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【保安処分(前編)】責任能力がなければ「お咎めなし」か?|犯罪学の視点から語る

立正大学教授 丸山泰弘(犯罪学・刑事政策)が、ニュースでは聞けない犯罪学、刑事政策の話について、分かりやすく解説します。過去のエピソードをアップしています。今回のテーマは「保安処分」です。
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 精神障害等により責任が問えない犯罪行為をどう扱うか? 「保安処分」という考え方について、犯罪学・刑事政策教授が解説します。


スタッフからひとこと

 何らかの事情で、自分の行動に自分で責任を取ることができない(問うことができない)人たちに対する対応の1つである「保安処分」。ツミナハナシ初めての前・後編となりました。前編では、まずは犯罪の成立と責任能力の考え方について語っています。「犯罪とは構成要件に該当し違法・有責な行為」というのは、はるか4半世紀以上前、法学部に入り、法学入門だったか、刑事法入門だったか、呪文のように唱えなさい、と学びました。犯罪が成立するとはどういうことか、この短い呪文の単語1つ1つにとんでもなく広くて深くて分厚い議論があります。その中で、今回は「有責」について、ほんの少し、議論の入り口の入り口のお話しです。
 日々のニュースの中で、とりわけ、人が亡くなるような事件が起きた時、「精神鑑定を実施」と報道されると、「無罪になるなんて!どうせ嘘だ!」等の怒りのコメントがSNSで飛び交っているように感じます。テレビ番組でもまだ、そういうコメントをする人もいるようです。実際には、責任能力がないからといって無罪になる人はごく少数ですし、不起訴処分になる人もごく一部です。そして、刑罰を問われない人たちはその後、医療観察法という仕組みで手厚い医療を受けることになっています。手厚い治療が受けられるという面がある一方で、いつ、どうやって退院できるのか、受刑とは異なりますので、期限が明確ではなく、難しいことも多いように聞いたことがあります。
 もちろん、医療観察法の手続きで治療をしたからといって、すべての問題が解決するわけではありませんし、再犯されることが絶対ないなんてことは言えません。が、責任能力とは何か、という話の前に、そもそも、無罪になる人なんてそんなにいないよ…もし起訴されなくても、自由になるわけじゃないよ…それをふまえてくれよ…と暗澹たる気持ちになります。
 そして、責任を問うことができる人に対してのみ刑罰を与えることとしている、責任主義は、近代刑法の基本です。議論は深く難しく、一般社会での”感覚”との違いも大きく、刑法の授業で悩みまくるテーマの1つです。また、じっくりゆっくりお話しできればと思います。
 最後に、エンタメでは『カッコーの巣の上で』をご紹介しました。最後のシーンが希望に満ちたシーンとして紹介されることも多い映画ですが、私はなかなかそのように思えず…観るたびに辛い映画です。みなさんはどんな風にご覧になったでしょうか。先日、この映画や、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の元になったであろう、『チチカット・フォーリーズ』(アメリカ・ドキュメンタリー界の巨匠フレデリック・ワイズマンが1967年に発表した、精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を克明に記録した作品)を観ました。これはなかなか強烈なドキュメントで、刑務所や精神病院のありように、1日なんとなく暗い気持ちで過ごすこととなりました(日曜日の朝10時から満席でした(笑))
 というわけで、今回の話で一番楽しくエキサイティングに観れるのは『ハンニバル・レクター』ですね。レクター博士が隣に住んでいていいかと考えると苦しくなるので…それはおいといて、『羊たちの沈黙』とともにお楽しみいただきたいと思います。(み)

こんな話をしています

・オープニング
・法律で犯罪行為を決める3つのフィルター
・責任が問えないと犯罪は成立しない
・犯罪が成立しない責任能力がなかったら、お咎めなし?
・目的と実施方法で変わる保安処分あれこれ
・「将来の危険性」って誰が決めるの?
・【エンタメ紹介】「カッコーの巣の上で」

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紹介した作品

『カッコーの巣の上で』(原題:One Flew Over The Cuckoo's Nest) 
監督:ミロス・フォアマン
原作:ケン・キージー
出演:ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー、ダニー・デヴィート
1975年/アメリカ/カラー


精神障害等(疑含)による犯罪は検挙人員総数の0.7%。『犯罪白書』(令和5年版)
不起訴処分のうち心神喪失が理由のものは0.2%。『犯罪白書』(令和5年版)
心神喪失等で不起訴処分あるいは無罪等になった者は心神喪失者等医療観察制度の対象になる。
『犯罪白書』(令和5年版)
『犯罪白書』(令和5年版)

ツミナハナシを話すヒトたち

丸山泰弘:立正大学法学部 教授/知的エンターテインメント・クリエイター
山口裕貴:フリーランス(パラリーガルなど)
※2人とも、一般社団法人 刑事司法未来 理事

出てきた用語・人物

  • 犯罪行為(構成要件に該当し違法・有責な行為)

  • 保護処分

  • 医療観察法

  • 触法精神障害、心神喪失、心神耗弱

もっと知りたい

  • 『カッコーの巣の上で』について

エンタメで紹介した『カッコーの巣の上で』は一本まるまるお話しています。精神病院を舞台に「異常」とは何かを問うアカデミー賞受賞作。刑期がもうすぐ終わるはずの主人公が、「出れないのか?」と驚くことになったのはなぜなのか。そこはぜひ、番組をお聴きください。

  • 「保安処分」について

日本での「保安処分」がどうなっているのかについては以下のエピソードでお話しています。

(※ #39 2025年8月24日配信/構成:合同会社黒子サポート)

番組初の書籍化『マルちゃん教授のツミナハナシ 市民のための犯罪学』発売決定!

わかりやすく、親しみやすく“罪”と“罰”を考える。ポッドキャスト番組「丸ちゃん教授のツミナハナシ」が書籍化されます! 是非お買い求めください。

番組MC・丸山泰弘 初の新書『死刑について私たちが知っておくべきこと』発売中!

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