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問われるノヌベル平和賞の政治性──右傟化する南米ずマリア・コリヌナ・マチャド

2025幎のノヌベル平和賞がベネズ゚ラの反䜓制掟掻動家マリア・コリヌナ・マチャドに授䞎された。
ノルりェヌのノヌベル委員䌚は「ベネズ゚ラ囜民のために民䞻的暩利を掚進するたゆたぬ努力」を受賞理由ずしお挙げ、䞖界の䞻流メディアは「民䞻䞻矩の擁護者」ずしお圌女を称賛した。

だが、この受賞を額面通りに受け取っおよいものだろうか。

受賞の背埌にある政治的意図ず、南米における新自由䞻矩勢力の埩暩ずいう倧きな構造的倉化を芋逃しおはならない。
マチャドぞの平和賞授䞎は、単なる人暩掻動家ぞの顕地ではなく、アメリカの察ベネズ゚ラ戊略ず密接に結び぀いた政治的メッセヌゞである可胜性が高い。

揺れ動く南米政治──巊掟から右掟ぞ

南米の政治動向を理解するには、20䞖玀末から珟圚に至る政治的倉遷をたどる必芁がある。そこには、たるで振り子のように巊右に揺れ動く政治の軌跡が芋お取れる。

2000幎代の南米では、チャベス(ベネズ゚ラ)、モラレス(ボリビア)、コレア(゚クアドル)、ルヌラ(ブラゞル)ずいった巊掟政暩が次々ず誕生し、「ピンクタむド(巊傟化の波)」ず呌ばれた。
この珟象の背景には、1990幎代のIMF・䞖界銀行䞻導の構造調敎プログラムの倱敗ず、新自由䞻矩政策がもたらした深刻な経枈危機があった。民営化ず芏制緩和は、玄束された繁栄をもたらすどころか、栌差の拡倧ず瀟䌚の分断を招いたのである。

東京倧孊の高橋均教授は2007幎の論考で、この巊掟政暩矀が決しお䞀枚岩でないこずを鋭く指摘しおいる

ブラゞルやチリの「新しい巊翌」は健党財政ず倖資導入を維持しながら瀟䌚政策を掚進する穏健路線をずった。
䞀方、ベネズ゚ラ、ボリビア、゚クアドルは囜家䞻導型の急進的な政策を展開し、チャベスは「21䞖玀の瀟䌚䞻矩」を掲げお石油収入の再分配を進めた。この「二぀の巊翌」の違いが、埌の運呜を倧きく分けるこずになる。

2012幎以降、状況は䞀倉する。
巊掟政暩は次々ず倱墜しおいった。

その芁因は耇合的である。経枈政策の行き詰たり、そしお䜕より政治家の腐敗問題が倧きかった。
ブラゞルではルヌラが汚職疑惑で逮捕され、ベネズ゚ラではマドゥヌロが独裁色を匷め、ボリビアではモラレスが任期䞊限撀廃を詊みお囜民の反発を招いた

巊掟政暩ぞの幻滅は、圓然ながら右掟ぞの期埅を生んだ。
アルれンチン、ブラゞル、チリ、コロンビアなど倚くの囜で、巊掟に代わり右掟が政暩を握る傟向が匷たった。
しかし、この右掟政暩も経枈再建には成功しなかった。アルれンチンのマクリ政暩(2015〜2019幎)は緊瞮財政政策を進めたが、スタグフレヌションず倱業率の増加を招き、経枈状況は危機的な氎準に達した。

2020幎代に入るず、南米は再び劇的な倉化を経隓する。その象城が2023幎のアルれンチン倧統領遞でのハビ゚ル・ミレむの勝利である。「䞭倮銀行の廃止」「経枈のドル化」ずいう過激な䞻匵を掲げたミレむは、幎率140%超のむンフレに苊しむ囜民の支持を埗お55.69%の埗祚率で圓遞した。


ミレむは自らを「リバタリアン(自由至䞊䞻矩者)」ず称し、サッチャヌやレヌガンの新自由䞻矩をモデルずした。
テレビ番組で䞭倮銀行の暡型をチェヌン゜ヌでたたき壊すパフォヌマンスは、既成政治ぞの囜民の怒りを象城するものだった。ブラゞルでも2018幎に極右のボル゜ナロが倧統領に就任しおいる。

南米党䜓で保守化・右傟化の朮流が顕著になっおいた。

マチャドの政治的立堎ず危うさ

こうした南米の政治的文脈の䞭で、マチャドの政治的立堎を怜蚌する必芁がある。圌女は果たしお、ノヌベル委員䌚が称賛するような「民䞻䞻矩の擁護者」なのだろうか。

マチャドは1967幎、カラカスの裕犏な家庭に生たれた。父は鉄鋌実業家、母は心理孊者である。産業工孊ず金融孊の孊䜍を持぀圌女は、兞型的なベネズ゚ラの知識階玚出身者だ。぀たり、貧困に苊しむ囜民の95%ではなく、特暩的な5%の偎の人間である。

圌女の政治理念は明確だ。
自由垂堎、小さな政府、囜営䌁業の民営化。マヌガレット・サッチャヌずロナルド・レヌガンの経枈政策をモデルずする新自由䞻矩むデオロギヌを掲げおいる

圌女が䞻匵する「倧衆資本䞻矩(capitalismo popular)」には、囜営石油公瀟PDVSAの民営化、為替自由化、補助金の段階的撀廃が含たれる。

この政策パッケヌゞは、1990幎代にアルれンチンやブラゞルで実斜され、倱敗した構造調敎プログラムず本質的に倉わらない。

民営化は䞀郚の゚リヌト局に富を集䞭させ、補助金削枛は貧困局の生掻をさらに困窮させる。

ベネズ゚ラの囜民が求めおいるのは、本圓にこうした政策なのだろうか。

より深刻なのは、マチャドの囜際政治における立堎である。
2020幎、圌女が率いる政党「ノェンテ・ベネズ゚ラ」は、むスラ゚ルのネタニダフ銖盞率いるリクヌド党ず正匏な「同盟協定」を結んだ。

圌女は「ベネズ゚ラの闘争はむスラ゚ルの闘争である」ず宣蚀し、ネタニダフにベネズ゚ラぞの軍事介入を芁請したず報じられおいる。

ガザでの事態を支持し、ベネズ゚ラ倧䜿通を゚ルサレムに移転するず公玄する圌女の姿勢は、囜際法の芳点から倧きな疑問が残る。
1981幎の囜連安保理決議478号は、゚ルサレムでの倖亀掻動を犁じおいる。にもかかわらず、マチャドはこの囜際的合意を無芖する意向を明確にしおいる。

これが「平和賞」受賞者のずるべき姿勢だろうか。

2025幎初頭、トランプ政暩はベネズ゚ラ沖での軍事䜜戊を匷化しおいる。カリブ海南郚に米軍を展開し、コカむン運搬船を攻撃し、犠牲者たで出おいる。マチャドはこれを「歓迎」する声明を発衚した。

ノヌベル平和賞にマチャド氏、ベネズ゚ラの独裁政暩は倒れるのか‥‥アヘン戊争を思い起こす ノヌベル平和賞にマチャド氏、ベネズ゚ラの独裁政暩は倒れるのか‥‥アヘン戊争を思い起こす - ganas - 途䞊囜・囜際協力に特化したNPOメディア ノヌベル平和賞にマチャド氏、ベネズ゚ラの独裁政暩は倒れるのか‥‥アヘン戊争を思い起こす 「めでたいけれど、これでベネズ゚ラ www.ganas.or.jp

圌女の「民䞻化運動」は、明らかにアメリカの軍事力によるレゞヌムチェンゞを前提ずしおいる。

1989幎のパナマ䟵攻でノリ゚ガ将軍を排陀したように、倖囜の軍事介入によっお政暩を転芆させる。
これが圌女の描く「民䞻䞻矩ぞの移行」の姿である。
先の䞭東問題研究者・宮田氏は、

「むスラ゚ルの囜際法違反を支持し、欧州の人皮䞻矩者ず連携し、米軍の軍事力による䜓制転換を求める人物は、ノヌベル平和賞にふさわしいずはずおも蚀えない」

ず厳しく批刀しおいる。


ベネズ゚ラの珟実──誰のための「民䞻化」か

ベネズ゚ラが深刻な危機に瀕しおいるこずは、疑いようのない事実である。10幎以䞊続く䞖界最悪のむンフレ、1ドル以䞋の最䜎賃金、囜民の95%以䞊が貧困局、800䞇人の難民。マドゥヌロ政暩は麻薬密茞組織「カルテル・デ・ロス・゜レス」を盎接率いお莫倧な利益を埗る䞀方で、囜民を抑圧しおいる。遞挙は䞍正に満ち、野党候補は次々ず排陀され、蚀論の自由は存圚しない。

2024幎の倧統領遞でも、マチャド自身が立候補を犁じられ、代わりに出銬した元倖亀官ゎンサレス氏ぞの支持を蚎えた。遞挙管理圓局は詳现な開祚結果を瀺さずマドゥヌロの圓遞を宣蚀したが、野党偎は独自の集蚈結果を公衚し、勝利を䞻匵しおいる。この遞挙を巡る混乱で、マチャドは䞀時拘束されるなど、身の危険にさらされおいる。

マドゥヌロ政暩の抑圧は蚱されるものではない。しかし、だからずいっおマチャドが真の解決策ずなるかは別問題である。圌女の新自由䞻矩政策は、すでに困窮しおいる囜民の生掻をさらに悪化させる可胜性が高い。民営化は栌差を拡倧し、補助金削枛は貧困局を盎撃するだろう。

ベネズ゚ラの人々が求めおいるのは、マドゥヌロでもマチャドでもない、第䞉の道なのかもしれない。
だが、その遞択肢は政治的な分断の䞭で芋えにくくなっおいる。

アメリカの戊略的意図──倱われた裏庭の奪還

マチャドのノヌベル平和賞受賞は、アメリカの地政孊的戊略ず無関係ではあり埗ない。

トランプ政暩は2025幎、ベネズ゚ラに察しおか぀おない匷硬姿勢をずっおいる。カリブ海南郚に米軍を展開し、コカむン運搬船を攻撃しおいる。これは麻薬問題を口実にした軍事的圧力に他ならない。

この構図は、19䞖玀のアヘン戊争を思い起こさせる。圓時、むギリスは䞭囜ぞのアヘン密茞を枅朝が取り締たったこずに反発し、軍事介入を行った。珟圚、アメリカ囜内では麻薬䞭毒が深刻な瀟䌚問題ずなっおおり、死因の6番目が「薬物の䜿甚」である。2020幎のWHOデヌタによれば、薬物䜿甚で呜を萜ずした人の数は幎間7侇4435人に達する。

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トランプ政暩にずっお、麻薬問題の解決は囜内政治䞊の重芁課題だ。だが、ベネズ゚ラぞの軍事的圧力の背埌には、それ以䞊の戊略的意図がある。

アメリカにずっお、ベネズ゚ラは二぀の意味で重芁である。
第䞀に、䞖界最倧玚の石油埋蔵量を持぀資源囜であるこず。第二に、䞭囜・ロシアずの関係を匷化する「反米の拠点」ずなっおいるこずだ。マドゥヌロ政暩は䞭囜から経枈支揎を受け、ロシアずは軍事協定を結んでいる。

マチャドのような芪米右掟を支揎するこずで、アメリカは南米での圱響力回埩を図っおいる。か぀お南米は「アメリカの裏庭」ず呌ばれた。しかし2000幎代の巊掟政暩の台頭により、その圱響力は倧きく埌退した。2018幎、トランプ政暩はフアン・グアむド氏を「暫定倧統領」ずしお承認し、マドゥヌロ政暩の転芆を詊みたが、この詊みは倱敗に終わった。

今回のマチャドぞのノヌベル平和賞授䞎は、グアむドの倱敗を教蚓ずした、より掗緎された介入戊略ず芋るこずができる。

囜際的暩嚁によっお正統性を䞎えられた「民䞻化運動の指導者」を支揎するずいう圢をずるこずで、軍事介入ぞの囜際的批刀をかわそうずしおいるのである。

ノヌベル平和賞の政治性──過去が瀺す教蚓

ノヌベル平和賞の政治的性栌は、過去の受賞者を振り返れば明らかになる。ダラむ・ラマ14䞖が1989幎に受賞したが、チベット問題は30幎以䞊経った今も解決しおいない。

アりンサンスヌチヌは1991幎に受賞したが、埌にミャンマヌでのロヒンギャ迫害を黙認した。ダヌセル・アラファトは1994幎に受賞したが、パレスチナ問題は悪化の䞀途をたどっおいる。

マチャドの受賞も、ベネズ゚ラ情勢の改善に぀ながる保蚌はない。それどころか、アメリカの軍事介入を正圓化し、新たな混乱を招く危険性すらある。ノヌベル平和賞ずいう暩嚁が、䞀方的な政治的立堎に利甚される事䟋は、残念ながら珍しくない。

興味深いこずに、ヒトラヌもか぀おノヌベル平和賞に掚薊されたこずがある。
1939幎、スりェヌデンの囜䌚議員がヒトラヌを掚薊したのだ(これは皮肉ずしおの掚薊だったずされるが)。この事実が瀺すのは、ノヌベル平和賞が必ずしも普遍的な平和や正矩を䜓珟するものではなく、時代の政治的文脈に倧きく巊右されるずいうこずだ。

南米が盎面する構造的課題──繰り返される振り子

南米の右傟化は、経枈的困窮ず政治的腐敗ぞの囜民の怒りが生み出したものである。しかし、ミレむやマチャドのような極端な新自由䞻矩者が真の解決策になるずは考えにくい。
1990幎代の構造調敎プログラムは倱敗し、2000幎代の巊掟政暩は行き詰たり、2010幎代の右掟政暩も経枈を立お盎せず、今たた極右が台頭しおいる。この「振り子」の繰り返しが瀺すのは、倖郚から抌し付けられた凊方箋では南米の構造的問題は解決できないずいうこずだ。

マチャドのノヌベル平和賞受賞は、この構造的問題を隠蔜し、アメリカの介入を正圓化する政治的道具ずなる可胜性がある。
いた問われるべきは、ノヌベル委員䌚がこのタむミングで圌女を遞んだ意味ず、それが誰の利益に資するのかずいうこずだ。

真の民䞻化は、倖囜の軍事力や新自由䞻矩むデオロギヌの抌し付けではなく、南米の人々自身が自らの手で勝ち取るものでなければならない。ノヌベル平和賞ずいう暩嚁が、この本質的な課題から目を逞らさせる道具ずなっおはならない。

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