「人は人である」ノルウェーとニルス・クリスティの挑戦|犯罪学教授が解説
立正大学教授 丸山泰弘(犯罪学・刑事政策)が、ニュースでは聞けない犯罪学、刑事政策の話について、分かりやすく解説します。最新回を配信しました。今回のテーマは「ノルウェーの犯罪学者、ニルス・クリスティ」です。
ぜひ、spotify、amazon music、apple podcast、もしくはyoutubeで番組のフォローをお願いします!
厳罰化を進めていたノルウェーが、なぜ「世界一犯罪者に優しい国」と言われるようになったのか。それをけん引した犯罪学者・ニルス・クリスティについて、犯罪学・刑事政策教授が解説します。
スタッフからひとこと
ツミナハナシでわりとしょっちゅう出てくる国「ノルウェー」。その理由は「世界一犯罪者に優しい国」と「再犯も少ない国」を両立するところです。その流れをけん引したのが今回お話しする、犯罪学者・ニルス・クリスティです。クリスティ先生は、私も、仲間たちも、とても尊敬する方のお1人です。本編でお話ししているように、2011年、ノルウェーも大きな哀しみに包まれる中、来日し、龍谷大学の「矯正・保護総合センター」開設記念シンポジウムでお話をしてくださいました。満員の会場で、「本当に良かった」と満面の笑みをこぼしていた恩師達の顔は今でも忘れられません。この時の様子は、YouTubeで観ることができます。リンクをはっておきますので、ぜひ、ご視聴ください(冒頭でペットボトルの蓋をあけているのは私です(笑))。なので、クリスティ先生とノルウェーについて語るのはツミナハナシの最終回にしよう、と思って大切にしていました。が、思いがけず、3年も続けることができ、できれば4年目も…となってくると、この大切なテーマをずっと語れないままにすぎるのもちょっとどうなの?!ということで、今回、満を持しての登場となりました。
ノルウェーといえば、もう一つ紹介したいのが、『ゆかいなどろうぼうたち』(Gakken,1966年)。本編で山口さんが「カルデモンメ」と言っているのは、この本を元にしたミュージカル児童劇「カルデモンメのゆかいなどろぼうたち」のことです(2013年、2015年に龍谷大学のプロジェクトで上演しました)。カルデモンメとは物語の舞台となるノルウェーの街のこと。音楽にあふれ、人びとが平和に暮らすこの街である日、お肉やパンが盗まれていきます。どうやら犯人は、町はずれに住んでいる3人のどろぼうのようで…。カルデモンメの人たちは、彼らにどんなふうに対応するのでしょうかというお話です。小さい時からどんなお話を聴いて育つかで、国のありようって変わりますよね。長く愛されているこの本を読むと、ノルウェーがこんな国であることを選ぶようになった一端も理解できる気がします。どんな大人になりたいんだったかなと、とっくに大人になった今も時おり手に取る、大好きな1冊です。どこがいいとか、ここがいいとか書き出すと、読む楽しみを奪ってしまうのでここではあえて書かないでいておきます。
本つながりでエンタメで紹介した森達也さんのご著書もここで。ご紹介した森さんの映画『A』の公開は1997年、書籍の出版は2002年です。森さんがクリスティ先生から「人は人である」と書いた色紙を受け取った『未来への提言』の放送が2009年なので、森さんはクリスティ先生からの宿題に先に応えていた、といえるのではないでしょうか。詳しくは別の機会にせねばですが、森達也さんはずっと、「人は人だ」ということをテーマにされてきていると感じます。エスパーも、天才作曲家も、殺人集団も、外野が勝手にそう呼び、距離をとるだけで、私ともあなたとも、同じ人間。『A』『A2』で興味を持たれた方は、『A―マスコミが報道しなかったオウムの素顔』(2002年,角川書店)、『A2』(2002年,現代書館)、『A3』(2010年,集英社インターナショナル)と『A4または麻原・オウムへの新たな視点』(2017年,現代書館)という書籍にも手をのばしていただきたいです。※アフィリエイトは入りませんので、ご自分のお好みの入手方法でぜひどうぞ。(み)
こんな話をしています
・休暇を取って帰宅する受刑者
・社会に近い刑務所のあり方
・加害者家族も支える
・ニルス・クリスティが日本に来た理由
・「憎悪には愛を」ノルウェーの選択
・理想を追い続けるということ
★spotifyはこちら
※apple podcast、amazon musicでも配信しています。
★podcastで話したりなかった分をYouTube LIVEで話しています。
龍谷大学犯罪学研究センター(旧)が2011年にクリスティ先生が来日された際の動画を公開しています。
紹介した作品
『A』(1998年/日本/カラー)
『A2』(2002年/日本/カラー)
監督:森達也
ツミナハナシを話すヒトたち
丸山泰弘:立正大学法学部 教授/知的エンターテインメント・クリエイター山口裕貴:フリーランス(パラリーガルなど)
南口芙美:合同会社黒子サポート 代表
※3人とも、一般社団法人 刑事司法未来 理事
出てきた用語・人物
ニルス・クリスティ
修復的司法(Restorative Justice)
調停委員会
加害者家族
北欧犯罪学
もっと知りたい
ニルス・クリスティについて
配信で紹介しているクリスティ先生のご著書は『刑罰の限界』(1987年,新有堂)。先生の理論と思想が詰まった1冊です。英語ができない私ですが、英語版も買いました。いつか、じっくり、しっかり読みたいと、今も夢に見て抱きしめている唯一の洋書です。他にも、『人が人を裁くとき:裁判員のための修復的司法入門』(2006年,有信堂高文社)『司法改革への警鐘 刑務所がビジネスに』(2002年,信山社)『障害者に施設は必要か 特別な介護が必要な人々のための共同生活体』(1994年,東海大学)があります。『人が人を裁くとき』以外は入手しにくくなってしまいましたが、ぜひ図書館等で手に取ってみていただきたいです。
クリスティ先生が直接ご執筆されたわけではないですが、番組でも紹介した『囚われし物たちの国』(2020年、紀伊国屋書店)の一章がクリスティ先生の話に割かれています。『未来への提言』もオンデマンドでは配信されていないので、概要を知りたいという方は是非こちらの書籍を手に取って下さい。かなり詳しく書かれています。その他、以下の書籍等を参照にしました。
『未来への提言 「犯罪学者 ニルス・クリスティ~囚人にやさしい国からの報告~」』
出演:ニルス・クリスティ、森達也
2009/日本/カラー
シンポジウム開催報告「人間を大切にする刑事政策を求めて~ノルウェーの犯罪学の実験~」(龍谷大学矯正・保護総合センター通信、2012年)
https://rcrc.ryukoku.ac.jp/about/pdf/rcrc_news_201202.pdf
「ノルウェーの刑事政策」(日本弁護士連合会、第54回人権擁護大会・シンポジウム 第1分科会別冊・海外調査報告書、2011年)
nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/54th_keynote_report1_2.pdf
「Seeing the Other」(『犯罪社会学』№36、2011年)
「特集1 シンポジウム「人間を大切にする刑事政策を求めて―ノルウェー犯罪学の実験―」(『龍谷大学 矯正・保護総合センター研究年報』№1、2011年)
これまでに取り上げたノルウェイの話
「世界一人道的な刑務所」といわれるノルウェイの刑務所や、被害者と加害者が対話の中から事件解決をめざす「修復的司法」については、過去の番組内で何度か触れています。この機会に合わせてぜひお聴き下さい!
(※ #58 2025年10月14日配信/構成:合同会社黒子サポート)
番組初の書籍化『マルちゃん教授のツミナハナシ 市民のための犯罪学』発売決定!
わかりやすく、親しみやすく“罪”と“罰”を考える。ポッドキャスト番組「丸ちゃん教授のツミナハナシ」が書籍化されます! 是非お買い求めください。
番組MC・丸山泰弘 初の新書『死刑について私たちが知っておくべきこと』発売中!
「丸ちゃん教授のツミナハナシ」メインパーソナリティーの丸山泰弘が、ちくまプリマ―新書(筑摩書房)にて、初めての新書『死刑について私たちが知っておくべきこと』が発売されます。是非お買い求め下さい。
番組フォローお願いします!
「ご質問」「ご感想・ご意見」「出演者へのメッセージ」「解説してほしいエンタメ作品」などみなさんからのメッセージをお待ちしています。メッセージフォームよりお送りください。
・メッセージフォーム
「丸ちゃん教授のツミナハナシ-市民のための犯罪学-」
・一般社団法人刑事司法未来
