初めてDanteを試してみた学び
今回のテーマは、音声のネットワーク伝送規格「Dante」について。
ここ数年、映像をネットワーク経由で送る機能が身近になった印象ですが、音声の世界ではかなり前から導入が進んでいたそうです。
様々な規格があるようですが、その代表である「Dante」は私も耳にすることが多く気になっていました。
そんなDanteを試すことができたので、その学びを皆さんにも紹介できればと思います。
Danteとは
近年、映像伝送はネットワーク経由で送るIP化の波があり、「NDI」「SRT」「ST 2110IP」など色々なプロトコルを目にする機会が増えてきた印象があります。
例えばBlackmagic Design社はST 2110IP製品を出したり、映像スイッチャーのGoStreamやOBSBOT社のPTZカメラはNDIとSRTに対応しています。
私もNDIの理解を深めてきて、実際の現場でも何度か導入をしてきました。特にリモート操作のできるPTZカメラとは相性が良く、LANケーブル一本で映像・電源・遠隔操作を供給できて便利です。
これまでのNDIについての記事は、下記のリンクからご覧ください。
映像のネットワーク伝送がようやく普及し始めた一方、音声の世界は10年以上前から導入が進み、ネットワークAV伝送の市場レポートではすでに熟成期に入ったことが示されています。
そして、その中で他を大きく離して普及している規格が「Dante」です。
Danteは2006年にAudinate社より商用化が開始され、普及していった規格です。なんと、一般的な回線帯域の1Gbpsでも最大512ch × 512chの送受信ができます。
映像規格のNDIは5本の映像を送ると帯域が圧迫され始めていたので、映像と音声のデータ量の差が大きいことを感じます。逆に言えば、データ量が少なかったからこそ、早くから普及が進んだのでしょう。
今回はDanteを使い、複数の端末で音声を伝送してみました。

今回試した環境
まず今回Danteを試してみた構成を紹介します。
PCで再生した音楽を音声ミキサーに送り、音声ミキサーの音声をPCに送り、PCで録音をする構成です。
その構成を図に表したのがこちら。

NDIも同じですが、ネットワークは双方向に伝送ができるため、配線図だけだと経路が分かりづらいです。
そこで、音声の流れを単純化してみました。音声ミキサーはDanteで音声を入力すると同時に、出力もしていることになります。
特に注目なのは、ミキサーから出力しているのはミックス音声だけではなく、個別のチャンネル音声を分かれた状態でも送っていることです。

Danteで映像・音声を扱うには対応した機材やソフトウェアが必要です。
今回用意したDante対応のソフト・機材を紹介します。
Dante Virtual Soundcard(DVS)
これはDanteで音声を入出力するための、PC上の仮想オーディオデバイスです。
インストールをすれば、Dante対応機材を接続しなくても、PCの音声の入出力デバイスにDanteが現れます。
今回の構成では、録音PCではDante Virtual Soundcardを使い、音声を入力していました。


PCでは事前にDante Virtual Soundcardの仮想デバイスを起動しておく必要があります。
起動ソフトでは、使用する音声チャンネル数や遅延量、ネットワーク端子などを選択することができます。

こちらのソフトウェアは有償です。
ライセンスの種類が色々とありますが、一度認証すると端末を移行できないライセンスが$49.99、端末の移行可能なライセンスが$99.99からになります。
スタンダードライセンスの方だと最大64ch × 64chの音声を入出力することができます。他にもより多くのチャンネル数、細かな設定を持ったPro版も存在します。
Dante AVIO 2CH USB-C I/O Adapter
これはUSB経由でDanteの音声を入出力するためのインターフェイス機材です。

Dante Virtual Soundcardは仮想デバイスでしたが、こちらは物理的に挿したら認識されるオーディオデバイスです。
音声再生ソフトなどで出力先を選ぶ際に「Dante USB I/O Module」として選択ができます。

PCの標準ドライバーで動作してくれるため、ひとまずこのアダプターを繋げればDanteで音声を入出力できるようになります。
Dante Virtual Soundcardをインストールしておくことができない端末、例えば出演者のPCなどに使う際には便利そうですね。
ただし、こちらが扱える音声は2ch × 2chのみになります。
YAMAHA DM3
Danteに対応した、YAMAHA社の音声ミキサーです。
小中規模の利用を想定したデジタル音声ミキサーで、大きなタッチパネルのモニターと9つのモーターフェーダーを搭載しています。
個人的には最近自分の周囲で見聞きすることが増えており、この規模のデジタルミキサーの標準的な機種のように感じています。

DM3はアナログ音声を16、USB音声を18、Dante音声を16入力できますが、ミキサーとして同時処理できる入力チャンネル数は16入力までのようです。
そのため、実際に使う16の音声入力を選び、パッチ画面で割り当てて使う流れです。今回も再生している楽曲音声の2chを、DM3のch1・ch2に割り当てて使いました。

出力についても、各出力先に任意の音声を割り当てていくことができます。
Danteの出力は最大16ch扱うことができますが、その内6chに音声を割り当てていました。
入力していた音楽再生で2ch、マイク音声で2ch、ミックス音声で2chです。これをPCで入力して録音をしていました。

Dante Controller
これはネットワーク上のDante音声の紐付け設定を行うソフトです。
映像規格のNDIの場合は、各端末で受信する映像を選択する方式でした。Danteの場合は、その設定をこのソフトウェアで一括的に行う形です。
送り側と受け側のクロスする点をクリックすると、緑のチェックマークが付いて割り当てが完了します。
このソフトウェアはAudinate社から無料で配布されています。

ネットワークの設定
Danteに限らず、ネットワーク伝送はケーブルを使った伝送と感覚が異なります。ただ、Danteは小中規模の運用であれば、比較的シンプルなネットワーク構成も前提にしている印象があります。
というのも、Danteはルーターの無いネットワーク構成も前提にしています。各端末をネットワークスイッチに接続した時に、自己割り当てしたIPアドレスの運用も想定されています。
更に、ネットワークスイッチを中心とした「スター型」以外にも、スイッチを使わないデイジーチェーン型のネットワーク構成も可能です。

デイジーチェーンは接続台数が増えると影響が出てくるようですが、ネットワーク機材不要で運用ができるのは驚きました。
デイジーチェーン対応の機材だとDante用のLAN端子が二つあり、デイジーチェーンの機能をONにする機能が搭載されているようです。
本来二つの端子があるのは冗長構成のためで、基本的にはネットワークスイッチを使うことが推奨のようです。とは言え、小規模構成だと機材を減らせて嬉しいですね。


端末同士が同じネットワーク上にある必要があるのはDante以外でも同じですが、Danteはそのハードルが一段低い印象を持ちました。ネットワーク知識のない初心者でも、小規模な構成ならば難易度は低そうです。
各端末が同一のネットワークになっていれば、あとはDante Controllerからポチポチと割り当て設定をしていきます。各端末は自動的に検知してくれるので、これも難しい点はあまりありませんでした。
Danteを触ってみた第一印象
今回初めてDanteを使ってみましたが、映像規格のNDIに比べると難易度が低いと感じました。
これは第一に映像に比べてデータ量が少ないので、ネットワーク帯域を圧迫しづらいことがあります。加えて、シンプルなネットワーク構成も許容する規格になっていることも大きいです。
また、安定性も高い印象です。規格として成熟しているからか、データ量が少ないからなのか、信頼性高く使えそうな感覚を持ちました。
一方で、映像規格のNDIと比べると、Danteを使い始めるにはわりとお金がかかることも分かりました。
NDIは公式から複数のツールが公開されており、また標準的な規格であればライセンスフリーで対応ツールを開発することができます。そのため、最初は無料のソフトを組み合わせて使い始めることができました。
一方のDanteは有償のライセンスか、対応機材を購入しないと使い始めることができません。ライセンスビジネスとして、ビジネスモデルが大きく異なることを感じました。
以上、初めてDanteを試してみた学びの紹介でした。
今回は自宅で試した検証までの内容だったので、いずれ実際の現場でも試してみたいと思います。また、遅延の感覚なども試せていないため、いずれDante経由でスピーカーに出す構成を用意して試してみたいです。
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