【詩】幻影が実感になるとき
むさ苦しい蝉のコーラスと、
おびただしい抜け殻の散らばりに、
夏が機嫌を悪くしてへそを曲げた。
木の幹をじっとり見つめれば、
羽ばたくべきときを待つ候補生が、
ぎっしり、ぎっしり、集まっている。
大樹の頂上を見上げれば、
のそのそ地面を這うべきものが、
いちめんに葉をむさぼっている。
長い眠りから覚め、
透明の羽をひろげるときには、
ぴかぴか、ぴかぴか、光り尽くすだろう。
この矮小な目には見えない、
無数のかすかな生命の脈動が、
いたるところで押し合って、
空気中にところ狭しと広がり、
いずれ弾けるときを待っている。
落ちた青い葉をみしみしと踏みしめれば、
夏の幻影がこの胸に現実として迫ってきた。
