【音響システム】YAMAHA卓からAVID S6Lへ乗り換える前に知っておきたいAVBスイッチ選定
YAMAHAのデジタルミキサーからAVID VENUE | S6Lへ乗り換える際は、コンソール本体だけでなく、ネットワークスイッチの見直しも必要です。
YAMAHA環境で使用していたDante向けスイッチが、S6LのAVBネットワークでもそのまま使えるとは限りません。卓は新しくなったのに音が通らない、という展開は、現場のサプライズとしては刺激が強すぎます。
この記事では、スイッチの入れ替えが必要になる理由と、LuminexやNETGEARを選定する際のポイントを整理します。
まず結論:既設スイッチの流用を前提にしない
S6Lへの移行では、既設のYAMAHA/Dante環境で使っていたスイッチを無条件に流用しないことが重要です。
確認すべきなのはメーカー名だけではありません。使用中の型番が、S6LのAVB要件、Avidの認定構成、指定ファームウェアを満たしているかを確認します。
実務上は、Avidが案内する認定機種の中からLuminexまたはNETGEARのスイッチを選ぶのが確実です。
YAMAHA環境とS6Lでは音声ネットワークが異なる
YAMAHAの業務用音響システムは、Danteを中心に構成されるケースが多くあります。そのため、既設スイッチもDante向けの条件を基準に選ばれていることが一般的です。
一方、S6LのE6LエンジンやStage 64などの接続にはAVBが使われます。
DanteとAVBは、どちらもネットワーク経由で音声を扱いますが、必要な規格やスイッチ側の動作条件は同じではありません。「LANケーブルが刺さるので大丈夫」という判断は、見た目ほど頼りにならないのです。
AVB対応スイッチが必要な理由
AVBでは、リアルタイム音声を安定して伝送するために、時刻同期、帯域予約、トラフィック制御などを適切に扱う必要があります。
Dante環境で問題なく動いていたスイッチでも、AVBに必要な機能がなければ、S6L用ネットワークには適合しません。また、一般的なAVB対応をうたう製品でも、S6L向けの動作確認や認定が取れているとは限りません。
条件を満たさないスイッチを使うと、次のような問題につながる可能性があります。
音切れが発生する
機器を認識しない
A系/B系の冗長化が成立しない
本番前に担当者の表情だけが急速に険しくなる
最後の項目は仕様書には載っていませんが、できれば避けたいところです。
「YAMAHA製はすべて非対応」ではない
ここは誤解しやすいポイントです。
「YAMAHAブランドのスイッチはすべてAVB非対応」と一括りにするのではなく、具体的な型番ごとに対応規格と認定状況を確認する必要があります。
判断基準は、ブランド名ではなく、規格、型番、ファームウェア、設定、ネットワーク構成です。
ただし、YAMAHA卓と組み合わせていたDante向けスイッチをS6Lへそのまま転用できるケースは限定的です。導入計画では、スイッチの更新を含めて予算と仕込み時間を確保しておく方が安全です。
Avid認定スイッチの候補
Avidは、S6Lコンポーネント間を接続する外部AVBスイッチとして、LuminexおよびNETGEARの対応機種を案内しています。
Luminexを選ぶ場合
Luminexは、ライブイベントや放送設備での運用を意識したプロAV向けネットワーク製品を展開しています。
S6Lで使用する際は、Avidの認定機種と対応ファームウェアを確認し、指定されている冗長スター構成などに沿って設計します。「AVB対応」の表記だけで判断せず、機種と条件をセットで確認することが大切です。
NETGEARを選ぶ場合
NETGEARでは、AV LineのM4250シリーズなどにS6L向けの認定機種があります。
導入時はAVBを有効にするだけでなく、NETGEAR AV UIで「Avid S6L Network」プロファイルを読み込み、スイッチをA系またはB系として正しく設定します。
A系とB系は、物理的にも論理的にも分離する必要があります。冗長化のための2系統を途中で仲良く合流させると、冗長化の意味まで仲良く消えてしまいます。
スイッチ選定のチェックリスト
選定と設計の際は、少なくとも以下を確認します。
Avidの最新の認定スイッチ一覧に型番が掲載されているか
使用するVENUEソフトウェアのバージョン条件を満たしているか
指定されたスイッチのファームウェアを使用しているか
Avidまたはメーカー指定の設定プロファイルを適用しているか
A系/B系を正しく分離できるか
必要なポート数とアップリンク速度を満たしているか
光接続に対応するトランシーバーを選定しているか
電源冗長性、コネクター、ラック実装性が現場に適しているか
予備機、予備ケーブル、設定データを準備しているか
制御用ネットワーク、インターネット接続、Danteなど、別用途のトラフィックを安易に同居させないことも重要です。VLANで分離する場合も、S6Lの認定構成とメーカーの指示を優先します。
乗り換え時の見積もりに含めるもの
S6Lへの移行費用を考えるときは、コンソールとI/Oだけでなく、次の項目も含めておくと安心です。
Avid認定AVBスイッチ
銅線および光ケーブル
対応トランシーバー
A系/B系の冗長ネットワーク
ラック、電源、UPS
予備スイッチと予備ケーブル
設定、検証、リハーサルの作業時間
既設スイッチを流用できる前提で見積もると、導入直前に機材費と作業時間が増える可能性があります。乗り換えるのは「卓」だけではなく、「音声ネットワークを含むシステム全体」と考えるのが現実的です。
まとめ
YAMAHA卓からAVID S6Lへ乗り換える際、Dante向けに選定された既設スイッチを、そのままS6LのAVBネットワークへ流用できるとは限りません。
重要なのは、YAMAHA製かどうかではなく、S6LのAVB要件とAvidの認定構成を満たしているかどうかです。
安定したシステムを構築するには、LuminexやNETGEARのAvid認定スイッチを選定し、指定ファームウェア、設定プロファイル、冗長構成に沿って設計します。
スイッチは卓より目立ちませんが、止まったときだけ主役級の存在感を発揮します。だからこそ、乗り換え計画の早い段階で選定しておくことをおすすめします。
参考資料
Avid「Which AVB Network Switches are qualified for connecting S6L components?」
https://kb.avid.com/pkb/articles/compatibility/Which-AVB-Network-Switches-are-qualified-for-connecting-S6L-components
Avid「VENUE S6L Installation Guide」
https://resources.avid.com/SupportFiles/VENUE/VENUE_S6L_Installation_Guide.pdf
