額の汗をぬぐった、初めてのクレジット
「残高が足りませんので、引き落としができませんでした」
社会人一年目の私にとって、その電話はあまりにも突然だった。
高卒で働き始めたばかりの、ある日の勤務中だった。
電話を取り次いでくれた電話交換手のSさんが、少し怪訝な顔をしていた。
名前しか名乗らない。
用件も言わない。
どうも高圧的な相手らしい。
何だろう。
人に恨まれるようなことはしていないつもりだった。
電話口の男性は、やはり無愛想だった。
クレジット会社だという。
今日は引き落とし日なのに、残高不足で引き落とせなかったらしい。
「えっ?」
頭の中が、一瞬止まった。
そのクレジットは来月払いになると、店員さんから聞いたはずだった。
ただ、「多分」と言っていたような気もする。
そこが、なんとも心もとない記憶だった。
当時の私は、クレジットを使ったことがなかった。
品物を先に受け取り、お金を払うのが後になることに、なぜか少し後ろめたさを感じていたからだ。
それでも、ある日どうしても欲しい服を見つけた。
そして人生で初めて、クレジットカードを使った。
支払いはいつ頃になるのか、店員さんに聞いた。
「来月だったと思います」
そんなやり取りだったと思う。
今思えば、店員さんが一人ひとりのクレジットの締め日まで把握しているわけではない。
自分で確認すればよかったのだ。
でも、社会人一年目の私は、店員さんの言葉をそのまま信じていた。
それにしても、クレジットが落ちないほど高い服を買ったわけではない。
ただ、当時の私は、普通預金にあまりお金を置いていなかった。
普通預金の利息が今よりずっと高く、社内預金はさらに高金利だったから、毎月のお給料は、できるだけそちらへ移していた。
実家から通っていたし、携帯電話を持つのが当たり前になる前の時代だった。
普段の買い物も現金で済んだ。
だから、通帳に残しておくお金は少なくてよかったのだ。
その結果が、この電話だった。
電話を切ると、すぐに銀行へ入金した。
額には汗がにじんでいた。
ほっとしたような、恥ずかしいような気持ちだった。
人生初のクレジットは、そんなふうに終わった。
今でも、あの日の「えっ?」を覚えている。
額の汗をぬぐった、初めてのクレジット
毎日note連続投稿2656日目
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※優谷美和さんの画像をお借りしました。
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