見知らぬ人とシンクロする
午後、テレビでサッカーワールドカップの日本戦を観て、4-0の勝利を見届けてから散歩に出かけた。
*
家を出て数分後、遊歩道を歩いていると向こうから歩いてくる小学校低学年くらいの男の子と父親の親子とすれ違う。
父親の手を握り歩く男の子は日本代表のレプリカユニホームを着ていた。おそらく私と同じくさっきまで試合を見ていたのだろう。
その後しばらく住宅街を歩いていると、今度は一軒の民家の前で熱心にリフティングの練習をしている高校生くらいの男の子を見かけた。
そのあたりはたまに散歩で通りかかることがあるが、普段人通りはあまりなく住民らしき人を見かけたことはなかった。
その男の子も日本代表の大勝に刺激されて、思わずボールを手に取り家を飛び出したのかもしれない。
さらにテクテク歩いて最寄駅の前まで行くと、今度はパブリックビューイングできる店から出てきたっぽい人たちの人だかりができていた。
興奮冷めやらぬ表情でしゃべっているところを見ると、十中八九日本代表戦を観てきた集団だろう。
*
家を出てから一時間もしないうちに、バラバラの場所でありながら、「あなたもさっきの試合観ましたね?」という人を立て続けに見かけるというのは不思議な感じがした。
今日は日本中のあちこちで同じような光景が見られたのだろう。
国民的行事といえば、紅白歌合戦の歴代最高視聴率は1963年(昭和38年)の81.4%らしいが、そんなことは今後もうないだろう。
人の好みが多様化・細分化された現在の世の中で、なかなかここまで、「あの人も観た」「この人も観た」みたいな状況に遭遇することは珍しい。
オリンピック開催期間中でも、ここまで同じ体験を共有したと感じられることはない。
試合の日時が日本時間で日曜日の昼間という絶好の時間帯であったこと、日本がケガ人続出というピンチを退け過去最多の得点で勝利したことが奇跡的に重なった。
日本がまだ勝ち進むことはあるかもしれないが、こんなに道行くたちとシンクロするような不思議な感覚を味わうことはもうないかもしれない。
