見出し画像

蝉時雨と静寂

梅雨が明けると、
待っていたかのように蝉が一斉に鳴き始める。

夏の到来を告げる蝉時雨である。

雨のように降り注ぐ蝉の大合唱。

それがふとした瞬間にぴたりと止み、深い静寂が訪れる。

その静けさは、風の音や葉擦れ、そして自分の心音までも浮かび上がらせる。

この鮮やかな対比に、私は格別な趣を感じる。

うだるような暑さと肌にまとわり付く湿気。
その中でほとばしる生命力。

突き抜けた青空と、すべてを包み込むような静けさ。

その繰り返しが、夏の力強さと儚さをいっそう際立たせる。


その対比のなかに、私は陰と陽、あるいは生と死の境界線を見出す。

激しく鳴き、短い命を燃やし尽くす蝉の姿には、
生の輝きと終わりが凝縮されているようだ。

蝉時雨と静寂。

その対比の中には、日本人が古くから感じ取ってきた「無常の美」がある。

生を慈しみ、死をも受け入れる。

そんな古来の美意識が、今も私たちの血の中に流れているのだと思う。

蝉時雨が止んだ後の、耳の奥に残る静寂。
その一瞬の空白に、私は自らの命の輪郭をなぞっているのかもしれない。




#蝉時雨 #静寂 #無常 #生と死 #日本人の美意識 #エッセイ  

いいなと思ったら応援しよう!

女無天(ミント) よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!