中央省庁はどのようにコンサルを活用しているのか|2019〜2026年の調達データで見る発注額とファーム別動向
中央省庁は、政策調査、制度設計、DX推進、実証事業、PMO(プロジェクト管理支援)などを外部のコンサルティング会社やシンクタンクに何をどれくらいの金額発注しているのでしょうか。
調達ポータルとは、中央省庁などの政府機関が行う入札・契約・調達情報を検索・確認できる国の公式サイトです。
今回は、調達ポータルで公開されている「落札実績情報オープンデータ」を使い、2019年度から2026年度(第一四半期)までの契約を集計しました。年度別の変化、省庁別の偏り、企業ごとの受注構造、実際の案件名まで見ていきます。
本稿では、NTTデータ、NEC、富士通、IBM、日立、NTTドコモビジネスなどのSI/ITコンサル隣接企業は、レポート対象から除外しました。これらを含めると、行政システムの開発・運用・機器賃貸借が大きく入り、「コンサル・シンクタンクへの発注」というより「行政IT調達」の分析に近づくためです。
本件での対象は、アクセンチュア、デロイト、PwC、EY、KPMG、BCG、マッキンゼー、アビーム、NRI、三菱総合研究所、MURC、みずほリサーチ&テクノロジーズ、日本総研、NTTデータ経営研究所、各種調査会社など、主要なコンサル・シンクタンク・調査会社に会社名で一致した契約です。対象企業が受託した契約を全件集計しています。
全体像:2019〜2026年度で6,440.5億円、7,734件

2019〜2026年度の対象契約は7,734件、契約金額は6,440.5億円でした。2026年度は取得時点の途中値なので単純比較はできませんが、2020年度、2023年度、2024年度、2025年度に1,000億円規模の水準が見えます。
2020年度は1,243.6億円と大きく、コロナ対応や給付金・行政デジタル化関連の大型委託が影響しています。一方で、2023年度以降も1,000億円前後が続いており、一過性の危機対応だけではなく、政府のDX、医療・介護・労働、通信、環境、GX、AI、サイバーセキュリティなどの政策領域で、外部専門会社への発注が継続的に使われていることが分かります。
グラフ化はしていませんが、件数についても2019年度の766件から2025年度の1,426件へ増えています。大型案件だけでなく、中小規模の調査、検討、実証、工程管理支援が積み上がっている構造が見えます。
2025年度の企業別ランキング:首位はアクセンチュア、僅差で三菱総合研究所

2025年度だけを見ると、アクセンチュアが242.6億円で最大、三菱総合研究所(MRI)が230.8億円で続きます。3位はデロイトの121.5億円、4位はPwCの97.3億円、5位はNRIの87.1億円でした。
ただし、同じ上位企業でも中身はかなり違います。アクセンチュアは40件で242.6億円、平均単価は6.1億円です。防衛省、厚生労働省、内閣官房、デジタル庁などの大型案件が金額を押し上げています。
一方、三菱総合研究所は203件で230.8億円、平均単価は1.1億円です。総務省の通信・周波数関連、厚生労働省の医療・介護・予防接種・自治体検診DX、環境省の制度運営支援など、政策調査・実証・PMOを広く積み上げる形です。
デロイト、PwC、EY、KPMGなどのBig4系は、件数が多い一方で平均単価は0.3〜0.6億円台に収まる企業が多く、制度設計、工程管理、調査、業務要件定義のような支援が多数あります。BCGやA.T.カーニーは件数は少ないものの、1件あたりの金額が大きく、戦略・制度設計・AI評価環境などの大型テーマに入りやすい傾向が見えます。

アクセンチュアやA.T.カーニーは少数大型寄り、MRIやデロイトは多件数積み上げ寄り、NRIやPwCはその中間に位置します。
省庁別:総務省、厚労省、防衛省、経産省が大きい

2025年度の省庁別では、総務省が214.2億円で最大でした。通信、電波、偽・誤情報対策、地域DX、AI、放送コンテンツ、人材育成など、技術・制度・社会実装が絡むテーマが多く、三菱総合研究所、BCG、PwC、デロイト、NRIなどが上位案件に入っています。
2位は厚生労働省の186.0億円です。医療機関情報、G-MIS、医療国家試験、労災、介護、予防接種、自治体検診DXなど、国民向け行政サービスと現場業務のデジタル化に関わる発注が目立ちます。
3位は防衛省の140.3億円です。アクセンチュアの「リスク管理枠組みの統一的な制度運用を確保するための支援役務(認証・監査)」が121.3億円と大きく、同省の金額を大きく押し上げています。
4位の経済産業省は137.1億円で、件数は348件と最多です。GX、サイバーセキュリティ、産業政策、プラットフォーム規制、企業活動基本調査など、多数の政策テーマに分散して発注されています。総額だけでなく件数を見ると、経産省は「多テーマ・多件数型」の発注主体といえます。

省庁×企業のヒートマップを見ると、総務省×MRI、総務省×BCG、厚労省×アクセンチュア、厚労省×MRI、経産省×NRI、デジタル庁×PwC・デロイト、防衛省×アクセンチュアといった組み合わせが特徴的です。
案件内容:調査研究だけでなく、実証・PMO・DX設計が大きい

案件名から内容を粗く分類すると、調査研究・政策分析、実証事業・モデル事業、業務改革・BPR/PMO、DX・システム構想/設計支援が大きな柱であるようです。
ここで注意したいのは、今回の分類は「抽出の条件」ではなく、抽出後の案件名を読むための補助分類だという点です。たとえば「調査研究」という言葉が入っていても、実態としてはシステムやデータ基盤の検討を含むものがあります。逆に「システム」「運用」という言葉があっても、単純な保守ではなく、制度設計や工程管理、要件定義を含むものがあります。
実際に何へ発注しているのか:2025年度の大型案件
2025年度の大型案件を見ると、いくつかのテーマが浮かびます。
1つ目は、防衛・リスク管理・サイバー領域です。防衛省のリスク管理枠組みに関するアクセンチュア案件は121.3億円で、今回の対象の中では最大でした。単なる調査ではなく、制度運用や認証・監査の支援に大きな予算が付いています。
2つ目は、通信・電波・地域DXです。総務省では、オール光ネットワーク、自動運転通信、V2X通信、偽・誤情報対策、地域課題解決モデルなどの案件が並びます。これは通信行政が、技術実証と制度検討を一体で進める領域になっていることを示しています。
3つ目は、医療・介護・労働行政のデジタル化です。厚生労働省では、G-MIS、医療国家試験オンライン手続、労災申請、自治体検診DX、予防接種事務デジタル化、介護情報連携などが見られます。行政システムそのものはSI企業が担う部分も大きいですが、今回の対象企業にも、構想、工程管理、実証、運用改善の支援が発注されています。
4つ目は、AI・GX・プラットフォーム規制です。内閣府のAI評価環境、経産省のGXリーグ、耐量子計算機暗号、デジタルプラットフォーム透明性評価など、政策テーマとして新しく、専門知識と制度設計が必要な領域で外部委託が使われています。
2019〜2026年で、どの企業がいつ伸びたのか

企業×年度で見ると、毎年安定して多くの案件を受ける企業と、特定年度の大型案件で金額が跳ねる企業に分かれます。
三菱総合研究所、デロイト、PwC、NRI、MURC、みずほRTなどは、複数年度にわたり案件が積み上がっています。省庁の政策調査、制度運営、実証、PMO、業務要件定義のような継続的な需要を拾っているためです。
アクセンチュアは、年度によって大型案件の影響が大きく出ます。2025年度は防衛省、厚労省、内閣官房、デジタル庁などの案件で首位になりました。BCGやA.T.カーニーのような戦略ファームも、件数より大型テーマへの関与で金額が動きます。
この違いは、発注側の使い方の違いでもあります。毎年必要な制度運営・調査・PMOにはシンクタンクやBig4系が入りやすく、特定の政策テーマや大型改革では総合コンサルや戦略ファームが大きく入ることがあります。
このデータから読めること
今回の分析から見えるのは、中央省庁の外部委託が「資料作成の外注」だけではなく、政策の設計、制度運用、技術実証、DX構想、工程管理まで広がっているということです。
特に2025年度は、総務省の通信・AI・地域DX、厚労省の医療・介護・労働行政DX、防衛省のリスク管理、経産省のGX・サイバー・産業政策が大きく、社会課題や行政課題が複雑になるほど、外部専門会社の使い方も多層化していることが分かります。
最後に注意点ですが、調達ポータル以外の経路でも、中央省庁からのコンサル発注は存在します。詳細は各府省が別に公表している契約情報を確認するのが良いでしょう。また、会社名ベースの抽出なので、対象企業リストに入っていない公益法人、大学、専門調査機関、業界団体による調査研究は含まれていません。
それでも調達ポータル経由の案件は少なくないため、全体の傾向は大まかにつかめたのではないでしょうか。
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