ごめん、と言わせた夜に
「少し頭冷やす」
そう言い残して部屋の明かりを落とした。
闇に目が慣れていくにつれて低く唸るエアコンの風音と、規則正しく響く時計の秒針の音だけが部屋を満たしていく。
些細な冗談に心がチクッと痛み、思わず尖った言葉をこぼしてしまった。
悪気がないのは分かっていたのに自分の狭い心が許せなかったのだ。
すぐに返ってきたのは、身を縮めるような謝罪の言葉だった。
その文字を見た瞬間、振り上げたはずの感情はあっけなく熱を失っていく。
残ったのは冷えた素足の裏からじわじわと這い上がってくるようなひどい寂しさだけだった。
怒りはとうに消えている。
枕元の黒い画面をそっと指で叩いてみても通知の光はひとつも灯らない。
朝まで待てばいい。
明るくなれば何事もなかったように話せる。
そう言い聞かせても暗がりの中の時間はちっとも進まない。
静まり返った部屋の底でただ彼女のぬくもりばかりを探している。
歌詞
少し頭 冷やすから
そう言って
僕は明かりを消した
暗闇に慣れた目で
何もない天井を見てる
エアコンの低い音と
秒針だけが夜を刻む
ほんの些細な冗談だった
悪気なんてないと知ってた
それなのに胸のどこかが痛くて
優しくできなかった
君から届いた
短い「ごめんね」
その文字を見た瞬間
怒りなんて
どこかへ消えてしまった
ごめん、と言わせた夜に
僕は君に会いたくなった
傷ついたのは僕なのに
どうしてこんなに寂しいんだろう
言いたかったのは
そんな言葉じゃない
君を遠ざけたかったわけじゃない
ただ少しだけ
僕の痛みに
気づいてほしかっただけ
枕元の黒い画面を
意味もなく何度も触って
灯らない通知の向こうに
君の気配を探している
朝になればきっとまた
いつものように話せるから
そう言い聞かせて目を閉じても
時計の針は進まない
怒りはもうない
とっくに消えてる
残っているのは
冷えた足元から這い上がる
名前のない寂しさだけ
ごめん、と言わせた夜に
本当は僕が謝りたかった
傷つけられたはずなのに
君を傷つけたことが苦しい
「少し頭を冷やす」なんて
格好つけて背を向けたけど
本当はずっと
この暗闇で
君のぬくもりを探してた
ねえ
君も今
眠れずにいるのかな
僕が残した言葉を
何度も思い出しているのかな
だったらもう
意地なんていらない
正しいのが
どっちかなんてどうでもいい
君の「ごめんね」で
終わらせたくない
ごめん、と言わせた夜に
僕はやっと気づいたんだ
君に勝ちたいわけじゃない
分かってほしいだけだった
傷ついたことも
寂しかったことも
全部ちゃんと話せばよかった
明かりをつけて
震える指で
君の名前を開いて
たった一言
僕も送るよ
「ごめんね」
少しして
暗い部屋の中
小さく画面が光った
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