まだ数字になっていない熱|データが切り捨てる「兆し」の掴み方
【ストーリー】仕入れの読み
「お前の店の倉庫じゃないんだよ」
近隣店舗のオーナーにそう言われたとき、田島は何も言い返せなかった。
カフェチェーンのフランチャイズオーナーになって半年。
仕入れの読みは、まだひどいものだった。
週末にミルクが足りなくなり、雨の日に焼き菓子を余らせ、平日の昼にサンドイッチを切らす。足りなくなるたび、田島は頭を下げて近くの店舗に借りに行った。
「だったら最初から多めに発注しろよ」
そう言われても、仕方なかった。
多めに発注すれば余る。
控えめに発注すれば足りなくなる。
その加減が、どうしても読めなかった。
そんなある日、本部から新しいキャンペーンの案内が届いた。
女の子向けアニメとのコラボ商品。
限定ドリンク、描き下ろしカップ、アクリルチャーム、ステッカー付きセット。
ただし、条件があった。
コラボアイテムは事前予約生産。
店舗ごとの買い取り。
つまり、発注した分は、自分の店で売り切らなければ、そのまま自腹になる。
そのアニメの名前を聞いても、オーナー会議の空気は薄かった。
「最近ちょっと話題らしいですよ」
「女の子向けでしょ?」
「うちの客層とは違うな」
「本部推奨くらいでいいんじゃない?」
多くの店は、自腹リスクを考えて推奨数量で止めた。
しかし田島だけが、推奨数量の10倍を予約した。
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