偶然の点が並んでいるだけではない。

徐々に一つの線になり始めている。


橋本―淵野辺―由野台―宮下という「宇宙・技術回廊」

相模原市の地図を眺めると、面白い構造が見えてくる。

橋本

リニア中央新幹線の神奈川県駅予定地。
KANAGAWA Space Village。
そして早稲田大学の新研究拠点。

淵野辺

青山学院大学理工学部。

由野台

JAXA宇宙科学研究所。

宮下

三菱電機相模工場。

私はこれを、

相模原宇宙・テクノロジー回廊

として育てていく価値があると思う。

橋本では、

企業、スタートアップ、大学、投資、人材

を集める。

淵野辺・由野台では、

教育、基礎研究、宇宙研究

を行う。

そして市内企業で、

試作、製造、量産

へつなげる。

もしこれが成立すれば、

研究→起業→実証→製造

というイノベーションの流れを、一つの市の中でかなりの部分まで完結できる可能性が出てくる。


宇宙産業は「ロケット会社だけ」の産業ではない

宇宙産業というと、

ロケット。

人工衛星。

探査機。

などを想像しがちだ。

しかし今回の早稲田大学のECLSS研究を見ると、裾野はもっと広い。

宇宙で生活するには、

水処理
空調
ポンプ
センサー
電池
食品
医療
ロボット
AI
素材
通信
住宅設備
廃棄物処理

まで必要になる。

つまり宇宙産業とは、

既存産業の技術を、極限環境へ応用する産業

でもある。

そして宇宙で磨かれた技術を地上へ戻せる。

実際、神奈川県と早稲田大学の協定には、宇宙で生まれた技術を地上の持続可能な暮らしへ活用することが明記されている。

例えば、

宇宙用の水再生技術を災害対策へ。

遠隔健康管理を高齢者医療へ。

省資源システムを住宅や公共施設へ。

宇宙ロボットを工場や建設現場へ。

という展開が考えられる。

だから宇宙産業政策は、

宇宙好きのためだけの政策ではない。

製造業、IT、環境、医療、防災、住宅などへ広がる産業政策になり得る。


教育都市としても大きなチャンスがある

もう一つ重要なのが人材育成だ。

早稲田大学が実施する関連プログラムでは、大学生だけでなく、社会人や高専生なども対象として300人以上の宇宙人材育成を目指している。

ここを相模原市は積極的に利用すべきだと思う。

例えば、

小中学生 → JAXA・宇宙科学への興味

高校・高専 → ロボット、プログラミング、宇宙工学

大学 → 青学・早稲田・JAXA等との研究

学生・若手社会人 → 市内企業でインターン

起業家 → Space VillageやSICで創業

という流れをつくる。

そうなれば、

相模原で育った子どもが、相模原で最先端技術を学び、相模原で宇宙産業の仕事をする

というキャリアまで描ける。

これは単なる企業誘致より、ずっと強い地域産業政策になる。


リニアとの組み合わせも大きい

そして橋本にはもう一つ巨大なカードがある。

**リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)**である。

本村賢太郎市長自身も、2026年7月の記者会見で、橋本について宇宙とロボット、スタートアップ、イノベーション、大学や研究機関を組み合わせた拠点にしたいという趣旨の発言をしている。

リニア駅ができるだけなら、

「東京へのアクセスが良い住宅地」

で終わる可能性もある。

しかし、

リニア
×大学
×JAXA
×宇宙産業
×ロボット
×スタートアップ

が組み合わされば話は違う。

橋本を、

東京から人が帰ってくるベッドタウン

ではなく、

全国から研究者や技術者がやって来る目的地

に変えられる可能性がある。


ただし「早稲田が来た」だけでは産業集積にはならない

ここは冷静に見なければならない。

研究施設ができた。

イベントを開催した。

宇宙の看板を掲げた。

それだけでは産業クラスターは生まれない。

大学、JAXA、企業がそれぞれ別々に活動しているだけなら、

「有名な施設がいくつもある街」

で終わってしまう。

重要なのは、その間をつなぐことだ。

例えば、

早稲田・青学・JAXA・三菱電機・市内企業による常設コンソーシアム

をつくる。

市内中小企業が宇宙産業へ参入するための技術マッチングを行う。

共同研究・試作品開発を市が支援する。

学生インターンを増やす。

Space Villageから市内工場へ企業をつなぐ。

橋本とJAXA周辺の交通アクセスを改善する。

そして成果を、

イベント参加者数

ではなく、

共同研究件数
宇宙産業への新規参入企業数
スタートアップ創出数
市内企業の新規受注額
インターン人数
高付加価値雇用の増加

などで測る。

ここまでやって初めて、

宇宙が「観光資源」から「産業」になる。


「宇宙の街」より、「宇宙×ロボット×Deep Techの街」へ

私は、相模原が目指すブランドを単なる

宇宙の街・相模原

だけに限定する必要はないと思っている。

むしろ、

SAGAMIHARA
Space × Robotics × Deep Tech

くらいの方が可能性が広い。

相模原には製造業がある。

JAXAがある。

青学理工がある。

三菱電機がある。

スタートアップがある。

ロボット産業の蓄積もある。

橋本には将来リニアが来る。

そして今回、そこへ早稲田大学が加わった。

一つ一つを見ると、それほど珍しくないかもしれない。

しかし、

大学
×国立研究機関
×大企業
×中小製造業
×スタートアップ
×リニア

が一つの都市に重なるケースは、そう多くない。


相模原が変わるかもしれない

これまで相模原は、

「東京や横浜へ通勤する街」

というイメージを持たれることも多かった。

もちろん住宅都市としての役割も重要だ。

しかし私は、これからの相模原にはもう一つの姿が必要だと思う。

東京へ働きに行くだけではなく、東京から研究者や企業が働きに来る街。

今回の早稲田大学の進出は、その可能性を感じさせる。

JAXAがある。

青山学院大学がある。

三菱電機がある。

相模原発のDeep Tech企業も育ち始めている。

橋本にはSpace Villageができた。

そこへ早稲田大学が来る。

さらに早稲田の研究ネットワークを通じて、慶應をはじめ多くの大学・企業ともつながる。

点だったものが、少しずつ線になってきた。

次に必要なのは、その線を面にすることだ。

研究者が集まる。

学生が集まる。

企業が集まる。

新しい会社が生まれる。

市内企業が宇宙産業へ参入する。

そこで働く若者が相模原に住む。

そうした循環まで生み出せれば、

「JAXAがある相模原」から、
「宇宙とテクノロジーで新しい産業が生まれる相模原」へ。

今回の早稲田大学の研究拠点は、その転換点になるかもしれない。

私はかなり期待している。

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