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“おもてなし”の国のレイシャル・プロファイリング|犯罪学・刑事政策教授が解説

立正大学教授 丸山泰弘(犯罪学・刑事政策)が、ニュースでは聞けない犯罪学、刑事政策の話について、分かりやすく解説します。新しい回をアップしました。今回のテーマは「レイシャル・プロファイリング」です。
 ぜひ、spotify、amazon music、apple podcast、もしくはyoutubeで番組のフォローをお願いします。

人種、肌の色、民族、宗教、国籍などの外見的・属性的な偏見に基づいて捜査対象として選別する「レイシャル・プロファイリング(Racial profiling)」について、犯罪学・刑事政策教授が解説します。


スタッフからひとこと

 今回は、みなさんと考えたいある事件を紹介します。
 2021年6月、ある女性が3歳の娘を公園で遊ばせていました。園内にいた男性が急に大声を出して長女に近づき突き飛ばしたうえ、「彼女の娘に息子が蹴られた」などと主張し、大声で差別的な発言を繰り返しました。しばらくすると、警察官が6名かけつけました。女性が「ほっ」としたのもつかの間、警察官も女性に対し激しい口調で「どうせお前が蹴ったんだろう」などと発言したそうです(目撃者の証言です。後に警察官は男性が通報したことが分かります)。
 警察官は1時間半、公園に母子をとどめ、その後、任意であることを告げずに母子を警察署へ連れて行きます。警察署での聴取は、トイレ休憩も食事もなく、3時間半続きました(後の国家賠償訴訟で警察官は「食事や休憩が必要であれば自分で言うと思った」と語りました)。3歳の少女は母親から引き離され1人で複数の警察官から聴取を受けることもあったそうです。
 ここまででも結構ひどいですが、話はまだ終わりません。男性から「民事裁判を起こしたいので女性らの氏名や連絡先を教えてほしい」と言われた警察は、女性の氏名や住所、電話番号を伝え、男性はその後、女性の名前などをネットに投稿しました。
 この話、どう思いますか? 3歳の子ども1人を母親から引き離して聴取する、3歳の子どもと母親を4時間半拘束する、連絡先を通報者に伝える、警察への信頼がガラガラと崩れるできごとではないでしょうか。
 さて、この話をここで紹介するのは、この女性が南アジア出身のムスリム女性であったことです。前回の配信では「ムスリムの母子に対して警察官が不当な聴取をした」とさらっと紹介した事件の詳細です。この先、警察の対応の違法性を問う「母子不当聴取裁判」についても続けたいところですが、そこはこちらをご覧ください。
 この母親が、日本語を母語とし、日本ルーツの見た目であったなら、警察官は同じ対応をしたのでしょうか。私はそうではなく、この方の見た目などに対して偏見を持ち、このような対応をしたのだと思っています。(公園での職務質問で警官から「本当に日本語しゃべれねえのか?」という発言があったという目撃証言もあります)
 もちろん、例え相手が犯罪者であったとしても、任意であることを伝えずに警察署に連れて行くことも、何の権利保障もせずに事情聴取することも、休憩なしに聴取を続けることも、乱暴な言葉遣いをすることも、何もかも、大変に不当で違法な対応です。一連の対応には日本の刑事司法のだめなところが詰まっていて、そこに差別・偏見が加えられ、このようなひどいことになったのでしょう。
 みなさんはこの事件をどう考えますか? 警察の対応は、この方の"見た目”に基づく「レイシャル・プロファイリング」とは無関係だといえるでしょうか?  
 警察が信頼されていることは、社会がよりよくあるために必要なことだと思います。そのためには、まず、「レイシャル・プロファイリング」などということは絶対になくしていかないといけません。今回の放送で紹介した東京弁護士会の調査でも、「それはあかんやろう」という事例がボロボロでてきますよね。今日の配信が1人でも多くの人に届き、「それはさすがにあかんやろ」と思ってもらえたら、と心から願っています。(み)

こんな話をしています

・犯罪学のテーマの1つは外国人犯罪の見方であった
・ところで、職質を何回受けたことあります?
・アメリカのレイシャル問題3つの波
・「レイシャル・プロファイリング」によってもたらされる未来
・違法な職質の正し方
・第一言語以外の言語で警察と話すということ

★spotifyはこちら

apple podcastamazon musicでも配信しています。

番組で紹介した資料

・東京弁護士会による外国人にルーツを持つ人に対する職務質問の調査(2021年)

・国連人種差別撤廃委員会によるレイシャル・プロファイリングに関する一般的勧告(2020年)

※今回のエピソードの構成にあたっては、以下の書籍を大変参考にさせていただきました。

紹介した作品

漫画『東京サラダボウルー国際捜査事件簿―』
作者:黒丸
2021年~2024年/講談社
ドラマ『東京サラダボウル』
出演:奈緒、松田龍平、皆川猿時
2025年/NHK

ツミナハナシを話すヒトたち

丸山泰弘:立正大学法学部 教授/知的エンターテインメント・クリエイター
南口芙美:合同会社黒子サポート 代表
※2人とも、一般社団法人 刑事司法未来 理事

出てきた用語・人物

  • 職務質問、不審尋問

  • 警察官職務執行法(警職法)

  • 司法警察活動、行政警察活動

  • 大日本帝国憲法

  • 不審尋問、刑事訴訟法

もっと知りたい

  • そもそも職務質問って何?

触れる機会は多いけど、知っているようで知らない「職務質問」については前回の放送で取り上げています。こちらもセットでお聞きください。

  • 刑務所の中の人種問題

昨年度公開された映画『シンシン/SING SING』。アフリカン・アメリカンの方が多く登場しますが、その背景にある人種的な問題について、「ネタばれ感想編」の方で解説しています。映画はアマプラ見放題に入ったばかりですので、ぜひご覧ください!

  • セレクティブ・サンクションとは

特定の人々を選別(セレクティブ)して処罰や監視を加えることを「セレクティブ・サンクション」といいます。今回と通じるこのテーマについては、こちらのエピソードから。

(※ #64 2026年4月14日配信/構成:合同会社黒子サポート)

番組初の書籍化『マルちゃん教授のツミナハナシ 市民のための犯罪学』発売決定!

わかりやすく、親しみやすく“罪”と“罰”を考える。ポッドキャスト番組「丸ちゃん教授のツミナハナシ」が書籍化されます! 是非お買い求めください。

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・一般社団法人刑事司法未来

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